柚木沙弥郎デザインが生きるコーヒー専門店。民芸愛の詰まった鹿児島の可否館へ
エリア
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旅の途中で訪れた、思わず愛おしくなってしまう純喫茶を紹介する「愛しの純喫茶」。今回は、コーヒー好きにも民芸好きにもおすすめしたい鹿児島のコーヒー専門店「可否館 (こーひーかん) 」です。
柚木沙弥郎さんデザインの看板がお出迎え
鹿児島のターミナル駅、鹿児島中央駅から市営バスに乗って15分ほど。護国神社前のバス停から歩いて5分ほどのところに、可否館はあります。
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窓際の席に腰掛けると、入り口の看板と同じデザインのメニューが。
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日本を代表する染織家、柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんが手掛けたもの。マスターがぜひにと頼んでオリジナルでデザインしてもらったそうです。
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注文したのは、はちみつシナモントーストセット。
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ほろ苦いコーヒーとはちみつがじゅわっと染み込んだシナモントーストは好相性間違いなしですが、一層美味しく感じさせるのがこの器です。
伺うと、はちみつシナモントーストには、必ず熊本の小代焼のお皿を合わせるのだとか。マスターの永田幸一郎 (ながた・こういちろう) さん自ら、窯元に頼んでつくってもらったものです。
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これが、コーヒー専門店である可否館のもうひとつの魅力。店内を見渡すと、焼きものやガラスの器が、まるで民芸店のように並んでいます。
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お店が、好きな器を飾れるキャンバスに
マスターの永田さんは若いころから絵画や民芸に興味を持ち、自身でものづくりも行なっていたそう。
はじめは家業の材木屋さんを手伝っていましたが、32年ほど前のある日、決心して喫茶店をオープンさせました。
「もともとコーヒーも好きだったので。それに空間があれば、そこに好きな器を飾れるでしょう。お店が私にとってのキャンバスになるんです」
はじめにお店を開いた鹿児島の中心街、天文館で20年。現在の地に移転されて約12年。オープン以来32年ずっと、永田さんが目利きされた民芸の品々が、店内を飾っています。
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揃える器は地元・鹿児島や九州のものに限らず、日本全国、さらには世界各地のものまで。できるだけ窯元に出向いて、直接購入しているといいます。
「民芸品は、使いやすくないといけません。自分で実際に手にとって使い心地が良く、なおかつ美しいもの、この空間やコーヒーに合うものを選んでいます」
永田さんの「好きなもの」への愛情がつまった可否館。
あと1本、バスを見送ってもう少し休んでいこうかな。そう思わせてくれる居心地のよさでした。
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可否館
鹿児島県鹿児島市永吉2-30-10
TEL:099-286-0678
http://coffee-kan.com/
営業時間:10:00〜20:00
定休日:第1・第3・第5水曜日
駐車場:あり
写真:尾島可奈子