編集長・中川淳がさんち旅を薦める4つの理由
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こんにちは。さんち編集長の中川です。
先日、講演の仕事で富山に行ってきました。旅のスタートの様子は昨日の記事に書きましたが、実はこの富山旅行、さんちを始めてから初めての「さんち旅」でした。
「さんち旅」(僕の造語ですが)とは「工芸産地を地元の友人に案内してもらう旅」のことです。
1泊2日の富山旅行を通じて、僕があらためて感じた「さんち旅の魅力」をお伝えしたいと思います。
まず旅程はこんな感じでした。
<初日>
新幹線で富山着、大澤さんと合流。林ショップで買い物をし、つるや本店でお昼ごはんにけんちん蕎麦を食べる。
講演まで時間があるので、世界一美しいと言われる「スターバックス 富山環水公園店」に移動し、講演の事前打合せ。
富山市立図書館にて「地域をブランディングする」セミナー。
富山市立図書館は隈研吾さんの建築で奈良にもこういうサイズ感の人が集まる場所があるといいなーとうらやましく思う。余談ですが最近地方でいい場所だなと思う建物は大抵、伊東豊雄さんか隈研吾さんです。これはこれで問題だと思いますが。(笑)
越中八尾ベースOYATSUに移動して地元有志の方々とワークショップ。
テーマは富山ブランディング。いくつかのチームに分かれて熱い議論が交わされます。
その後も晩ご飯を食べながら熱い話とたわいもない話をえんえんと。
ワークショップに参加していた地元のおしゃれメガネ屋の湯島淳さんにメガネを調整してもらって就寝。
<2日目>
朝から電子部品関係の会社に勤める野田恭平さんの案内で近隣を散歩。ガイドでもないのに野田さんのうんちくが素晴らしい!
越中八尾はかつて街道沿いの宿場町として栄え、今も昔ながらの町並みが残っており9月に行われる民謡行事「おわら風の盆」には20万人を超える人々がやってくるそう。
少し歩いて蚕養宮にお参り。2月だったので雪の階段を登るのに四苦八苦。
越中八尾は蚕の卵を養蚕地に出荷していた地域。蚕の卵は出荷する時に和紙に貼り付けられていたそう。蚕と売薬の包み紙という需要が八尾和紙を生んだわけです。そんな話を聞きながら坂を下って桂樹舎へ。
桂樹舎は昭和35年創業の型染め和紙の工房。民藝と関わりが深く、芹沢銈介(せりざわ・けいすけ)の型染めカレンダーが有名です。2階には紙にまつわる展示があり売薬と共に成長してきた八尾和紙の歴史が伺えます。
富山に戻りCHILLING STYLEを訪問。以前に来たことがあるつもりでしたが、実は初訪問でした。(笑)
ちょうどオーバード・ホールで公開される「舞台の上の美術館Ⅱ」が準備中だったので造形作家・清河北斗さんを訪ねてお話を聞く。
そろそろお腹もすいたので、すし玉富山本店(地元の回転寿司)でお昼ごはん。
富山名物・白海老やのれそれ、氷見湾でとれる珍しい海藻・ながらもを食し大満足。海に近い、地方の回転寿司は侮れません。
その後金沢まで足を伸ばして21世紀美術館で「工芸とデザインの境目」展を見学。深澤直人さん編集の展示について深く考察し大澤さんとあれこれ議論し盛り上がる。
最後は金沢駅まで送ってもらい、中川政七商店 金沢百番街Rinto店に立ち寄って、新幹線で帰りました。
さんち旅の醍醐味 其の一
「見落としがちな場所に連れて行ってくれる」
普段旅先で好き好んでスタバには行きません。世界一美しいスタバが富山にあるという話は何かで見たことがありますが、そんなに都合良くこのタイミングで思い出したりしないので、一人旅であれば間違いなくスルーでした。
2日目の朝に散歩した蚕養宮も同じです。まず一人旅だと朝ぎりぎりまで寝てしまいますし、近くのそれほど有名ではない神社に雪の階段を登ってまでは絶対に行きません。(笑)
さんち旅の醍醐味 其の二
「小話が聞ける」
蚕養宮で教えてもらった蚕の卵と和紙の話を聞いてから桂樹舎を訪ることができたのは最高の流れでした。
氷見のブリは有名ですが、回転寿司を食べながら教えてもらった「ながらも」は知りませんでした。普段なら地味な海藻のお寿司をわざわざは注文しません。
さんち旅の醍醐味 其の三
「人に会える」
桂樹舎の社長のお話を伺えたのは案内してくれた野田さんと社長の息子さんが同級生だったから。現代アートに詳しくないので、清河北斗さんのことは存じ上げませんでしたが、お会いして作品の意図を自ら解説していただき(贅沢!)新たな興味が湧きました。
さんち旅の醍醐味 其の四
「次への期待感」
おわら風の盆のすごさを聞いて9月にまた来たいなと思いましたし、帰り際に見た立山の景色は富山の人々が口を揃えて自慢するのも理解できました。本格登山でなくとも途中まで車で行って登れば日帰りでも十分行けるよ、と聞いて次にチャンスがあればと思いました。
もちろん僕が仕事柄恵まれているのは十分に理解していますが、それでも地元の友人がいればこれほど心強い旅はありません。
僕はいつも旅をする時に宿から決めますが、たまには遠く離れた友人を訪ねるための旅もありかもしれませんね。
あなたもぜひ、さんち旅を。
文 : 中川淳
写真 : 松井睦