【わたしの好きなもの】冬ならではの装いを楽しむ「かや織ニードルパンチのトートバッグ」
暑い日にはサラッとした麻や、汗をよく吸う綿素材の服を、寒い日には毛足が長くやわらかいウールニットや、生地の厚みが心強いコーデュロイを。そんな風に季節に応じて洋服を変えるように、バッグも季節ごとに使い分けたいなと思っていました。
季節のバッグと聞いて思い浮かぶのは、主に夏に活躍する籠バッグ。私も愛用者の一人です。一方、冬は?と考えてみたのですが、冬にしか使えないバッグは持っていない。手袋やマフラー、コートなど、まずは寒さをしのぐ衣服に気がいって、冬用バッグはここ数年、迎えていませんでした。
「何か、いいのないかなぁ」と探していたところ、出会ったのがこの「かや織ニードルパンチのトートバッグ小」。もこもこの見た目がいかにも秋冬用で、これはいいかも!と思い、さっそく使ってみたので、お気に入りポイントを紹介させてください。
①冬の景色を思わせる佇まい
一番気に入っているのは、何といっても冬の景色のような佇まい。こちらのバッグは“木枯らし”をイメージした「薄茶」と、“雪道”をイメージした「薄墨」の二色展開で、私は薄茶を使っています。
確かに、ベージュのウール生地とななめに縫われた白いかや織生地の組み合わせは、寒々しい日にピューッと吹く木枯らしのような表情。そんなそっけなさや荒々しさを感じつつも、あたたかみのある素材感やころんとしたまるいフォルムがほどよく柔和にしてくれるので、全体的にはやさしい印象です。
ちょっぴりスパイスのきいたデザインで、ナチュラルなコーディネートのときにも、少しエッジをきかせたコーディネートのときにも、どちらにも活躍。シーズンが限定されるバッグは、せっかくなのでその時期にたくさん使っておきたいと思う派なのですが、しっかり出番の多いバッグになってくれました。
②軽くてふかふかの持ち心地
初めてバッグを手にしたとき、「何これ!ふかふか!!!」と心の声が。想像以上に生地がやわらかく、ふと撫でたくなるほどです。写真で見ていたときは「ウールだし、ちょっとごわごわした生地なのかな?」と思っていたのですが、もう一度言います。ふかふかでした。
特に好きなのは持ち手。やさしい肌あたりかつ、厚みのある生地、おまけに幅広なので、手に食い込む感じがなく、何なら触れている部分があたたかい。「持つだけで癒されるバッグ」なんて、キャッチコピーをつけたいくらいです。
このふかふかを実現できたのは、ウール生地の中にもこもことした綿を入れているから。ふんわり、ふかっとした佇まいと持ち心地は、そんな隠し技によるものなのです。
荷物が少し重いときはバッグを肘にかけて持つのですが、もちろんふかふか。持ち手が細いものだと、重い荷物を入れたら紐がぐいぐいと肌にめり込む感覚があり、家に帰って肌を見ると、紐を持っていた部分が赤く跡になっている‥‥という経験も一度や二度ではないのですが、このバッグは肌への食い込みはノーストレスでした。
③コンパクトながら、必要なものがしっかり入るサイズ感
私がいつも持ち歩くのは、財布とスマートフォン、ハンカチ、家のカギ、小さめの化粧ポーチ、そして本。ちょっと時間が空いたとき、SNSを見たい日もあれば、小説やエッセイが読みたくなることもあり、本は常に2冊ほど持っているので少し荷物が多いのが悩みです。
そのため大きめのバッグを使うことが多いのですが、コンパクトなバッグを持つことにも憧れる。「ちょっと小さいかな~?」と思いつつ荷物を入れてみると‥‥、嬉しい!しっかり入りました!!
何なら少しゆとりがあるので、水筒を持ち歩くのも、外出先でちょっとした物を購入して入れるのも、外した手袋やカイロを入れておくのもへっちゃら。思ったよりも大容量でした。
また全体はもこっとしたシルエットですが、重さのある布ではないため、カバン本体の重さに関してはまったく気になりません。この軽さは結構驚きなので、できるものなら皆さんにも一度、手に持ってみていただきたいくらいです。
軽くてコンパクトなのにしっかり荷物も入るとは、頼もしい限り。ちなみに同シリーズには「トートバッグ大」「ポーチ」「ポシェット」など、形や大きさを変えたラインナップもあるので、それぞれのお好みや用途にあった一つを選んでいただけます。
④アップサイクル商品を使える嬉しさ
最後に一つ、使用感ではないのですが、お伝えしたいこと。このバッグ、実は中川政七商店の定番商品である、かや織ふきんの端材をあしらって作られています。
使用したのはニードルパンチという加工技術。剣山を思わせる無数の針で生地を刺し、重ねた生地の繊維を絡み合わせて結合する加工方法です。
ふきんを製造する際にはどうしても一定量、生地の端材が発生します。通常は廃棄へ向かうのですが、せっかく作るものは、できるだけ有効活用したい。そんな一人のデザイナーの想いがこの商品へと至りました。
ものの寿命を延ばしたり、最後まできちんと使い切ったりすることに想いがいく最近。自分が使うものがその貢献になっていることに、少し誇らしい気持ちを持てたりするのです。
せっかく四季の巡る日本。うだるような暑さの夏にも、身体が芯から冷える冬にも、その時期にしか出会えないお洋服やバッグで、季節が移ろうことの楽しさを感じていけたらなと思います。
<掲載商品>
編集担当:谷尻