わたしの一皿 冷やし中華、とっくに始めています
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例年思うが、夏を無事に乗り切れるだろうか。夏が厳しくなっているのか、自分が弱っているのか。連日の暑さがこたえます。
先週は5日間連続でカレーを食べた。男子、夏はカレーですから。みんげい おくむらの奥村です。
暑い日々、スパイスでバテを解消したいとカレーもよいですが、どうしても冷たいものが食べたくなる。そうめん、かき氷。おっと、忘れてはいけないのが「冷やし中華」。
冷やし中華、始めました?こちらとっくに始めております。
個人的に、ゴールデンウィークが終わると解禁しちゃう冷やし中華。我が家ではお店で食べるような冷やし中華は食べません。それはお店におまかせで。
お店の冷やし中華、意外と具の種類が多いでしょう。あれを一揃えするのがちょっと面倒なので、具は基本的に2、3種。タレに黒酢を効かせて。
そのときにあるものでちょいちょいと。そして、酒に合うように。ビールもよいですが、冷酒でも、ワインでも、焼酎でも。
今日の冷やし中華はまさにそんな感じ。1人前の半分ほどをつまみ感覚でいただくのが好き。もちろん1人前しっかり食べても美味しいです。
夏はとにかく酢をきかせたい。黒酢のしっかりきいたタレが冷やし中華には合う。
ビシっと氷水で〆た麺にタレと具を絡め、最後に香菜を。今日は白髪ネギを使ったけど、水菜でもよいし、きゅうりでもよい。
今日は肉が見当たらなかったので肉抜きですが、蒸した鶏ムネ肉なんかをちぎって入れてもよし。
きくらげは歯ごたえが大好きなので必ず使う。もどすだけでよい楽ちん食材。
今日の影の主役はきくらげだ。きくらげが食べたいがために冷やし中華にした、と言ってもよいぐらいだ。
最近では国産のきくらげも、生のものや乾燥のものなどいくつか見かけるが、中国・台湾にはもっともっとさまざまな種類がある。出かけた際に買ってきて、常時いくつかの好みの種類をストックしている。
今日は中国の吉林省長白山のあたりのもので、かなり小さめだが厚みがありとにかく食感がよい。プリプリ、コリコリ。プリプリの麺ともなんとも相性がよい。
涼を取るならうつわも涼やかなものを。今日は倉敷ガラス、小谷眞三さんの抹茶碗を小さな麺丼に見立てて。
御年88歳を迎える小谷さん。こちらのうつわは数十年前の作になる。気泡が入った透明のガラスは白みを帯びて、なんとも夏に涼やかなのです。
倉敷ガラスというと小谷ブルーとも言われる青を浮かべる方も多いかもしれませんが、この白もさすがに定番色、抜群に使いやすい。
(ちなみに小谷さんのものづくりについては以前に特集されているものがあるのでこちらも改めて読んでもらいたい。)
手吹きのガラスと機械生産のガラスと、一番のちがいは何だろうか。
簡単に言えば「ぬくもり」だろうか。手吹きのガラスはよい厚みを持たせることができる。
多少雑に扱っても割れなかったりというところも家庭で使うにはよいし、そのぽってり感が何より冬に使っても寒い感じがしない、というのがもっとも好きなところだ。
ガラスは世界中にある工芸だ。もちろん日本で作られたこのガラスのうつわは和食にも似合う。
しかし世界のどんな料理にも似合うのだ。今日は中華だし、小谷さんがコップ作りの基にしたメキシコの料理だってよいだろう。
冷やし中華、ずびずびと食べ進め、頃合いを見てラー油を入れましょう。味に変化を。この黒酢の冷やし中華は辛子にあらず。
ここのとこ、ラー油も様々なものを見かけるし、美味しいものが本当に多い。ラー油を使い分けるだけでまた冷やし中華の雰囲気も変わります。
好みの辛さに仕上げたら、一気にフィニッシュ。爽快に汗をかきたい。
実は去年の7月もガラスのうつわを取り上げた。その時は福岡県の小石原の作り手太田潤さんで、同時に小石原周辺が豪雨で甚大な被害を受けたことを記した。
あれから一年、今回はたまたま倉敷ガラスだ。今月、倉敷も豪雨で甚大な被害を受けている。一刻も早くおだやかな日常が戻ることを願う。
状況が落ち着いたら、岡山・倉敷に行き、当地の民藝、手仕事を買って作り手をますます応援したい。
奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。
みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com
文・写真:奥村 忍