沖縄のおいしいが大集合。まーさんマルシェには沖縄の食の未来がある
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こんにちは。沖縄在住で、テレビのフリーディレクターをしている土江真樹子です。
番組制作だけでなく、工芸やファッションブランドのディレクションも手がけていますが、沖縄は今、食が熱い。
おいしさだけでなく、食の安心や土地のことを想う作り手、お店が続々と現れています。そんな「おいしい」のうねりは、沖縄の作家さんが作るうつわにも影響を与えているように思えます。
今回は、そんな沖縄の食の「今」がわかる「まーさんマルシェ」をご紹介します。
沖縄にしかない食イベント、まーさんマルシェとは?
那覇市の中心、久茂地にあるデパートリウボウ (パレット久茂地) の1階広場で不定期に開かれる無農薬、遺伝子組み替えなし、無添加の食材と食のマルシェ。沖縄ならではの食材や野菜もたくさん並ぶユニークなイベントが、「まーさんマルシェ」です。
「まーさん」とは沖縄の言葉で「おいしい」。
その名の通り、イベントにはおいしくて体に良いものが満載です。今回は生産者さんと店舗、30軒が参加していました。
うりずんの恵みをいただきに
今回の開催はうりずん(初夏の爽やかな季節)の季節。まさにうりずんの恵みをいただくちょうどいい機会です。
まずは大好きな「島バナナ」。小ぶりでちょっと甘酸っぱい島バナナは熟れて皮が薄くなると甘さが増すんです。ハルサー(農家)さんオススメ、濃厚な南国の味!
そのそばで、次々と買い物客が買っていくジャムを見つけました!沖縄本島の北端、国頭村の森岡いちご農園のジャムです。
「露地栽培で無農薬です。生で食べる季節は過ぎたからジャムで楽しんでもらおうと思って」
試食させてもらうとジューシーでまろやかな甘さで、飛ぶように売れていくのも納得です。
さて、うりずんの季節といえど気温はうなぎのぼり。
こんな日にはきび糖と黒糖のやさしい甘さ、しかもカロリー控えめが魅力の「うるまジェラート」に直行です。
選んだのは沖縄産の紅茶ジェラート。沖縄紅茶に濃いめの県産牛乳、両者を引き立てるのはミネラル豊富なうるま市の天然塩なんだそう。しっかりした紅茶の香りと味、食物本来のおいしさが口の中に広がります。
喉が渇いたら、ぜひコーヒーを。
実は最近沖縄ではコーヒーがすごいんです。コーヒー栽培には向かないと言われていた沖縄で、厳しい亜熱帯の気候に寄り添い、闘いながらのコーヒー栽培が行われています。
中には国際審査で日本初のスペシャルティコーヒーに認定された生産者さんもいるほど。残念ながらまだどこも生産量が少ないのですが、将来100%沖縄産のコーヒーが店頭に並ぶ日も近いはずです。
土地の食材を、新しい料理に、手土産に
ちょっと珍しいサンドイッチを発見。その名も「タピオカサンドイッチ」。
タピオカのサンドイッチって?と不思議そうにしていると、「リマタピオカサンド店」のリマ・セイジさんが「タピオカはキャッサバ芋のデンプン。水を少し加えた粉を焼いて生地を作るからグルテンフリーでさっぱりしてるでしょ」と教えてくれました。
カリカリとした生地の中にレタスなど野菜がいっぱい。そこにひよこ豆のペーストがもっちりとした弾力で、初めての食感と味は驚きがいっぱいです。
まだまだあります。次は、ぜひ持ち帰りたい手土産を。
ずらりと並ぶ小さなガラスの容器は、「特産離島便」。沖縄の特産食材を使った手作りのおいしい加工品が瓶詰めされています。
石垣島などの離島には独自の食材を使ったものが色々あるのですが、輸送コストがかかる上に生産者が個人の場合が多く、販路拡大という課題を抱えています。そんなおいしい良いものをひとつのブランドとして売り出したのが「特産離島便」です。
