ゲームで地方創生!?

エリア
タグ

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
突然ですがみなさん、ゲームはお好きですか。そして「サガ」というゲームシリーズをご存知でしょうか。「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」シリーズを輩出する株式会社スクウェア・エニックスの人気RPGゲームです。第1作が誕生したのは1989年、ゲームボーイ用のゲームとして。その後も新型ゲーム機や携帯アプリと時代ごとにキャリアを変えて楽しまれてきた同シリーズですが、実はここ数年、ゲームとは全く関係なさそうなところでも注目を集めていたのです。人々がつぶやくその名は「ロマンシング佐賀」。佐賀?…といえば今年開窯400年を迎える有田焼もあり、さんち編集部としても気になるところ。一体、何が起きているのでしょうか。

編集部が訪ねたのは都内にあるスクウェア・エニックス本社。幸運にも、「サガ」シリーズの生みの親であるエグゼクティブ・プロデューサーの河津秋敏さん、そして「ロマンシング佐賀」をはじめ、最新作「サガ スカーレット グレイス」のプロデューサーである市川雅統さんにお話を伺うことができました。

(以下、河津さん発言…「河津:」、市川さん発言…「市川:」と表記)

——「ロマンシング佐賀」って、あの佐賀県の佐賀、ですよね?

河津:そうです。「ロマンシング佐賀」は「サガ」シリーズと佐賀県のコラボレーションプロジェクトです。「サガ」は発売から25年以上続くシリーズですが、以前から同じ響きの佐賀県と、何か一緒にできないかなという思いがありました。はじめに私たちから、その10年後に今度は佐賀県さんからラブコールを頂いたのですが、それぞれタイミングが合わず、(89年発売のゲームボーイ版から)25周年となった2014年に、念願叶って実現しました。「節目の年に、ぜひ佐賀県とコラボして何かできないか」とのリクエストに、市川が動いて改めて佐賀県さんにコンタクトを取ったんです。

「サガ」シリーズを第1作から手がけてこられたエグゼクティブ・プロデューサーの河津秋敏さん
「サガ」シリーズ生みの親、エグゼクティブ・プロデューサーの河津秋敏さん

——もともと佐賀県と何かご縁があって、実現したのでしょうか?

市川:いえ、河津は熊本出身で僕は下関出身ですから、間といえば間に位置していますが(笑)、土地とのつながりはほとんど何もないところからのスタートでした。

「ロマンシング佐賀」プロデューサーの市川雅統さん
「ロマンシング佐賀」プロデューサーの市川雅統さん

河津:私たちにとっては今まで「サガ」を知らなかった人にもこのゲームを知ってもらう、いいきっかけになりますし、佐賀県さんはゲームを通して土地の魅力を全国に発信することができる。なんで、佐賀?という引っ掛かりが、お客さんとのコミュニケーションにつながるんです。タイミングと目指すところが一致して、プロジェクトが始まりました。

——まさに相互誘客を目指したのですね。反響はいかがでしたか。

河津:発売に合わせて東京の六本木ヒルズで「ロマンシング佐賀 LOUNGE」という、佐賀県の伝統工芸や県産品の魅力を体感できるイベントをやりました。これは女性の参加者が多かったですね。「サガ」シリーズをずっと手がけているイラストレーターの小林智美さん直筆の有田焼大皿を展示したのですが、オープン前に500人の列ができるほどの人気でした。地元の窯元さんと一緒に開発したオリジナルの有田焼きセットの商品は即日完売になりましたし、土地の工芸品である肥前名尾和紙や諸富家具を使っての「サガ」シリーズの原画展示も好評でした。

「ロマンシング佐賀1」のイベントでは長蛇の列が。
「ロマンシング佐賀1」のイベントでは長蛇の列が。
佐賀の工芸とゲームの世界が融合した「ロマンシング佐賀 LOUNGE」の様子。
佐賀の工芸とゲームの世界が融合した「ロマンシング佐賀 LOUNGE」の様子。

