【旬のひと皿】ホタルイカと旬の果実の酢味噌
みずみずしい旬を、食卓へ。
この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。
旬のひと皿 ホタルイカ
‟わたしのお父さんは夜中の1時ごろまで仕事をしてから帰ってきます。”
小学生の時、父の日に向けた課題で書いた一節だったと思いますが、これを読んだ父は「よく見ているなぁ」と、喜んでいました。(実際には、その時間にはいつも寝ていて、帰ってくるところは見ていなかったのですが)
父がいなくなり、母と2人で蕎麦屋を営むようになって、今年の春で10年が経ちたちました。当時はあまりに突然の事だったので、気を紛らわす為にも、何とか日常を取り戻すためにも、3週間で店を再開することに。まだ四十九日も過ぎておらず、蕎麦を打つ練習はしていたもののお客さんにご提供をしたことのない状態からのスタート。
営業に必要な分量の蕎麦を打つことは体力的にもとても厳しく、そしてご提供できるレベルの麺に仕上げることもができず、精神的にもきついダブルパンチ。そんな状態でも、通ってくださっていたお客さんが一緒に悲しんでくださり、たくさん励ましてくださいました。毎年、命日になるとお菓子を届けてくださる方もいらっしゃって、10年もの間覚えてくださっていたかと思うと感謝の気持ちでいっぱいです。大変で泣いた日もありましたが、蕎麦を打って、打ち続けたことで得られたご縁の方がはるかに多く、蕎麦という食べ物に救われています。
先日、おつかれさまの慰労会として、大好きなご夫婦が営まれるレストランへ母と2人で伺いました。季節の花をさりげなく描いているメニューにお食事がスタートする前からワクワクし、ひと皿ひと皿に素材への想いとリスペクトを感じ、目の前で丁寧に仕上げられるお料理を口に入れる度に、「あぁぁぁ」と体中に感動が染みわたりました。
少し大きめの深みのあるお皿に盛りつけられていたのは、イカと八朔のひと品。マスタードと、上質なオリーブオイル、少し酸を効かせたそのソースに衝撃が走りました。「ソース持って帰りたいです!シェフ!」。
そして仔牛のメインのお料理。綺麗なすばらしい火入れにうっとり。デザートには奈良の苺「古都華」をその場でコンポートにして、桜の冷たいアイスクリームに温かな真っ赤な苺のソースがかけられていました。すばらしい、長い時間を料理に捧げてこられたシェフのお料理を目の前で見ながら体験することができ、帰宅した後も幸せな余韻が長く続きました。
とある日の営業後にふと時計を見ると深夜1時すぎ。あの頃の父と同じ生活を今、私もしているなと思いながら一日が終わります。また10年、蕎麦のようにほそくながくお店を営んでいきたい。
今回は大好きな古都華と、ホタルイカを酢味噌和えに。大きなホタルイカは内臓をがたくさん詰まっていてソースのよう。さっと気軽に、火を使わずに作れるひと皿です。
<ホタルイカと旬の果実の酢味噌>

材料(2人分)
・ホタルイカ…10杯
・新玉ネギ…1/2個
・いちご…2~3個(大きさにより、お好みで。少し酸味のある果物がおすすめ)
・スナップえんどう豆…5個
◆酢味噌
・白味噌…大さじ1
・砂糖…大さじ1/2
・酢…大さじ1/2

作りかた
新玉ネギの芯は取らず、くし切りにする。蒸し器に入れて、塩少々(分量外)をしてから、串がすっと入る程度まで火を通す(蒸しの場合、10分ほど。電子レンジで軽く温めるでも可)。


スナップえんどう豆は上下の筋を取り、2分ほど塩ゆで(塩は分量外)してから氷水に落としておく。



次に、ホタルイカの下処理をしておく。
ピンセットなどを用いて、目玉とくちばし、骨を取る。


酢味噌の材料をすべて混ぜ合わせる。目安は、白味噌と砂糖、酢が2:1:1の割合。お好みでからしを加えても。

いちごはへたを取り、縦4等分に切る。

スナップえんどう豆を氷水から出し、食べやすい大きさに切る。

お皿に盛り付けて、完成。

うつわ紹介

写真:奥山晴日
料理・執筆

だんだん店主・新田奈々
島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/