【旬のひと皿】緑の豆のポタージュ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



随分前に気に入ってよく読んでいた、料理とエッセイの本があります。日常の暮らしや日々の料理について書いてあり、自宅での味噌作りや、手作りがんもに焼き味噌おにぎりなど、見ているだけでホッとするメニューも紹介されていました。

読んでいると、著者の穏やかな日常が自分のなかにもスーッと入ってくる。そんな時間に救われる感じがしました。

それから時間が経ち、自分でも味噌を作るように。お味噌汁の味噌を溶くとき潰しきれなかった大豆を見つけると、古くからの友人に再会できたようなあたたかい気持ちになります。

茹でただけだったらこんなに長くはもたないのに、麹と発酵の力で何年も食べられる姿に変身するなんてすごいなぁ、よく頑張った、と、心のなかで大豆を讃えつつ、お味噌汁をよそっています。

大豆に限らず、栄養価の高い豆類は普段から食べたい食材の一つ。特に春から初夏にかけては、たくさんの豆が旬を迎えます。

気候もすっかり温かくなった最近では、木々の色と同じような爽やかなお豆さんたちがスーパーや産直市場に並んでいますね。

急に気温が上がると野菜の成長もいっきに早くなってしまうそうで、昨年は収穫期が集中したのか、たくさんのそら豆がいっきに出回りました。大量に迎えたそら豆は、自家製の甜麺醤に。初めて作ったので、正しいゴールだったのかはわかりませんが、お客様に美味しいと食べていただけて嬉しかったです。

豆は筋を取ったり、皮を剥いたりとひと手間かかるお野菜ですが、農家さんが作ってくださる労力を考えたらせっせと手を動かしたいなと思います。

何度も読んだあの本。しばらく開いていませんが、いつも豆の季節になるとその本のタイトルにあった『まめまめしく』というフレーズを思い出し、気持ちも食事も基本に戻り、丁寧に向き合いたくなるのです。

<緑の豆のポタージュ>

材料(作りやすい量 ※約4人分)

・えんどう豆…400g(さや付き)
・玉ねぎ…1個 ※今回は新玉ねぎを使用
・無調整豆乳(牛乳でもOK)…200ml
・水…500ml
・オリーブ油…小さじ1
・バター…15g

◆トッピング用(あれば)
・生湯葉…適量
・そら豆…適量
・スナップえんどう…適量
・いんげん豆…適量
・ブラックペッパー…適量

作り方

玉ねぎは皮をむいて薄くスライスする。えんどう豆はさやと豆に分け、それぞれ洗う。トッピング用のそら豆は薄皮に切り込みを入れておく。スナップえんどうといんげん豆の筋を取る。

先ほど取り分けたえんどう豆のさやと水、塩少々(分量外)を鍋に入れ、弱火で火にかけ、さやのスープをとる。耐熱ボウルにキッチンペーパーを被せ、スープを濾す。

別の鍋を火にかけてオリーブ油をしき、玉ねぎと塩少々(分量外)を加えて色づかないように炒めていく。しんなりしてきたらバターとえんどう豆を入れ、蓋をかぶせたらきれいな緑色に変わるまで蒸し炒めにする。

炒めることで甘みが増す

さやのスープを注ぎ入れ、豆が柔らかくなるまで火を通す。きれいな緑色を残したいので、豆に火が通るまでを目安に火を通しすぎないよう注意。途中でアクをとりつつ、味を見ながら塩(分量外)を入れる。後からでも調整できるので、7割くらいの塩加減にしておくのがおすすめ。

熱いうちにミキサーにかけたらボウルに移し、色が飛ばないよう氷水をあてて十分に冷やす。塩味が足りないときはここで足す。

※温かいスープのまま飲みたい場合も、冷やすことできれいな色をキープできるので一度冷やすのがおすすめ。

冷やしている間にトッピングの準備。フライパンに油(分量外)をしき、そら豆を入れて軽く焦げ目がつくまで焼く。塩やクミン(いずれも分量外)を加えて味を調整するのもよい。焼けたら薄皮をむく。スナップえんどうといんげん豆は、沸騰したお湯に塩少々(分量外)を入れて軽く茹で、氷水にとったら食べやすい大きさに切る。

冷やしたスープに豆乳を加え、好みの濃度にのばす。仕上げにひと口大に切った生湯葉やトッピングの豆類を乗せ、ブラックペッパーを振ったら完成。豆乳の代わりに牛乳や生クリームを入れれば、よりリッチで濃厚な味に。豆乳でのばせば色々な“豆”を一皿で楽しめる。

うつわ紹介

益子焼の中鉢 青磁

写真:奥山晴日


料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

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