「工芸とデザインの境目」展
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こんにちは。さんち編集部の西木戸弓佳です。
全国各地で行われる工芸イベントに実際に足を運び、その魅力をお伝えする「イベントレポート」。今回は、石川県金沢21世紀美術館で開催中の「工芸とデザインの境目」展をレポートします。
金沢21世紀美術館が、2014年の10周年を機に3カ年かけて行う大規模な展覧会のフィナーレとなる同展。2014年「建築」、2015年「現代美術」に続き、2016年のテーマは「工芸」。プロダクトデザイナーの深澤直人さんを監修に迎え、これまでに無かった新しい視点からデザインを見直します。
「工芸」か「デザイン」かー。工芸とデザインはものづくりという点では同じであるが、両者は異なるジャンルとして区別される。しかしながら、それらをつぶさに観察するまでもなく、両者の間には「デザイン的工芸」また「工芸的デザイン」とも呼べる作品あるいは製品があるように思われる(展示概要より)
たとえば、柳宗理さんのデザインしたバタフライスツールは、「工芸」か、それとも「デザイン」か。その問いにすぐに答えられる人は少ないかもしれません。その曖昧模糊とした境目に、はっきりと線を引くことを試みる本展示。わらじ、檜風呂、茶筒、石垣、漆器、スニーカー、かばん、スマートフォン、パソコン、車など、実にさまざまなジャンルの、約75点のプロダクトが並びます。それらを、「プロセスと素材」・「手と機械」・「かたち」・「経年変化」という多様な観点から見つめ直し、「工芸」・「デザイン」の境目を浮き彫りにしています。
「これは工芸でこれはデザイン、といったように一本の線を引くことは困難です。これは、工芸20% デザイン80%であるというのが説明しやすいかもしれません」
“KOGEI”と”DESIGN”という文字が対になって記された壁のちょうど中心から、真っ直ぐに引かれた太い黒線。その線を境目にプロダクトが配置され、置かれている位置によって、そのプロダクトの持つ「工芸」と「デザイン」の割合が表現されています。
それが、深澤さんの考えられた「工芸」と「デザイン」の境目を示す答え。
ただ、その「答え」はものを観ただけですぐに腑に落ちるものばかりではなく、私の中にあった「答え」との違いに、頭がぐるぐるとすることもしばしば。各展示に添えられた丁寧な解説パネルで、その配置の意図を知ることができます。考えの差分が大きいほど、新しい発見があり、解釈の幅が広がるような展示構成です。それらはもしかすると、「観覧者を揺さぶることに意義があると思います」とおっしゃる、深澤さんによる仕掛けなのかもしれません。
展示室のひとつに、ちょうど直線の中心にプロダクトが並べられた部屋がありました。
デザイン50%・工芸50%。
ちょうど半々かと思いきや、置かれている向きにも意図があるそうです。
ぜひ会場でご覧ください。
文・写真:西木戸弓佳