【旬のひと皿】焼きりんご
みずみずしい旬を、食卓へ。
この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。
幼馴染にパティシエールになった友人(まーちゃん)がいます。
小学生の頃からの友人で、学校は別々でしたが、同じスポーツクラブで一緒にバドミントンを頑張っていました。
中学生になると同じ学校になり、部活も一緒でした。ある冬の日、他の部員たちとプレハブの寒い部室にいるとまーちゃんが大きな白い箱を取り出して「お誕生日おめでとう!」と言うのです。その日は部活仲間のお誕生日で、なんとまーちゃんが自宅でケーキを作ってきてくれました。
まーちゃんの優しさと、ケーキを作れるなんてすごい!!!と感動したことが、とても記憶に残っています。
その後、彼女は食物科のある高校に進み、卒業後はフランス菓子のお菓子屋さんで働いたり、製菓学校の先生として働いたり。今は独立し、福井県でお菓子を作っています。
昨年、夢中でお菓子の世界を生きてきた彼女のタルトタタンをいただく機会に恵まれました。
きれいなデコレーションケーキも華やかで素敵ですが、シンプルにりんごの持ち味を引き出し、計算して作りこまれる美しいタルトタタンに感動。これまでの彼女の努力が重なって生まれたお菓子に、中学校での時間など幾重にも思いが重なり、ひと口で衝撃を受けたのです。
気づけばもうクリスマスシーズン。きっととても忙しいんだろうなと体調を心配しつつ、誰かの笑顔のために頑張ってお仕事をされるお菓子界の皆さまには、本当にリスペクトの思いです。
今回は、あの感動は再現できないのですが、華やかな行事ごとにも楽しんでいただけるりんごのひと皿に挑戦しました。
ひと口にりんごと言っても種類はさまざま。加熱に向くもの、生で食べておいしいものといろいろありますが、撮影ではグラニースミスという青いりんごを中心に使ってみました。
10月頃から出始める紅玉で作る焼きりんごも酸味があり、りんごが溶けにくくおいしくて好きです。
私の場合は普段からきび砂糖を使っているため、今回も同じお砂糖でキャラメリゼをしましたが、白いお砂糖でももちろん大丈夫。色の変化もわかり、作りやすいかもしれません。
ちなみにキャラメルソース作りでお砂糖に熱を入れるときは「混ぜない、触らない」のが基本ですが、今回は全体を均一にするため、あえてゴムベラで混ぜながら作りました。なお、りんごを入れる際や裏返す際は、やけどに十分お気をつけくださいね。
ご提案したレシピでは、できたての焼きりんごにおいしいバニラアイスを添えていますが、余裕があれば少しアレンジした作り方もおすすめ。
りんごを切る際に取り除いた種と皮を小鍋に入れ、ひたひたの水と一緒に水分が少なくなるまで煮詰めたら、茶こしなどで濾しておきます。焼きりんごの仕上げに先ほどの“りんご水”を加え、強火にして水分をぎゅっと飛ばしたら、流し缶などの型に詰めて冷やしてください。
こうすると型にはめた際に形がキープしやすくなり、翌日冷えたものをカットして泡立てた生クリームを添えれば幸せなりんごのお菓子の完成です。
今年もあと少し。
どうぞみなさま、たのしい時間をお過ごしください。
<焼きりんご>

材料(作りやすい量)
・りんご…3個
・砂糖(今回はきび砂糖を使用)…100g
・クッキー(あれば)…適宜
・ナッツ…適量
・アイスクリーム(バニラ味)…適量

作りかた
りんごの皮をむき、4分の1にカットしたら包丁で芯をとり、さらに縦半分に切る。


鍋(焦がしてもよいもの)を熱し、砂糖を入れる。色が変わってきたら弱火に。

砂糖が濃いキャラメル色になったら一度火を止め、りんごを入れる。りんごにソースを絡め、全体がソースをまとったら再度弱火にかけて、時折ソースをかけながらじっくり火を入れていく。


りんごがしんなりしたら火を止め、うつわに盛る。お好みのクッキーやナッツ、アイスクリームを添えて完成!



うつわ紹介

・【WEB限定】明山窯 HIJICA サラダプレート19cm
写真:奥山晴日
料理・執筆

だんだん店主・新田奈々
島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/