座椅子のある生活。3つのお宅と、床座暮らし
畳の上にすとんと座って座椅子の背にもたれ、ちゃぶ台に置かれた温かいお茶をごくり。
そのままごろんと寝転んで、読みかけの本をひらいたはずが、いつの間にかウトウトして‥‥。
旅先の旅館や祖父母の家。心がほどけるやさしい記憶のなかにはたいてい、そんな景色がありました。
日本の床座暮らしを長らく預かってきた座椅子。その心地好さに惹かれ、我が家でも‥‥と思うものの、ベッドやテーブルなどの洋家具も多く揃えている手前、なかなか、雰囲気の合うものに出会えずでした。
「ソファも既に持ってるし、しばらくはお預けかな」と、ひそかな夢は胸の内にしまっていましたが、このたび、そんな私の構想を後押しする出会いが。中川政七商店が総合家具メーカー・カリモク家具と作った、現代の暮らしに合う機能と佇まいの座椅子です。
和室がなかったり、洋風のインテリアを取り入れていたりと、つくりも家具も様々な今の暮らし。そんな中でも今回の座椅子は馴染むのか、発売よりひと足先に、装いや様式が異なる3名のお宅で、実際に使っていただきました。
奈良、フローリング暮らしのお部屋
はじめに訪れたのは、中川政七商店スタッフ・高倉の家。築150年の日本家屋をリノベーションし、夫妻とお子さんの家族4人で暮らすご自宅には、世界中の様々な地域から集めたオブジェや、歴史を重ねてきた家具が並びます。
普段は古家具店などで迎えた食卓と椅子を、リビングの中心に配置して暮らす高倉家。天井からハンモックを吊るしたり、窓際にソファを置いたりと、床座からは少し離れた生活にあるようです。
楽に運べる折り畳み式。空間を自在に扱える
ご夫妻に話を伺うと、座椅子を取り入れることで、ある気付きがあったそう。
「どこで使うと相性がいいのかいろんな場所で試してみたのですが、例えばリビングに置いて座ると、見上げたときに天井がいつもと違う見え方をして、景色が変わったのが面白かったですね。目線の高さが変わるだけで部屋も広く感じるし、自宅の新しい一面を見れました」(高倉)
さらには空間を自在に扱えるのも床座暮らしの妙。今回の座椅子は、折り畳み式を採用したことで収納も運搬も楽にこなせます。
「折りたためるので普段はソファ奥の隙間に収納しておき、必要な場面でパッと出して広げて使えるのが便利ですね。座ってゆっくり洗濯物を畳んだり、お客様が来た際の席にしたり、決まった使い方にならないのが、この座椅子の魅力なのかもしれません。実際に座ってみると床に近いからなのか、やっぱり落ち着きました」(妻・顕子さん)
「あとは、仕事用にもいいかも。これまで在宅勤務をするときは、集中したいので、日中学校に行っている子ども部屋を仕事場所として使っていました。普段は壁に寄りかかったり、リビングから椅子を運んだりしていましたが、この座椅子だと持ち運びが楽。コンパクトな子ども部屋も広々と使えるし、身体が収まって作業もしやすいですね」(高倉)
シリーズ品の角座布団は、程よい硬さでさらりとした手ざわり
座椅子と同じシリーズ品の「麻紙布の角座布団」は、どんな空間に置いても違和感なく馴染むプレーンな佇まい。軽い素材なので持ち運びやすく、高倉家では1階のリビングはもちろん、2階の部屋でも活躍したそうです。
「一つあると、マルチに活躍してくれるアイテムだなと思いました。うちではソファを置くまでもない場所で、作業や読書をしたいときに座ってみたり。程よい硬さで安定して座れるので腰も痛くなりにくいし、だらけ過ぎずに使えるので、スイッチを完全に切りたくない時間にも頼りになりそうです。
麻紙布のさらっとした手ざわりが気持ちよく、季節を問わず部屋に出しておけるのも良いですね。座椅子で背もたれ部分に挟んでいた半座布団は、読書の時間ではアームレストとしても使えるし、使い勝手が良いなと感じました」(顕子さん)
【使用していただいたアイテム】
・座椅子 supported by karimoku(黒)
・麻紙布の座布団(薄墨)
・麻紙布の半座布団(薄墨)
・麻紙布の角座布団(薄墨)
神戸、カーペット暮らしのお部屋
続いて伺ったのは神戸で建築設計事務所を営む、山崎さん宅。ご自身で設計されたご自宅には、ご夫妻とお子さん2人の、家族4人が暮らします。
山崎家で印象的なのは、水回りを除く全面にカーペットを敷きこんだ内観。全体はミッドセンチュリースタイルで、スタイリッシュな雰囲気ですが、カーペットがあることで不思議と気持ちがゆるみ、リラックスして過ごせます。スリッパがなくともふかふかの歩き心地が、何とも気持ちいい。
ご自宅のリビングでは、お子さんたちがゲームをしたり、家族でテレビを見たり。家具は山崎さんが若い頃から憧れた品や特別にあつらえたものを中心に揃え、ダイナミックですっきりとした印象にまとめ上げられていました。
「お仕事でご縁のあった堀田カーペットさんにお願いして、自宅をカーペット敷きにしていただきました。どこでもくつろげるのが魅力で、子どもの友達が遊びに来たときも、思い思いの場所でゲームをしたり寝転んだりしてますね(笑)」
座椅子にすれば、家族の目線が揃う
そんな山崎家では、主にリビングで座椅子を使ってみたそう。ちなみに普段は、中央のローテーブル前に椅子を置いて座ったり、階段の段差に腰掛けたりして、くつろぎの時間を過ごすそうです。
「今まで椅子のあった場所に座椅子を置いたのですが、特に子どもが気に入って、テレビを見るときやゲームをするときに座っていました。手軽に動かしやすい分、壁面に置いたテレビとの距離を自由に調整できるので、集中してゲームができたんじゃないでしょうか(笑)。
椅子から座椅子に変えて感じたのは、家族と目線の高さが揃うことの心地好さ。1人が椅子に座ると、どうしてもそれぞれの目線の高さに差が生まれるのですが、座椅子にすることで同じ目線で話ができて、それが意外に話しやすくて良かったですね」
座面の程よい厚みで、長時間でもストレスなく
カーペットにそのまま座れることもあり、これまでは座椅子の購入を検討したことはなかったという山崎さん。今回試してみて、いかがでしたか?