市川:ゲームは何百万本と売れないとヒットと言われませんが、お皿は1枚1万円のものが数百枚売れることが窯元さんにとってとても大きい。僕は現地のメーカーさんとオリジナルの商品開発をずっと一緒にやってきて、一体何のプロデューサーなんだと言われたりしますけど(笑)、作ったものがゲームとはまた違う形で届く手応えを感じました。

河津:翌2015年の「ロマンシング佐賀2」ではラッピング列車が運行したり、今年の「ロマンシング佐賀3」では現地でのスタンプラリーに有田焼の絵付け体験が入っていたりと、これまでゲームを楽しんだ人が思わず佐賀に行きたくなるような仕掛けも作っていきました。そうしたゲームだけでは得られない体験をしてもらうことが、ファンの方のさらなる満足度にもつながればと。

「ロマンシング佐賀2」発売時に佐賀で運行されたラッピング列車。壇上には河津さんの姿が。
「ロマンシング佐賀2」発売時に佐賀で運行されたラッピング列車。壇上には河津さんの姿が。
「ロマンシング佐賀3」のスタンプラリー。大人も子どももイベントを楽しむ。
「ロマンシング佐賀3」のスタンプラリー。大人も子どももイベントを楽しむ。

市川:僕も一緒に仕事をした窯元さんも、まさに子供の頃に「サガ」シリーズをやってきた世代なんです。そうすると、ゲームファンの方も「そういう人が作っているものなら、見に行こう」と思ってくれるんですね。

——ファンにとっての「嬉しいこと」が、土地の工芸の側からすると、ゲームというポピュラーなものを介して、多くの人に存在を知ってもらう、コミュニケーションの入り口になったわけですね。そんな力強いプロジェクトが、ダジャレから始まった、というのがまたすごいですね。

市川:そうなんです。ダジャレで始まったものだからこそ、絶対に本気でやらないといけないと思いました。これで僕たちがふざけていたら、これまでのファンを裏切ってしまうことになるし、新たなファンもきっと得られない。「サガ」も佐賀県さんも、お互い本気でぶつかったらどうなるのか、を出し続けているのが「ロマンシング佐賀」です。

プロジェクトに当たって実際に現地へ行くのですが、自分たちで器に絵付けをする体験はとても楽しいものでした。持ち帰ってきた有田焼のお椀で食事をいただくと、口に触れた時の口当たりが違うんです。こうした体で感じる違いを、ゲームの中だけにとどまらず、リアルの視点で届けて社会貢献できたらいいなと思っています。

——1つのゲームの世界にとどまらない、という意味では、新たに発売される「サガ」シリーズの新作にも、「佐賀」シリーズが実は関係しているそうですね。

河津:新作の「サガ スカーレット グレイス」で登場してくる主人公の1人が、タリアと言います。逆から読むとア・リ・タ。職業は陶芸家です。

——

最後にしっかりと新作のトリビアも伺って、インタビューは終了。
1つのゲームから生まれた地域のプロジェクトが、また次のゲームにその遺伝子を受け継いでゆく。デジタルの世界とアナログの、面白い行き来を見た気がしました。ゲームをきっかけに佐賀の工芸を訪ねて行く人が生まれたように、デジタルとアナログ、この2つのバランスが取れてお互いが活発になることで、もしかしたら世の中は少し、元気になったりするのかもしれません。

■「サガ」シリーズ最新作「サガ スカーレット グレイス」は本日12/15発売です!

cm116_fireburinga_02


インタビュアー:中川政七
文:尾島可奈子


© SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.ILLUSTRATION : TOMOMI KOBAYASHI

© 2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI

住所
佐賀県佐賀市駅前中央1丁目11
エリア
タグ

関連の特集

あなたにおすすめの商品

あなたにおすすめの読みもの