わたしの一皿 実りの秋に実らぬ土地もある

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みんげいおくむらの奥村さんによる連載 わたしの一皿・やちむん恩納村の照屋窯のうつわ

心がおどる食材がある。世の中にあまたあるんだけど、これはもう見た目そのものからおどっているようだからすごいと思う。秋の大定番、「栗」です。

いがぐりに囲まれたあの姿を想像するだけで、なんか気分が上がる。楽しくなる。まだ若い緑色の時も良いし、茶色になって落っこちて割れても良い。割れて出て来てもこれまたかわいらしい。

栗の実のあの形、パーフェクトでしょう。天地が創造した究極の形と言ってもよいのでは。可愛らしさ以外何もない。なんなんでしょうね。

興奮しすぎましたね、みんげい おくむらの奥村です。どうぞ今月も最後までお付き合いください。こどもの頃から、栗が落ちてたらワクワクしたもんだなぁ。さわったり、踏んづけたり、とにかく放っておけないやつ。わかるでしょう。

栗の時期になると、ここのところ思い出す話。沖縄で、ある陶工と話をしていて、ふと「内地 (本州) で栗を見たときにさ、感動したんだよね」と言われたことがある。

そう、沖縄ではあたたかすぎて、ふつう栗は実をつけないのだ。なんとまあ。我らが日本、面積は広くはないけど、文化は実に広いですね。僕は沖縄で栗が実らないのは知らなかった。秋になればそこらに栗が落ちている、という僕の常識は沖縄では常識ではない。

そんなわけで、今日はあえて沖縄のうつわを使おうと決めた。栗を思う時、どうしてもこの話が忘れられないから。

料理は定番の栗ごはん。ここのところはよく外に出かけていて、北関東、東北、九州、どこに行ってもまるまるした栗を見かけた。本当にうれしい季節。栗やイモやかぼちゃや、ほくほくする食材の時期になってきました。

栗ごはんは、いつものように土鍋炊き。栗、米、塩、酒。以上。今日は遊び心で塩も沖縄、八重山のもの。この塩がするどい塩気とたっぷりなミネラル感。栗ごはんの風味が増すのです。

土鍋だから、少しコゲをつけて炊き上げる。コゲのついたごはんを炊き上がりに混ぜると、コゲで色が少し茶色っぽくなってしまうけど、それはそれでよいと思っている。炊き上がりの色がにごらない方がよいと思う方はコゲを作らないように。

沖縄のやきものの工房にいくと、こうやって大きめのお皿におにぎりやおやつがドンと盛られて出てくることがあって、その景色がとても気に入っている。

栗ごはんは冷めても美味しいから、今日はおにぎりに。こんなのもよいでしょう。沖縄の中部、恩納村の照屋窯のうつわを用意しました。いわゆる「やちむん」だ。

沖縄の方言でやきもののことをやちむんと呼ぶ。沖縄らしい唐草の模様なのだけど、青がおだやかで、どんな料理にもなじみがよく、とても気に入っている。

ところでこの沖縄のお皿、深さがあってなかなか独特な形だと思いませんか。見慣れぬ人なら、鉢のように見えなくもない。沖縄では登り窯でたくさんのうつわを焼くためにたくさんの工夫がある。そのうちの一つがこの独特の形。

窯を焚く際に、もし真っ平らなものを焼いたら、平らどころかフチが下がってしまう。だからフチをあらかじめ高くして、熱でへたらないように。ということ。

そうそう、一つ告白しよう。今年はある写真家さんとフルーツパーラーで打ち合わせを重ねていて、先日は新宿の某フルーツパーラーを訪ねた。

そこで迷ったんだけど栗のパフェではなく、いちぢくに浮気をしてしまった。もちろん美味しかったのだけど、隣席の人の栗のパフェがやっぱり美味しそうだった。ああ、この秋もう一度あそこを訪ねようか。

しかし男一人では少し心もとない。誰か、打ち合わせでも入れてくれませんか?

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文:奥村 忍
写真:山根 衣理