武将の鎧を再現し続ける「江戸甲冑師」の作業場を覗いてみた

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武将の鎧を再現し続ける江戸甲冑師の加藤鞆美さん

甲冑は武将によって性格が出る?

甲冑は時代によっても変化しますが武将によっても違いが表れます。

「兜の頭のてっぺんには“八幡座”という穴があるのですが、織田信長の場合は織田木瓜という家紋が5つも散っていました。信長は全体的におしゃれですね」と加藤さん。

豊臣秀吉はどうなんでしょうか。

「秀吉は派手ですね。でも七騎の鎧といって影武者用にもほとんど同じものを作らせているんですよ。それなのに胸に描いた竜の向きが違うとか、片側の花だけ銀の蒔絵がしてあるとか、ほんのちょっとだけ違う」

徳川家康の場合はどうでしょう?

「派手派手しい鎧はないですね。何両もの金を持ち歩いていたので、兜は重いものにしていませんでしたね」と加藤さん。実用本位の家康らしい一面が見えます。

戦国武将にとって、兜や鎧は身を守る武具であると同時に、自分自身の表現でもありました。生と死が相まみえる戦場で、いかに運を引き寄せることができるか。兜や甲冑は武将の矜持や信仰、意志が込められているのです。

ミニチュアには嘘も必要?

兜や甲冑を作るには、金具や漆などさまざまな技術を使わなければなりません。甲冑作りとはいわば総合芸術なのです。

ミニチュアにするとなると、技術的にはもっと難しくなります。5日かかって、胴丸の紐だけを通し終えることもあるそうです。

「縮尺通りに作ろうとするとバランスが悪くなってしまうんですね。どこかで嘘をつかないと。兜や鎧ではないけれど、例えば、奈良の大仏の頭にあるブツブツ……あれは“螺髪”という丸まった髪の毛で、てっぺんと前の大きさが違う。頭頂部を大きくしないと、遠近法の関係で同じように見えなくなるわけです」と加藤さん。

嘘をつくことでバランスが保たれる。細かい工夫が凝らされています。

小さな穴に組紐を通していきます
小さな穴に組紐を通していきます

作業場には昔ながらの道具たち

作業場にもお邪魔致しました。さまざまな道具が並んでいますが、いずれも年季の入った優れものばかりです。

作業場のどこに何の道具があるか、全て把握しています
作業場のどこに何の道具があるか、全て把握しています

「今のハサミは切れないんですよ。昔は鍛冶屋が手で作ってましたが、今のものは、機械造りで焼きが変に硬いんです。硬すぎちゃって、鋲の足を切ったりすると欠けちゃうんですよね」と加藤さんは首をかしげます。

使い込まれたハサミたち
使い込まれたハサミたち

「これはね17歳の時に買ったカナヅチなんだけど、中は軟鉄で口の部分に5㎜くらい鋼が貼ってあるんですね。音がまるで違うの。今のものは全部が鋼鉄で、硬すぎちゃって、叩くとハネちゃうの」

使い込まれたカナヅチたち

昔ながらの道具がなくなっていると同時に、その道具を使う職人も少なくなっているそうです。

火起こしのような道具で穴を開けます。両方向からの回転が加わり、力加減が調節できます
火起こしのような道具で穴を開けます。両方向からの回転が加わり、力加減が調節できます

背中を見ながら仕事を覚える

加藤さんは父の背中を見ながら仕事を覚えました。

「父親が使っていた、少しキレづらくなったヤスリとかが回ってくるんですよ。『それで同じように作れ』と言われるんです。それで父親がいなくなったときに、どんな道具を使っているのかなと見てみると、はるかにキレるんですよ。それから負けるもんかと。父親が作らなかったものを作るようになりました」

負けず嫌いで勉強家な職人は、道具から細部までこだわり抜き、今では彼にしか作れない江戸甲冑を仕上げています。今なお研究を続けているその姿に頭が下がりました。

笑顔でお話をしてくださった加藤さん
笑顔でお話をしてくださった加藤さん

<取材協力>
加藤鞆美
東京都文京区向丘2-26-9
03-3823-4354

文:梶原誠司
写真:mitsugu uehara

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