規格外品の価値を‟見直す”。工芸の入り口としての「みなおし品」
産地に眠ったままの規格外品の価値を見直す
品質や機能は正規品と変わらないけれど、見た目の問題によって市場に流通しない商品。
そんな「規格外品」について、どんなイメージを持っていますか?
たとえば野菜などの場合、「味が良ければ見た目は気にしないのに」という人も多く、昨今ではフードロスの観点からも注目され、規格外品を流通させる取り組みが活発におこなわれています。
一方、工芸の世界ではどうでしょうか。
自然の素材や原料を使用して手仕事で仕上げるという特性上、形や色が‟ゆらぐ”こともまた、工芸の大きな魅力のひとつ。
しかし、そんな中でも作り手たちは非常に厳しい検品基準を設けてものづくりに取り組んできました。その結果、基準から外れたものはB品(規格外品)としてはじかれて、産地に眠ったままになっているというのが現状です。


それは、すべてを‟ゆらぎ”として許容してしまわない、真摯なものづくりがおこなわれていることの証左とも言えます。その反面、工芸品の見た目に関して、使う側の目線とは少し離れた、やや過剰な基準を設けてしまっている場合もあるのかもしれません。
中川政七商店では、産地で眠っている規格外品の価値を見直して、それぞれ一点ものの味わいのある商品「みなおし品」としてお届けする取り組みをおこなってきました。
「みなおし品」が、工芸の魅力を知る入口に
私たちが「みなおし品」の取り組みをスタートしたのは2021年。福井県鯖江市で越前漆器を作り続けている漆琳堂さんと、規格外品について会話したことがきっかけでした。
当時、漆琳堂の代表 内田さんの話を聞いて印象的だったのは、規格外品が発生する主な要因が作り手のミスによるものではないということです。

たとえば、漆器に用いる木材を仕入れたとき、加工前に内部がどんな状態かを判別することはできません。それを一つひとつ丁寧に削りだし、うつわの形にして初めて、木の癖や傷、木目の状態が判明します。
手間暇かけて加工しても、基準から外れているものはその時点で規格外となり、仕入れた材料は返品もできない。こうした自然の素材の状態に由来する、どうすることもできない規格外品が非常に多いと聞き、とても驚きました。
そこで考えたのは、これまで弾いてしまっていた規格外品の価値を見直して、最後まで仕上げて販売できないかということ。

その表情を、一点ものの味わいとして楽しんでくれる方もいるのでは。正規品より安い価格を設定することで、はじめて漆製品を手にするきっかけになるかもしれない。また、規格外品である理由を明示することで、正規品の検品基準の高さについても改めて理解していただけるのではないか。
そんな思いで「みなおし品」を販売し、結果、これまでに多くの好意的な反響をいただきました。

今後も、工芸の魅力である味わい、ゆらぎについて皆さんからのフィードバックもいただきながら、作り手とも確認しあいながら、「みなおし品」の取り組みも続けていく予定です。
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「買う」目線での厳しい検品
工芸の現場において、どんな基準で検品がおこなわれているのか。「みなおし品」の取り組みを共にしている中外陶苑さんに聞いてみました。

やきものの街 愛知県瀬戸市で縁起置物や季節飾りなどを作り続けてきた中外陶苑さんが、新しい招き猫のカタチとして提案しているのが、陶磁器製の「SETOMANEKI」 。シンプルでモダンな曲線美と、豊富なカラーバリエーションが特徴で、どんな部屋にもなじむ愛らしい置物です。
この「SETOMANEKI」も、自然の土や釉薬を用いて仕上げる過程で、若干の個体差が生じます。商品の特徴・味として楽しんでいただける一方で、細かなチェックをおこない、‟ゆらぎ”の範囲を厳密に見定めています。
代表的な検品項目のひとつが「鉄粉」の有無。土に含まれる鉄分が、焼成時に黒い点となって表面にあらわれることで、赤土などにはより多く含まれていて出やすくなるのだそう。
これを防ぐために、土から鉄分を取り除く処理を丁寧におこなっているものの、実際にどうなるか、焼きあがってみるまでは分かりません。中外陶苑さんでは普段、猫の顔や手先部分に直径1mm以上の鉄粉が出た場合は規格外という厳しい基準で検品を実施しています。

ほかにも、土に含まれる空気が、焼成時に気泡を作り、釉薬の表面に小さな穴をあける「ピンホール」という事象。釉薬を手作業でかけることによる色のムラ。素地の割れやひびなど。各工程でのチェックと、さらに出荷場での検品を経たものだけが正規品として出荷されていきます。



土の種類や釉薬の色によって、同じような事象が起きた場合にも自然に見えるかどうかが変わってくるため、「自分が買うとしたら」という目線で、とにかくフラットにチェックすることを心掛けているとのことでした。
厳しい検品の結果、一度ははじかれた工芸の品々。それらが本当に規格外なのか、それとも豊かな味わいの一品なのか。「みなおし品」を通じて皆さんの目で確かめていただけると幸いです。