8月8日は妖怪の日。『付喪神絵巻』に化けて登場する夏の道具といえば?
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![さんちの妖怪](https://story.nakagawa-masashichi.jp/wp-content/uploads/2018/08/re_main_sensu.jpg)
8月8日 (ようか) は妖怪の日。
河童で有名な『遠野物語』など、日本各地の民間伝承に光を当てた日本民俗学の祖、柳田国男の命日でもあるそうです。
そんな日ですから、やっぱり「さんち」にも現れました。不定期に連載している「さんちの妖怪」。
![見事、妖怪になった古道具たち](https://story.nakagawa-masashichi.jp/wp-content/uploads/2018/01/re_tsukumogami_1.jpg)
題材にしている『付喪神絵巻』には、100年の命を永らえて妖怪に化けた古道具たちが登場しますが、中にはちょうど今頃、夏に活躍する道具の姿も見られます。
![物語の冒頭は、路地に捨てられた古道具たちの様子。「長年お仕えしてきたのに‥‥!」と人を恨み、この後妖怪に化けて大暴れします](https://story.nakagawa-masashichi.jp/wp-content/uploads/2017/12/re_susuharai-2.jpg)
年の瀬の煤払い (大掃除) をきっかけに、人を惑わす「付喪神 (つくもがみ) 」となった姿がこちら。元は何の道具だったかわかりますか?
![この妖怪、元は一体何の道具でしょう?](https://story.nakagawa-masashichi.jp/wp-content/uploads/2018/07/re2_tsukumogami_1.jpg)
これは簡単ですね。元の道具は「扇子」です。
中国伝来かと思いきや、実は日本の発明品。今日はその「化ける前」の道具としての姿に注目してみましょう。
平安時代に京都で誕生したと言われ、平安末期には中国に伝わり、15世紀には中国経由でヨーロッパにも伝来。17世紀にはフランス・パリを中心に盛んに作られ貴族の間で流行しました。
![以前、細萱久美さんの記事で紹介された宮脇賣扇庵 (みやわきばいせんあん) さんは、まさに扇子発祥の地、京都で200年続く老舗です](https://story.nakagawa-masashichi.jp/wp-content/uploads/2017/06/mamechisiki06_01.jpg)
初期の扇子はヒノキの薄板を束ねて作られていましたが、のちに骨に片側だけ紙を貼った紙扇子が登場。
紙を両面に貼った現在の扇子に近い形が確立したのが、ちょうど『付喪神絵巻』の物語が成立したと言われる、室町のころだそうです。
実は、絵巻には妖怪たちが扇子を持っている姿も描かれています。
![扇子を使った舞を鑑賞中](https://story.nakagawa-masashichi.jp/wp-content/uploads/2018/01/re_tsukumogami_3.jpg)
道具が道具を使っていると思うとなんだかユーモラスですが、その姿からは「涼をとる」以外の扇子の使われ方がはっきり見て取れます。
![武士のような格好をした妖怪の手には日の丸の扇子](https://story.nakagawa-masashichi.jp/wp-content/uploads/2018/01/re_tsukumogami_5.jpg)
平安時代には貴族の持ち物だった扇子は、鎌倉・室町時代には武士の、江戸時代には町人の手に。その中で武芸や茶道、祝宴に舞踊に落語にと、扇子は今に至るまで様々な使われ方をしてきました。
時代の主役が変わっても廃れることなく、常に新しい役割を見出されてきたのは、道具としての使い勝手の良さ、佇まいの美しさの証と言えるかもしれません。
古道具たちも自在に体を動かせるようになって、その使い心地を思う存分、謳歌したに違いありません。
文:尾島可奈子
出典:国立国会図書館デジタルコレクション「付喪神記」
こちらは、 2018年8月8日の記事を再編集して掲載しました。捨てられた古道具が妖怪になって現れないように、モノは大切にしようと改めて思いました。