【旬のひと皿】丸ごと万願寺とうがらしと茄子のつくね焼き

みずみずしい旬を、食卓へ。
この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。
「一期一会で終わらせないで、会いにいってみよう!」と思い立ち、ヨーロッパに冒険の旅へ出かけてきました。
毎日、初めてのことばかりだった社会人になりたての頃。今も一日として同じ日はないし、お店では日々、喜んでいただくために一生懸命ではあるけれど、新鮮な発見を繰り返したあの頃の環境を、もう一度つくってみようと思ったのです。
お店に来てくださったお客さんのところへ会いに行く、2週間の旅。せっかく行くのだから、お客さんだけでなく、その周りのお友達や親しい人にもお蕎麦を食べてもらいたいと思い、3か月ほど、どうしたらうまく行くのか仕事終わりに考えていました。
蕎麦を海外で打つには、包丁と麺棒、駒板、まな板、蕎麦粉に打ち粉、つながらなかった時のためにつなぎも入れて‥‥。出汁は昆布と干し椎茸でさっと取って、かえしは最低限でも持っていきたい、と考えていたら、それだけでかなりの重量。
スーツケースに入るギリギリの長さの麺棒と、紛失しても帰国してからの営業に支障がないよう、包丁は新しく手頃なものを購入しました(ちなみに、こね鉢は各所でボウルをお借りさせてもらうことに)。
14時間近く飛行機に乗り、そこからバスや電車を乗り継ぎ、国も越えながら、結局4か所の厨房やお家のキッチンで蕎麦を打たせてもらえました。
どの場所でもみなさん親切に迎えてくださり、蕎麦打ちにも興味深々。嬉しい再会ができたことや、偶然のご縁から出会った方の日常にお邪魔させてもらえたこと。また、いろんな暮らしかたやおいしいを体験させてもらうこともでき、とても嬉しい経験となりました。
この旅で時間をつくってくださった方々、ありがとうございました。
旅の最終日に連れて行ってくださったお店で出てきた「ピーマンを丸ごと焼いたもの」のおいしかったこと!添えてあった茹で上げのいんげん豆の、茹で加減も最高だったな。シンプルなおいしさに、旅の緊張感もほっとしました。
予想外のハラハラした出来事で、どうなることかと思った時間もありましたが、お力を貸していただいた方々のおかげで無事に帰ってこれたこと、また自分の日常をリスタートできたことも嬉しく思います。
うまくいかなかったことは次の機会にうまく行くよう準備をして、また、知らない世界へお蕎麦と共に出かけてみたいです。
<万願寺とうがらしと茄子のつくね焼き>

茄子の水分でふわふわ食感のつくねをつくります。茄子は焼いて香ばしさをプラスするのがポイントです。焼き網がない場合は、フライパンやトースターを使っていただいても。
材料(2人分)
・万願寺とうがらし…4本
・茄子…2本
・豚肉(ミンチ)…150g
・卵…1/3個 ※溶き卵にして、1/3を使用
・醤油…少々
・塩…小さじ1/5
・クミン…少々
◆ソース
・醤油…小さじ1~2
・バター…5g

作りかた
万願寺とうがらしに数か所の穴をあける。少量の塩(分量外)をふり、網で焼いておいしそうな焼き目をつける。


茄子はヘタをとり、網で焼く。お箸で触ってやわらかくなれば網からあげる。やけどに注意しながら熱いうちに皮を剥く。刻んでボウルに入れたら醤油を加えて軽く下味をつけ、そのまま冷ます。



別のボウルに豚肉と卵、塩を入れて捏ね、よくなじませる。焼き茄子とクミンを入れてさらに捏ね、2等分にして丸める。※卵は入れ過ぎるとタネがゆるくなるので注意

フライパンを熱し、油(分量外)を少し入れたら、つくねを入れる。やわらかいので表面が固まるまでは触らずに。焼き目が付いたら裏返して蓋をし、弱火で火を入れていく。

つくねに火が通ったら、出てきた水分に醤油とバターを入れてソースを作る。お皿に盛り付け、万願寺とうがらしを添えたらソースをかけて完成!


うつわ紹介

写真:奥山晴日
料理・執筆

だんだん店主・新田奈々
島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/