「サイズが大きく程よい厚みがあるので、身体を預けるときに安定感がありました。旅館などで使われているいわゆる座椅子より、座り心地が良いですね。ストレスなく長時間座っていられます。今までは特に必要だと感じたことがなかったのですが、これなら迎えることで、暮らしが心地好い方向に変わるイメージが持てました」
【使用していただいたアイテム】
・座椅子 supported by karimoku(黒)
・麻紙布の座布団(薄墨)
・麻紙布の半座布団(薄墨)
・麻紙布の角座布団(薄墨)
取材協力:堀田カーペット株式会社
東吉野、畳暮らしのお部屋
最後は、奈良県東吉野村のデザインファーム・オフィスキャンプの代表、坂本さんが住まう一軒家。画家のお父様がアトリエとして利用していた家を譲り受け、現在は妻の真知子さんとお二人で暮らされています。
お父様の時代から使われる家具を一部残しながら、坂本さんご夫妻が新しく買い揃えたものも多いという坂本家のインテリア。特に印象的なのは、近代デザインを採用した国内メーカーの椅子たちです。そこには建築学部出身で、これまで建築デザインも手がけてきた坂本さんらしいこだわりが。
「家具類で意識しているのは、なるべく国内メーカーのものを買うということですね。これは僕の持論ですが、日本の家だから、洋風のスケールがあまり合わないんじゃないかなと思ってるんです。欧米は家の中でも靴を履く文化なので、家具に少し高さがある。あと、向こうの人たちは身体も大きいので、サイズ感も、日本人の体型に合わせたものとは微妙に差があるなと。
デザインやフォルムは素敵なんですが、いざ家のなかに持ち込んで使うと、道具としてはちょっと合わない部分もあるなと感じてて。だから自宅ではできるだけ日本のものを使いたいなと思っていて、特に椅子についてはだいたい国内メーカーのもので揃えています」(坂本さん)
たっぷりの安定感が、間(あいだ)の時間にぴったり
そんな坂本家で座椅子を配したのは、寝室に使っている和室。日中はふとんを片付け、くつろぎたい時にごろんと寝転ぶのが多いとのことですが、座椅子を迎えたことにより新しい愉しみ方も生まれたそう。
「シリーズ品のちゃぶ台も一緒に置いて、お茶を飲んだりして使っていました。実際に座ってみると想像以上にたっぷりとした安定感で、身体を預けられる感覚がありますね。食事をするなど、何かの作業のための道具というより、間(あいだ)の時間に使うような印象です。どっしりしているので、ソファっぽい使い方になるというか。
普段和室ではごろごろと寝転ぶことが多くて、座ってお茶をゆっくり飲むような使い方はしてなかったのですが、座椅子が来たことで部屋の使い方のパターンが増えて新鮮でした。うちだと、夜はよけておき、昼はちょっと休憩したいときに広げて座る使い方が合いそうですね」(坂本さん)
「縁側に置いて、ぼーっと川や庭を眺めたり、読書したりする使い方もお気に入りです。手軽に持ち運びができるので、それぞれの場所で思い思いの使い方ができて便利ですね。普段から縁側には座りますが、座椅子があるだけでよりゆっくりできました」(真知子さん)
【使用していただいたアイテム】
・座椅子 supported by karimoku(ナチュラル)
・盆ちゃぶ台 supported by karimoku(ナチュラル)
・麻紙布の座布団(生成)
・麻紙布の半座布団(生成)
・麻紙布の角座布団(生成)
日本の暮らしの心地好さを、今の景色やつくりに合った形で取り入れる。シンプルな佇まいから感じる手しごとの温もりは、使うたび、安息の時間をもたらしてくれそうです。
自分だけの特等席や、家族の新たな相棒として、良いひと時のお供になりますように。
文:谷尻純子
写真:奥山晴日
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