新成人のお祝いに。めでたくて美しいガラスの贈り物

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富士山グラス

難しさも日本一!? 富士山グラス開発秘話

「型を作る開発段階までは、さほど難しくなかったんです。でも人が吹くことなので、あの形がキレイに出るピンポイントを 『何秒で何mlの息を吹く』のように数値で教えることはできない。人の感覚でしかないわけです。はじめは1人の職人しか作れませんでした。やっと量産できるようになるまで、何ヶ月もかかりましたね」

きれいに角の出た、できたての富士山グラス。
きれいに角の出た、できたての富士山グラス。

富士山グラスは、あの形だからこそおめでたい。泡の加減やドリンクによって富士山の表情が変わるも、あのツルリと透き通った表面でなければ楽しめません。

シンプルな作りのようですが、確かにこれは難易度が高そう。どう量産を成功させたんですか、と伺うと、

「それは反復しかないんです」

と一言。そうして次に伺ったお話が、とても印象的でした。

「手作りのものづくりでよく似たものに陶芸がありますが、実は全く違う世界なんです。決定的な違いは、素材を手で触れるかかどうか。数千度に熱されたガラスは触ることができません。道具を使ってはじめて触ることができます。そして道具を使いこなすには、反復練習しかないんです」

様々な道具を使い分けて、商品がかたちづくられる。
様々な道具を使い分けて、商品がかたちづくられる。

1人で成形ができる一人前になるまでの道のりは、およそ10年。

「だから新たに職人を募集するときには、経験は一切問いません。うちで育てる、というスタンスです。大切なのは本当に好きになれそうかどうか。就職希望の子にも、一番過酷な夏に現場を見学させるんですよ」

全国から若い職人さんの集まる硝子工房の秘密

現実をきちんと知った上で、それでも菅原さんの工房には全国から若い職人さんが集まってきています。北は北海道から南は広島まで、全30人ほどの職人さんのうち、地元千葉出身はほんの一握り、それも50代以上のベテランさんに限られるそうです。

作り手志望者にとって大きな魅力となっているのが、商品開発。菅原工芸硝子さんでは、職人自らアイディアを出してデザインに起こし、商品を企画できるのです。

「職人というと、ベテランのおじさんがやっているイメージがありますが、うちは若い職人が多いのも特徴です。女性の職人も多い。今で8名、来年新卒で3名入りますから、とうとう2桁になります。女性の硝子作家さんは多いですが、うちのような製造現場で職人として働いているというのは、世界を見渡してもちょっと珍しいかもしれません」

ベテランさんとペアになって硝子細工を作っていた、今年入社の女性の職人さん。
ベテランさんとペアになって硝子細工を作っていた、今年入社の女性の職人さん。

そうして職人さんから出た企画を元に、毎年200点ペースで新作が輩出されます。

「200点も大変ですね、とよく言われるのですが、むしろ食いさがる職人を説得して200点に絞りこむのに、毎年頭を悩ませているくらいなんです」

まさに今日は、年に一度の大きな選考の会議を終えてきたばかり。苦笑いしながらも、菅原さんはどこか嬉しそうです。

「夏の暑い日なんて、ゆっくり昼休みを取るべきなのに、彼らはお昼ご飯もそこそこに切り上げて、こんなものが作れないかと話しながら試作をしています。お金を稼ぐだけなら他に割のいい仕事はいくらでもあると思いますが、ガラスが好きで好きで仕方ない人には、こんなに楽しい職場はないでしょうね」

休み時間や休日も、ここでは職人さんが自由に材料や道具を使っていいことになっています。「その代わりいいものを作ってね」が交換条件。職人さんがどんどん新しいものづくりに挑戦できる仕組みは、他にも。製品の形を決める型と、完成した製品を収める箱は、なんと社内で作っています。

「よし作ってみようと思ったら、すぐに型を作って実際に作ってみる。もちろん失敗もありますが、毎年4000点を作るには、このやり方でないと」

こちらは社内唯一の型職人さん。型は社内で製造できるよう、鋳型でなく、カーボンで作っているそう。
こちらは社内唯一の型職人さん。型は社内で製造できるよう、鋳型でなく、カーボンで作っているそう。
様々な形がずらりと並ぶ型の倉庫。
様々な形がずらりと並ぶ型の倉庫。
箱作りの一角。裁断機や資材が所狭しと並ぶ。
箱作りの一角。裁断機や資材が所狭しと並ぶ。

大志を抱く若者に贈りたい、富士山グラス

職人さんが意欲的にものづくりに向かえる環境を用意する一方で、いいアイディアは素早く形にして商品化できる受け皿を整える。成形の難しい富士山型のグラスを量産できた理由も、若い職人さんが全国から九十九里に集まってくる理由も、ここにあるように感じました。

菅原工芸硝子さん全体を包む、ものづくりを楽しみながら新しいことに挑戦していこうという空気感。熱気、と言った方が正しいのかもしれません。背景を知ると一層、若い人の門出を祝うなら、こういう熱を持って作られるものがいいな、と思えてきました。

それにしてもこんなに製造の内側をオープンにしてしまって、良いのでしょうか?こちらは勉強になりましたが…

「実は20年ほど前まではあまり現場をオープンにしていませんでした。けれど今、日本でガラス食器をある程度の規模で量産しているメーカーは10社ほどです。るつぼを作れるところと、硝子の材料を仕入れているところに関してはそれぞれもう1社ずつしかありません。これ以上減ってしまうとものづくりができなくなってしまうので、使えるものは使ってください、とオープンにすることにしたんです」

聞けば富士山グラスの量産を引き受けた理由も、とても菅原さんらしい、と思えるものでした。

「富士山グラスの元になった『冨嶽百九十三景』デザイナーの鈴木啓太さんとは、実は彼が大学生の時に一緒にものづくりをしたことがあったんです。面白いものを作るので、出会ってきた学生の中でもとても印象に残っていて、彼にまた会いたいという思いで引き受けました」

成人の日のお祝いに贈りたい、菅原工芸硝子さんの「富士山グラス」。その美しくおめでたいシルエットには、未来を思いながら、今日も楽しそうにものづくりをする「いい大人」たちの志が吹き込まれていました。大志を抱く若者の門出に、ぜひどうぞ。

自然と始まる企画会議。
自然と始まる企画会議。

<掲載商品>
菅原工芸硝子株式会社
「富士山グラス」(スガハラ オンラインショップ中川政七商店公式通販サイト)

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文:尾島可奈子
写真:尾島可奈子、山口綾子

※こちらは、2017年1月9日の記事を再編集して公開しました。

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