【わたしの産地旅】日本最古の柑橘「大和橘」の産地へ

中川政七商店の制度に2024年度より加わった「産地視察支援金制度」。こちらは日本各地の産地を深く知り、工芸の奥深さを体感できる機会の支援をすることが、ひいてはビジョンの「日本の工芸を元気にする!」につながると考え、はじまったものです。
日本のものづくりへの興味から、日頃からプライベートでも産地へ足を運ぶスタッフが多い当社。この制度を利用しながら産地を訪れたスタッフの声をお届けします。
こんにちは!
中川政七商店 奈良本店1階にて、奈良の風土を紹介する「奈良風土案内所」を運営している大山と木村です。
突然ですが、みなさんは「大和橘(やまとたちばな)」をご存知でしょうか?
古くから日本に自生していた固有種の柑橘類で、万葉集や古事記にも登場するほど長い歴史を持ち、“日本最古の柑橘”とも言われています。2000年前、不老長寿の妙薬として常世の国から持ち帰られた、なんていう伝説もあるんです。日本のお菓子のルーツとも言われているそう。
雛人形の飾りにある「左近の桜、右近の橘」や、500円玉硬貨にも描かれていたりと、実は意外と身近な存在。でも、実物を見たことがある方は少ないかもしれません。
それもそのはずで、大和橘は現在、準絶滅危惧種に指定されている、とても希少なものなんです。昔は九州から静岡あたりまで、暖かい海流のそばにたくさん生えていたようですが、炭焼きの材料として伐採されたり、食用部分が少ないからと育てる人がいなくなったりと、様々な理由で数が減ってしまったんだとか。
そんな歴史ある大和橘を復活させようと、約14年前に奈良県大和郡山市で立ち上がったのが「なら橘プロジェクト」さん。植樹、育成、収穫を通して、大和橘を守り広める活動をされています。
今回、「なら橘プロジェクト」さんが運営している大和橘の果樹園を訪ねてきました。

果樹園を訪れた5月中旬ごろは、ちょうど大和橘の花が満開の時期。
「柑橘系の花には蜂がたくさん来るから、庭に植えたら大変だよ〜」と母から聞いていたので、ミツバチがたくさん飛んでいるのかな?くらいの気持ちで行ってみたら……なんと! ものすごい数のクマバチが!! 写真だと全然写らないのが残念なのですが、現地ではブーーーーンという羽音が四方八方から聞こえてきて、立っているだけでクマバチとぶつかりそうになるほど。
「なら橘プロジェクト」代表の城さん曰く「原種だからか、とても花の香りが強くて、どこからか虫たちが集まってくるんです」とのこと。クマバチだけでなく、アゲハ蝶やミツバチなど、いろんな虫たちが一生懸命に花粉を集めていました。

クマバチたちにドキドキしながら木に近づくと、爽やかで華やかな香りがふわ〜っと香ってきました(虫さん大量飛来も納得の香り)。
まだ果実は実っていませんが、葉っぱと花弁も食べられるとのことなので、ありがたく試食させていただきました。
葉を噛んでみると、とっても清々しい香り!見た目よりも柔らかく、苦味よりも爽やかさが際立つ感じ。最後にほんのり、ピリッと山椒のような風味がしました。お魚料理と合わせても美味しそうだし、食後にそのまま噛んでリフレッシュするのもいいかも!と思うほど爽やかでした。

花は葉っぱとは違って、口いっぱいに広がる甘いフローラルな香り。少量でも香りが強くて、ジャスミンに似た優しい風味。上品で華やかで、城さん曰く「香水を含んだかのよう」と表現されることが多いんだとか。

これから実になる部分もいただきました。小さいのに、噛み締めると香りと味がぎゅっと濃縮されたような、インパクトのある味。苦味が強いのですが、嫌味のない爽やかさと、ほかの柑橘にはないスパイシーさを感じました。
8月ごろに青い実がなり、11月ごろに色づき始め、12月に収穫を迎えます。農薬を使わずに栽培されているため、これからの時期は草刈りが大変なんだとか。
また、カミキリムシの幼虫に幹や根を食われて、木が丸ごと枯れてしまうこともあるそうで…。
収穫量は1本の木からおよそ10キロ前後ですが、年によっては約7キロまで落ち込む時も。同じ柑橘類のミカンの平均が60~70キロ前後と言われており、いかに希少なものかが分かります。
そんな貴重な大和橘を贅沢に使用した大和橘めん、大和橘こしょう、大和橘醤油を、中川政七商店 奈良本店1階の奈良風土案内所にて、6月3日から期間限定で販売いたします。



特におすすめなのは、大和橘麺。袋を開けた瞬間から香りがふわっと漂ってきて、爽やか。茹でてみると麺の黄色がどんどん鮮やかに変化します。
麺のもちもち、つるっとした食感とソースが良く絡み、最後にはふわっと香りを残していく。最初から最後まで香りで楽しませてくれるこちらの麺、ぜひ皆さんにも召し上がっていただきたい1品です。

このほかにも、奈良エリア限定で、大和橘の葉と果皮を使った「大和橘番茶」も発売中です!ほのかにスパイシーな風味があるのが大和橘ならでは。水だしにするととても美味しいです。
6月からの奈良風土案内所は、大和橘を使った商品のほかにも「涼を感じるうまいもの」をテーマに、奈良の素麺やくずゼリー、シロップなど、夏に食べたくなる奈良の美味しいものをたくさんご用意してお待ちしております。ぜひ奈良にお立ち寄りの際は、中川政七商店 奈良本店へお越しくださいませ。
奈良風土案内所の詳細についてはコチラの記事をご覧ください。
【中川政七商店 奈良本店】中川政七商店による初の観光案内所「奈良風土案内所」がオープン
文:中川政七商店 奈良本店 大山/木村