暮らしに、森の質感を。木の‟ありのまま”がやさしく寄り添う「木端(こば)の椅子と花台」

身近にあると空気が変わる気がして、深く呼吸をしてみたくなる。心をやわらかくし、森の時間を運んできてくれる。忙しい日々の中でも、部屋に自然の息吹を感じられるものがあると、不思議と気持ちが落ち着くものです。
中川政七商店ではこのたび、広葉樹の特徴を活かしたインテリア家具、「木端(こば)の椅子」「木端の花台」を作りました。
タッグを組んだのは、飛騨高山で広葉樹を用いたものづくりに取り組む「木と暮らしの製作所」さん。そして、素材を活かすデザインを得意とする、日本を代表するデザイナーの一人 倉本仁さん。
岐阜・高山の森で採れた広葉樹を組み合わせ、素朴ながら森の景色を思わせる仕上がりの椅子と花台。木目や手ざわりなど自然の表情を楽しむことができるこの商品を、今回はSNSで素敵なインテリアや日常の様子を発信している松井さんのお宅で、ひと足先に使っていただきました。
好きなものを丁寧に選ぶ暮らし
訪ねたのは、奈良市にある松井さんご夫妻のご自宅。4LDKのマンションを広々としたワンルームにリノベーションし、二人暮らしを楽しんでいます。コンクリートの天井にデザイナーズ家具が並ぶ空間の先には、窓いっぱいに広がる美しい景色が。隣接する緑地の自然が、まるで絵画のように季節を運んでくれます。

「この景色に一目惚れして物件を決めたんです」
奈良の照明ブランドに勤務する松井さんは、仕事場の環境から“抜け感”や景色の大切さを日々実感し、それを住まいにも取り入れたいと考えたそうです。建築士に好みのテイストや希望を伝えて、ご夫妻のライフスタイルに合った理想の住まいが完成しました。

「家事や片づけをできるだけシンプルにしたくて、壁一面を収納にしました。衣替えもハンガーごと移動するだけ。来客時にはさっと物を隠せます。好きな漫画も収納してすっきり見えるように工夫しつつ、室内には余分なノイズをなくしたくて、床一面にカーペットを敷いています」
すっきりとした空間に、選び抜かれた小物やインテリアの数々が映える松井さん宅。
「基本的に“好きなデザインかどうか”が大前提。この部屋のどこに置いたら合うかをイメージしながら、長く使える意匠のもので、素材のこだわりや背景に物語があるプロダクトを選んでいます」
そう松井さんは話します。

新鮮さをもたらす野趣ある質感
「どちらかというとクールでかっこいいデザインが好き」という松井さんに、今回の「木端シリーズ」を見てどう感じたかを伺いました。
「色や木目など、それぞれに個性のあるところが素敵ですね。自分の仕事でも吹きガラスや大理石など一つひとつ表情が違うものを扱っていて、それと同じ魅力を感じました。ワントーンではない色のニュアンスにも惹かれましたし、脚の取り付け方にも興味を持ちました」

実際の使い道を想像するとどうでしょうか?
「うちは玄関がフラットなので、靴を履くときのスツールとして便利そう。洗面所で髪の毛を乾かす時にちょっと座ることもできますし、来客時の補助椅子としてもいいですね」


「これまで玄関に直置きしていた花器を置くのにぴったりでした」
と、花台については、すぐに使うイメージが浮かんだそう。

「以前、美容師をしていたので、家族や知人の髪をカットすることがあって。祖母の家の土間で切ると片づけが楽だったので、その発想から我が家もモルタルの床にしたんですけど、この無機質な空間に野趣あふれる花台は馴染みがいいですね。
木の質感に、自然の心地好さを感じます」


収納扉にラワン合板を使うなど、住まいに木の存在はあるものの、小物は無意識のうちに木製を選んでこなかった松井さん。
「室内にはお店で出会ったものや作家さんの作品などを飾っていますが、改めて見ると木のオブジェは置いていませんね。だからこの花台は新鮮でした。カーペットの上でごろごろする時も、癒されながら飲み物や本を置く台として使えそうです」

SNSの発信を見て憧れる人も多い松井さんのコーディネートの中に、「木端の椅子と花台」は見立て次第でさまざまに使える存在として、心地好く溶け込んでいました。
行き先をなくしていた木々が新たな価値をまとい、住まいに自然の景色を運んでくる。そこに生まれるのは、心がほどけるようなあたたかな時間。ぜひご自宅で、その豊かさを感じていただけると嬉しく思います。

<取材協力>
松井さん(instagram:@takayan_yan)
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文:安倍真弓
写真:奥山晴日