お土産として手渡すと「これ何?どうやって使うの?」と話も盛り上がり、リピーターになる人続出という、わたしの愛用お土産のひとつなんです。「次もシークヮーサーこしょうお願いね」「今度は生七味で」と、プレゼントした人から嬉しいリクエストも。
まーさんマルシェの立役者、浮島ガーデン
そしてまーさんマルシェを語るのに欠かせないお店があります。沖縄でヴィーガンといえば、の「浮島ガーデン」。
沖縄県産の有機無農薬野菜にこだわった食事で「ヴィーガン、オーガニックはおいしくない」というイメージを見事に覆した人気店です。オーナーの中曽根勇一郎さんオススメは「高キビバーガー」。
畑のひき肉と呼ばれる高キビは食感も味もお肉そのもの。ヴィーガンならずとも納得のおいしさに人気なのだとか。
実は、島である沖縄は食物自給率が低く、昔から栽培されていた穀物も今では忘れ去られようとしています。高キビもそのひとつ。
そこで浮島ガーデンでは8年前から穀物栽培に乗り出し、絶滅寸前の穀物復活と普及に力を入れています。
全て自分たちでやっているため相当な労力と時間がかかりますが、それでも安心安全、心も体も喜ぶ食を目指す姿勢が、料理の一品一品によく現れています。
「ハルサーさんたちは不便な地域で生産している場合が多い。そんなハルサーさんたちのおいしく高品質な農作物を知ってもらうことで、食のあり方も変わっていくはず」と中曽根さんは話していました。
実は、そんな思いから浮島ガーデンが毎月店内で始めた「ハルサーマーケット」が、まーさんマルシェの始まり。
そこにフードディレクターの小川弘純さんが加わり、デパートリウボウのコンセプトの1つである「からだに良いもの」を体現しようとマルシェをプロデュース。
浮島ガーデンの中曽根勇一郎さん、直子さん夫婦がハルサーさんたちのオーガナイザーを引き受けて始まったのが「まーさんマルシェ」です。
「沖縄にはおいしいものや体にいいものがたくさんあるんです。けれど小規模であるためにその良さがなかなか発信できない。その点と点を繋いで線にしてブランド化して紹介していく。それがまーさんマルシェの役割でもあるんですね」と、小川さん。
小川さんや中曽根さんの熱い思いが「まーさんマルシェ」を作り上げてきました。
食から沖縄を見る、まーさんマルシェ
ここは、出店するハルサーさんたちに野菜のことを尋ねたり、食べ物を紹介してもらったりする「生産者との会話」の場。
多くのハルサーさんやお店がやんばるなど都市部から遠いこともあり、沖縄在住のわたしでもなかなか足を運ぶことができないため、このように一堂に揃うマルシェは心踊る場。見たことがない野菜や果物、食事にワクワク幸せを感じる時間です。
沖縄ってこんなに食が豊かなんだと感じられるマルシェ。
次回は7月14日 (土) に開催が決まったそうです。真夏の開催とあって、涼しくなるような食べ物やメニューが満載とのこと。チャンスのある方はぜひ足を運んでみてください。
食材や食から沖縄をみる、感じる体験ができるはずです。
<取材協力>
まーさんマルシェ
沖縄県那覇市久茂地1−1−1 パレット久茂地1階広場
https://masan-marche.com
*次回開催:7月14日 (土)11:00〜18:00
土江真樹子 (つちえ・まきこ)
沖縄に住んで気づくと30年近く。元・琉球朝日放送報道部記者。放送ウーマン賞2002年。2006年からフリーランスディレクター。
「告発」、「メディアの敗北」 (QAB) 、「カンブリア宮殿〜一澤信三郎帆布〜」 (テレビ東京) など多数。
京都の唐紙の老舗「唐長」と沖縄のアロハブランド「PAIKAJI」のコラボシャツなどのディレクションも手がける。
文:土江真樹子
写真:武安弘毅