ハレの日を祝うもの 香川のふわふわ嫁入り菓子「おいり」
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こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
日本人は古くから、ふだんの生活を「ケ」、おまつりや伝統行事をおこなう特別な日を「ハレ」と呼んで、日常と非日常を意識してきました。晴れ晴れ、晴れ姿、晴れの舞台、のように「ハレ」は、清々しくておめでたい節目のこと。こちらでは、そんな「ハレの日」を祝い彩る日本の工芸品や食べものなどをご紹介します。
讃岐の国の嫁入り菓子
一生に一度の「ハレの日」といえば、やはり嫁ぐ日でしょうか。
瀬戸は 日暮れて 夕波小波~
小柳ルミ子さんの名曲「瀬戸の花嫁」の舞台としても知られる、香川県・西讃地方では、嫁入り道具と一緒にかならず「おいり」を持たせるという習わしがあります。「おいり」というのはこの地方のお菓子ですが、その由来は今から400年以上も前のこと、丸亀初代藩主である生駒親正公の姫君のお輿入れの際に、お百姓のひとりが5色の餅花を煎ってつくった「あられ」を献上したのが始まりといわれています。以来、婚儀の際にはおめでたいお菓子として広まり、この5色の「お煎りもの」は「おいり」と呼ばれるようになったのだそうです。
ふわふわ、カリカリ。則包商店の「おいり」
香川県丸亀市で長い間この「おいり」をつくり続けている「則包商店(のりかねしょうてん)」。大正時代の初期に創業して100年以上、今は3代目の則包裕司さんがおいりづくりを担っていますが、つくりかたは昔から変わっていないのだといいます。
ところで、「おいり」はどのようにつくられているのでしょう。「おいり」のもとになっているのは、お餅。小さくサイの目切りにしたお餅を、瀬戸内の風にさらしながら乾燥させます。十分に乾かしたお餅を煎ると、小さな角ばったお餅がぷっくりふくらんで、まん丸に!真っ白な「おいり」に5色の甘い蜜をかけて「おいり」を色づけます。これに白を混ぜることで、色が引き立ち優しい色合いになるのだといいます。
「おいり」を持って他家にお嫁入りするときには、「その家の家族の一員として入り、こころを丸くしてまめまめしく働きます」という意味が込められているのだそう。お餅を煎って、角が丸くなるというつくりかたにも通じていますね。
嫁入り先で、ご近所へのごあいさつとして配ることもある「おいり」は、新しい地に嫁ぐお嫁さんにとって強い味方。県内で「おいり」をつくっているところは数えるほどしかないそうで、今や貴重な存在になっていますが、西讃地方のお嫁入りには「おいり」は欠かせない存在です。これからもこの淡く優しいお菓子「おいり」は、寿ぎのときに彩りと優しさをそえ、瀬戸の花嫁をお祝いしてくれるのだと思います。
<関連商品>
桐箱入りおいり(中川政七商店)
<取材協力>
則包商店
香川県丸亀市中府町5丁目9番14号
0877-22-5356
http://www.marugame.or.jp/shoukai/norikane
文・写真:杉浦葉子