わたしの一皿 千葉の落花生を食べくらべ
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息子が生まれてからというもの、生活が大きく変わった。
モノにあふれた我が家。モノはかたっぱしから我が部屋へ押し込まれ、リビングなぞ、人生で一番のシンプルライフ満喫中(最近じゃおもちゃが増えてきているが)。
変わったものは空間だけじゃない。朝も晩も、当然ながら彼のリズムが最優先。食事もまずは彼のものを作ってからそこに味を足す、といった具合。
それが嫌か。いや、とても楽しいのです。あ、みんげい おくむらの奥村です。
親バカ自慢をするつもりはありませんが、たまには家族の時間のことを。
料理をする我が身からすると、彼が食べられるものが増えるにつれて(1歳7ヶ月)、より多くの食を共にできるようになってきたのでなんだか嬉しいし、彼のためのものを作ることで薄味でもじゅうぶんおいしいことや素材本来の味ってなんだっけ、などとあれこれ見えてきて料理もますます楽しくなった。
この秋は我が千葉が誇る数少ない特産品「落花生」を一緒に楽しんでいる。1ヶ月くらい前に叔母の畑からもらった「半立(はんだち)」と「おおまさり」の2種を茹でたものを冷凍しているのでちょこちょことそれを食べている。
半立は昔からよく食べ慣れたものだけど、おおまさりはここ数年見かけるようになったものでとっても大粒のホクホクしたもの。個人的には落花生らしいなと思える半立がやはり好きか。
落花生はいろいろおいしいが、生をもらったなら茹で落花生が一番だ。塩をどの程度効かせるか、硬さをどの程度にするかに集中して。
冷凍する場合はちょいと早めに茹で上げておくのが良い。(子供にいつから落花生を食べさせるかは個々の家庭の考えがあるでしょう。うちも乾燥はまださすがに食べさせないが、茹でたものは少しずつ食べさせている)
茹で落花生らしく温かく食べたいので、解凍してさっと茹でなおす。ちなみに茹で落花生ならそれをあえたり、炒めたり、とアレンジも楽なのだ。
今日は素材がシンプルなので、うつわも極力シンプルにしてみた。
白磁。福岡県北九州市で作陶する、祐工窯の阿部眞士(あべしんじ)さんのものだ。
無地の白磁。究極にシンプルなもの。とてもふつうで、しかしとてもよい。
果たしてこういったものはどんな風に選び、楽しめばいいのか。なかなかむずかしい。
お店で選んでいるタイミングでビビっときたら相当な上級者。だいたいの人はそうはいかないでしょう。
例えば、白だけどどんな白なのか。これは少し青みがある。そしてツルっとしているのか、マットなのか。さわり心地はぼってりなのか薄いのか。手の大きさになじむのか。重さは好みなのか。そんなところを気にしながら選ぶ。
そして本当に良いな、と思うものは使ってしばらくしてそう思うものがほとんどだ。気付くとよく使っている。なんでか選んでしまう。
この無地の白磁は冷たい、という印象よりもおだやかさを感じる。薄すぎず安心感のある作りもあってか、どこかあたたかいのだ。
さて、話は落花生。ほんのりした甘みと塩気。おいしいんだ。わかってもらえていればうれしい。
僕ら千葉県民はこの茹で落花生というのがとてもメジャーなのだけど、全国に出るととてもマイナーな存在であることを大人になって知った。
最近は流通の発達か、いろんな場所で茹で落花生に出くわすようになった。うれしいな。この美味しさ、みんなに知ってもらいたい。
料理もうつわも、たまに色々と面倒になる。料理なら茹でるだけ、塩だけ、が心地よかったり、うつわなら無地、シンプル、が心地よかったり。そんな時にも白磁は心強い。
そんな大人の事情はさておき、このうつわ。小鉢だが、子供が両手で持ってつかみやすく、汁物を焼き物のうつわで飲む練習にもなっている。
願わくば、落として割ることなく、10年20年と使い続け、ある日この記事を彼にも読んでもらいたい。
奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。
みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com
文・写真:奥村 忍