【旬のひと皿】菜の花と白身魚のカルパッチョ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



今は奈良で暮らしていますが、高校卒業までは島根県で育ちました。その頃は身近にあるものの魅力に気がつかず、漠然と都会に憧れていました。

ずいぶんと時間が経って奈良でお店をすることになり、今は(奈良にも素晴らしい食材がたくさんあるのですが、出雲そばをお出しするお店ということもあり)島根からさまざまな食材を送ってもらっています。

以前読んだ本で、素晴らしいなと思っているお店の店主さんが「地方は都会の母である」と書いておられ、それがずっと記憶に残っています。食事を作って食べることは、全て自然の産物のおかげ。緑豊かな場所が、本当の意味で豊かな場所なんだなぁと思うようになりました。

昨春、いつも食材を送ってくださっている生産者さんへ会いに、島根県浜田市の海辺の町へ行ってきました。もう5年も電話ではお話をしているのに、初めて直接お会いできたことに感激。電話越しでも楽しい方だなと思っていたのですが、改めてお話するのの面白いこと!楽しい冗談も交わしつつ、地方ならではの難しい現実も聞いて、なんとかしたいなぁと帰ってきてから考えたり。

あまりに皆さんよくしてくださって、時間が経った今も嬉しい、楽しい気持ちが忘れられません。次はいつ行けるかなぁと楽しみにしています。

そんな素晴らしい方から届くお魚を使って、今回は奈良の野菜と合わせたカルパッチョをご紹介します。

にんじんソースや生姜醤油ソースは、お野菜にかけてサラダにしても、お肉にかけても。春の爽やかな新しい気持ちに合わせて、彩り豊かなお皿にしてみました。

<菜の花と白身魚のカルパッチョ>

材料(2~3人分)

・鮮度のいい白身魚やホタテなど(今回はヒラメを使用)…130~150g
・菜の花…1束 

◆にんじんソース
・にんじん…小1本
・塩…ひとつまみ
・はちみつ…小さじ1
・白バルサミコ酢(他のお酢でも代用可)…小さじ1
・オリーブオイル…大さじ1

◆生姜醤油ソース
・生姜…ひとかけ
・醤油…大さじ1
・酢…大さじ1/2
・オリーブオイル…大さじ1

作り方

下準備として、菜の花は軸の根もとを切ってぬるま湯に浸けておく。このひと手間でシャキッとする。

まずはにんじんソースを作る。にんじんは皮をむいて鬼おろしですりおろす(普通にすりおろしても良いが、鬼おろしを使うことで食感がザクザクになる)。ボウルににんじんソースの材料(オリーブオイル以外)を入れて混ぜ、最後にオリーブオイルを入れて混ぜる。オイルが先だと味が入りにくいので注意。

続いて生姜醤油ソースを作る。生姜はスプーンなどで皮をこそげ取り、すりおろす。先ほどと別のボウルに生姜醤油ソースの材料(オリーブオイル以外)を入れて混ぜたら、オリーブオイルを入れて再度混ぜる。

白身魚の水分を拭き取り、軽く塩(分量外)をしてしばらく置く。菜の花は手で葉と本体にちぎり分けたら、軸表面の筋を包丁でとっておく。こうすることで食感がよくなる。
※菜の花の本体と葉を分けるのは、茹で加減を揃えるため

鍋に湯を沸かし、塩(分量外)をひとつまみ入れ、菜の花(本体)を軸の方から入れる。軸だけで30秒ほど茹でたら、分け置いた葉の部分とともに丸ごと湯に入れて1分ほど茹でる。茹で上がったら冷水にとって水分をきっておく。

菜の花の水分を拭き取り、食べやすい大きさに切る。魚の水分も拭き取り、こちらも食べやすい大きさに薄く切る。

皿に菜の花と白身魚を彩りよく盛り付け、生姜とにんじんのソースをかけたら完成。

うつわ紹介

瀬戸焼の平皿 黄瀬戸

写真:奥山晴日


料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  

野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。

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