香りを暮らしに取り入れる。「花草木ポプリ」監修、fragrance yes・山野辺喜子さんインタビュー

ふと視線を向けた時、心がふわりと浮き立つような、日々の暮らしに息づくお気に入りの景色。
このたび中川政七商店ではそんな景色をつくる“香り”として、香って愉しむだけではなく、植物の素材感を眺めても愉しめる「花草木ポプリ」を企画しました。
香りの監修を手がけていただいたのは、フレグランスブランド・fragrance yesの代表である山野辺喜子さんです。
入浴剤にお香、アロマオイル、ファブリックスプレーなど、いろいろな「香りもの」があふれる今の暮らしですが、意外とその取り入れ方は曖昧なもの。
この機会に改めて、香りものと上手に付き合うコツや、そのなかでもポプリならではの魅力が知りたいと、都内にある山野辺さんのラボを訪れました。

“YES”と言えるものづくりを
都心にありながら、静かな空気に包まれたコンパクトなラボ。ドライフラワーやウッドチップ、アロマオイル、蒸留器が所狭しと並ぶその場所に、フレグランスブランド・fragrance yesの活動拠点はあります。
「もともと私自身にアレルギーがあって。肌の荒れやかゆみに悩んでいたのが、今の活動につながるきっかけなんです。
強い薬を使えば一時的によくなりはしますけど、すぐにまた繰り返してしまう。結局は対処療法じゃなくて、自分で心と体をととのえていくのが大事だなと気付いて、植物療法や自然療法を取り入れはじめました。
そのうち、少しずつ自分がよくなるにつれて、他の方にもこの経験を届けたいと思うようになって。それで植物の精油を取り入れたスキンクリームを作ったり、セルフケアの方法を伝えたりするワークショップを開催しはじめたんです」


心と体を根本からととのえたいと植物の力を用いるようになった山野辺さん。自分に合った取り入れ方を模索するなかで、植物がもつ薬効成分だけでなく香りにも興味が向くようになったといいます。
「最初の頃はもう何でもいいからって感じで使ってたんですよね。だけどその香りが刺激的すぎてストレスになり、使うのが嫌だなと思うこともあって。せっかく自分をととのえるために使うものなら心にも気持ちのいい香りであってほしいと、調香もするようになりました」


そうして全国でワークショップを続けるうち、徐々に参加者から商品の購入を希望する声が届くように。そんな期待に応えるため、2014年にフレグランスブランド・fragrance yesが誕生したのです。
取り扱うのはアロマオイルやファブリックスプレーなど、暮らしに心地よい香りもの。天然素材にこだわり、できるだけ余分なものを入れないことを大切に、セルフケアによって日々の暮らしにエネルギーを取り込めるブランドづくりを進められています。
「ブランド名の『イエス』は、誰に何を聞かれても『イエス』と答えられるものづくりや活動を大事にすること、つまりお約束の『イエス』からつけました。
あとはもうひとつ、使っていただく皆さんにもご自身が食べるものや肌に使うものを選ぶときに、できるだけ『イエス』と言える選択をしてほしいなって思いも込めています」
身近な香りを、暮らしに無理なく取り入れる
今ではご自身のブランドを進める傍ら、他ブランドの香りものを企画・監修することも。香りのプロと信頼の厚い山野辺さんに、香りものとの付き合い方も教えてもらえたらと話を続けました。
そもそも、バリエーションも使い方も、今やとにかく情報があふれている香りもの。自分にとってのひとつを、どんなふうに選んでいくのがよいのでしょう。
「香りものを暮らしに取り入れるよさは、とにかく自分の心がととのうこと。
仕事にしてもプライベートにしても、ともすればずっとスイッチオンの状態が続いてることってあると思うんです。それを緩めるのはなかなか難しいけれど、例えば自宅に帰ったときに玄関からふといい香りがすると、『ああ帰ってきた』ってちょっと緩みますよね。
あるいは寝るときの枕元に香りを置くことで、日中に溜め込んだ不要なエネルギーとか、モヤモヤした感情がそっと消えていったり。
そうやって、自分の気持ちを調整したいときに使っていただくのがよいと思います。
最初から個性的な香りを選ぶと苦手意識が出てきちゃうかもしれないので、木々や柑橘、ハーブのような、身近な香りから始めていただくのがおすすめです」

「それと、どんなタイプのものを選ぶかも大事ですよね。
もし香りものの利用にあまり慣れていないなら、自分の暮らしに無理なく取り入れられて、気分が向いた時に使えるものがよいと思います。まずはハンドソープをお気に入りの香りにしたり、好きなタイミングで自分のまわりだけシュッと香らせられる、アロマスプレーなんかも取り入れやすいですね。
あとは今回ご一緒したようなポプリも、手軽に利用できるのでぜひ使ってみてもらえたら。
好みの量をうつわに入れて置くだけで手軽に部屋を香らせられますし、小さなうつわに小分けしてお手洗いや洗面台みたいな、少し気分を変えたい場所に置いておくのもおすすめです。
今回のセット商品のように蓋があるうつわの場合は、お出かけの際や香らせたくないときは蓋をかぶせておけば香りもやわらぎ、長持ちします」
香っても、眺めても心地よい「木々と野花のポプリ」
山野辺さんが香りをつくる際に意識しているのは、「心と体にすっとなじむこと」。それはつまり、無理をせず、自然に手が伸びる香りです。
このたびの「花草木ポプリ」の「木々と野花のポプリ」についても、国産の木々をベースに、野花の香りを合わせ、さりげなく香って暮らしに心地よいことを目指して調香いただきました。

「中川政七商店さんならではの香りをどう表現できるか、たくさん調整を繰り返しました。さりげないけれど程よく華やかで、かわいらしい香りに仕上がった印象があります。
華やかな香りなので気分が明るくなりますし、やさしさもあるので、例えば就寝前や休日にそばに置くのもおすすめです。
少し疲れちゃったり、傷ついちゃったり、そんなときに自分を慰めてあげる、元気を出してあげるようなイメージの香りになっていると思います」
また香って心地よいことはもちろん、ポプリならではのよさは「佇まい」と山野辺さん。特に「花草木ポプリ」では、暮らしの景色を彩るしつらいのように飾れることにもこだわりました。

「香りって普段は目に見えませんけど、ポプリだと素材感が見えるので『ここに香りがいるんだな』って可視化できますよね。今回のポプリは特に見た目がかわいらしいので、香っても眺めても楽しんでもらえると思います。
玄関やお手洗いに置いていただいてももちろん素敵なんですけど、個人的にはリビングに置いてあげるのもいいのかなって。
日々暮らしているお部屋のなかにちょっとやさしい香りが漂うとか、目に入ったときに『かわいいな』と思えるものが身近にあるって、それこそ心がととのう時間になると思うんです」


気分を変えたりくつろいだりと、心のリズムをそっと調律してくれる香りもの。
今回のポプリもそんな存在として、木々や野花の華やかな姿と、ときめく香りが、皆さまの心と暮らしの景色を心地よく彩れたら嬉しく思います。
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文:谷尻純子
写真:枠谷結也