100年後の工芸のために。絶滅危惧の素材と道具 「NEXT100年」
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こんにちは。さんち編集部の井上麻那巳です。
日本の手しごとが見直されつつある昨今、2016年10月22日より2017年1月29日まで “21世紀鷹峯フォーラムin東京「工芸を体感する100日間」” が開催されています。2015年に京都でスタートしたこの試みは、今年2016年は東京で、2017年は金沢での開催を予定しています。
今回はその中で、12月13日に行われたイベント “絶滅危惧の素材と道具「NEXT100年」” へ行ってきました。
「100年後の工芸のために」を合言葉に企画、運営されている “21世紀鷹峯フォーラム”。国内外の現代の生活の中に工芸が行き渡るために、よき使い手とよき鑑賞者を生みだし、よいものをつくり続けるための支援を中心に展開されています。 “絶滅危惧の素材と道具「NEXT100年」” では、まさに今途絶えようとしている日本各地の工芸に使われる素材と道具がそれぞれの当事者によるライトニングトーク形式で紹介されました。
「絶滅危惧」というタイトルだけあり、紹介された素材・道具は漆、綿、刺繍針から日本画の絵の具で使用する膠(にかわ)、友禅や絞り染の下絵に使用するあおばな紙、織物の機(はた)の一部品、筬(おさ)まで、工芸関係者でも目にしたことがないような裏方の素材・道具たちが多く、ひとつひとつの取り組みが興味深いものでした。
当たり前のことではありますが、ものを作るには道具が必要です。私たちが普段使っているものたち。机の上のマグカップも、座っている椅子も、今着ている洋服も、それを作るための道具があってはじめて生み出されています。ひとつひとつは小さな工程や小さな道具でも、たとえそれがひとつでも欠けてしまうと、同じものは作れなくなり、その産業は続けられなくなってしまう。日本の工芸産地はひとりも欠くことのできないリレーのように成り立っています。
お世辞にも華やかとは言えない業界だけれど、間違いなく現在の日本の工芸を支える作り手たちの生の声。縁の下の力持ちのその声は、今にも尽きてしまいそうな産業でも希望を持って未来を拓いていく気概に満ちていました。「日本の工芸を元気にする!」、「あなたと全国の工芸産地をつなぐ」だなんて、時に “負け戦” とも言われる活動をしている私たちも改めて勇気をもらいました。
一方で、まだまだこういった催しに参加しているのは工芸関係者が多いのが現状です。ものがいくら良くてもその良さが伝わらなくてはないものと同じ。100年後の工芸のために私たちができることを改めて考えさせられた1日でした。
文・写真:井上麻那巳