【旬のひと皿】鮭と香草の紙包み焼き

みずみずしい旬を、食卓へ。
この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。
窓から入る涼しい風とともに、やっとやっと、秋がやってきました。夏の暑さに加えて秋生まれということもあり、季節が変わるのをまちわびていました。
季節が変わったら挑戦したいなと思っていたのは、奈良を知ること。
旅行で来られる方はしっかり奈良を調べて、計画的にさまざまな場所へ行かれています。そんなお客様とお店でお話しをしていると知らないことも多く、「もう20年近く奈良に住んでいながら、なんてもったいないことを‥‥」と、ハッとしたのです。
というわけで書店へ行き、『奈良の歴史散歩』(山川出版社)という本を購入しました。
(故郷・島根の本も同時に見つけて、倍嬉しい!)
次の休みには奈良市内にある、唐招提寺へ。穏やかな秋の日、平日だったこともあり静かに拝観することができました。森に入ったかと思うくらい緑が深く、手入れの行き届いた木々の足元には、一面に美しい苔が。光に照らされて、なんともいえない穏やかな気持ちになったものです。
ずらりとあちらこちらに並ぶ、国宝の仏像。ちょっと車を走らせただけで、タイムスリップしたかのような日本の歴史に包まれました。まるで、慌ただしい日常をリセットさせてもらえたような時間。初めて御朱印も頂き、帰宅しました。
視点を変えて、気持ちも変えて、近すぎて見えなくなった大切なことや物、場所も見ていきたいなと思ったひとときでした。
今月のレシピで主役にしたのは秋鮭です。昔、お世話になったお店でよく作られていた紙包み焼きを思い出し、私流のレシピにしてみました。だんだんと寒くなってくるこの時期に愉しめるよう、今回はきのこやあさり、マスカット、香草と合わせ、秋をぎゅっと包み込んでいます。
ポイントは少し大きめの紙を使い、なかの空間に空気を入れて、蒸し焼きのようなイメージで作ること。秋鮭はふっくらしっとり、きのこやあさりはおいしいスープを出してくれるといいなと思いながら作りました。
うつわに用いたのは、中川政七商店さんの新作「瀬戸焼の印判角皿」。おいしいパンをおともにして、スープを浸して食べると、可愛い動物が見つかります。
肩の力を抜いて、いろんな場所の食卓で今日もほっとひと息つけますように。
<鮭と香草の紙包み焼き>

材料(2人分)
・鮭…2切れ
・あさり…4粒
・玉ねぎ…1/4個
・きのこ(お好みのもの)…全部で1パック程度
・かぼす(レモンでも可)…1個
・マスカット…6粒
・ハーブ(お好みのもの)…適量
※今回はタイムとローズマリーを使用。なければ乾燥ハーブミックスでも可
◆A
・白ワイン(料理酒でも可)…小さじ1
・塩コショウ…適宜
・酒粕…適宜
・味噌…小さじ2
・バター…10g
◆その他
・バケット…2切れ

秋の食材をもりもりと入れたひと皿。マスカットは味のアクセントに入れていますが、なければミニトマトに変更するのもおすすめです。
作りかた
鮭に塩(分量外)をして10分ほど置く。あさりは砂抜きをする。玉ねぎはスライスしてから半分に切り、きのこは食べやすい大きさに切る。かぼすはよく洗い、皮つきのままスライスする。



クッキングシートを鮭の1.5倍程度のサイズで、2枚用意しておく。
鮭の水分をペーパータオルで拭き取る。

クッキングシートの中心にオリーブオイル(分量外)をひいて、玉ねぎ、きのこの順にそれぞれ半量ずつ重ねる。都度、塩少々(分量外)をして下味をつける。

続けて、鮭、あさり、マスカット、かぼすの順に上にのせる。ハーブを添えたらAをそれぞれ入れて、お好みで塩コショウをふる。クッキングシートで空気が抜けないように包んだら、端をホチキスでとめる。



160度のオーブンで12分焼く。オーブンがない場合はフライパンに少量の水を入れ、蓋をして蒸し焼きにする。うつわに盛ったら完成!


バケットを添え、ぜひスープをパンにつけながらお召し上がりください。

うつわ紹介

写真:奥山晴日
料理・執筆

だんだん店主・新田奈々
島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/