こけしが斬新に進化した。倒れると光る「明かりこけし」が役に立つ
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東北で生まれた郷土玩具、こけし。
もともとは、子どもが遊ぶ人形として作られたものでした。現在では、出産や入学卒業、結婚、新築など人生の節目に贈る飾れる記念品としての役割を持って東北地方を中心に親しまれています。
おもちゃから置物へとその役割が変化してきたこけしですが、さらなる進化を遂げたものも登場しています。それが、こちら。
傾けると底面が点灯する、その名も「明かりこけし」です。
なぜこけしがライトに?
この斬新なこけしを開発した、宮城県仙台市の「株式会社こけしのしまぬき」社長の島貫昭彦さんにお話を伺いました。
島貫さんは、お店での工芸品販売だけでなく職人さんや企業と協力し、工芸品を今の暮らしに合うものにする取り組みをされてきた方。この「明かりこけし」もそうした取り組みの中で生まれた商品なのだといいます。
こけしと地震の関係
「三陸沖は昔から地震が多い地域なんです。東北の家庭にはこけしが飾られていることが多く、『地震があると、こけしが倒れて嫌だ』と言われ続けてきました。
大きな頭と長細い体でできたこけしは、たしかに倒れやすそうなイメージです。実際は小さな揺れでは倒れないのですが、この地域の『地震あるある』として定着してしまっていました。このネガティブなイメージを払拭したいと考えていたんです」
きっかけとなったのは、2008年に発生した宮城岩手内陸地震。
「甚大な被害の中、こけしもたくさん倒れました。どうせ倒れてしまうなら、何か役に立てる事はないだろうか。そんな思いが芽生えました」
弱点を活用して
倒れてしまうデメリットを活用しよう。そのアイデアがこの「明かりこけし」を生み出します。
内部に傾きを感知するセンサーが取り付けられていて、こけしを横にするとLEDライトがともる仕組みです。スイッチはなく、横にするだけで反応するので、倒れるとすぐに点灯します。
「実験したところ、こけしは震度4程度に揺れが強まると転倒します。大きめの揺れが来た時に、明かりを照らしてくれると安心できますよね。内臓したLEDライトは最長約50時間ほど連続点灯しますので、停電が起きた時にも活用いただけたらと思います」
普段は部屋に飾っておいて、いざという時にはすぐ明かりを灯せるお守りのようなこけし。コロンと転んだ姿はどこかユーモラスで、その明かりは緊急時に張り詰めた心を和らげてくれるに違いありません。
伝統的な技術と現代の技術の掛け合わせで、私たちの暮らしを支えてくれる。そんな進化した工芸品がここにありました。
<取材協力>
株式会社こけしのしまぬき
宮城県仙台市青葉区一番町三丁目1-17
022-223-2370
https://www.shimanuki.co.jp/
文・写真:小俣荘子