日本最古の絵の具店、京都 上羽絵惣が作る爪に優しい胡粉ネイル
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マニキュアをひと塗りすると、鮮やかな色に気分も明るくなります。ファッションとしてだけでなく、時には疲れた心を元気づけてくれる、そんな効果があるような気がします。
ただ、従来のマニキュアが肌に合わない方がいるのも事実。
肌が弱かったり、アレルギーをお持ちだったり、妊婦さんや年配の方、病気療養中の方なども使える天然素材を使ったネイルを見つけました。
なんとそれは、日本画の材料から作られているのだそう。
日本最古の絵の具屋が作るネイル
ホタテ貝殻の微粉末から作られる「胡粉 (ごふん) 」。日本画になくてはならない顔料です。
この胡粉を使って、爪に優しく発色の良いネイルが作られました。その名も「胡粉ネイル」。
2010年の発売から評判を呼び、2015年にはグッドデザイン賞を受賞。現在では日本のみならず、海外観光客にも人気です。
作っているのは、京都の「上羽絵惣 (うえばえそう) 」。創業は1751年、日本最古の日本画用絵の具専門店です。現在も多彩な絵の具の製造販売を行なっています。
絵の具屋さんは、なぜ化粧品を作ったのか
絵の具専門店がなぜ化粧品を作ったのでしょう。京都本社にてお話を伺いました。
「これまで培ってきた和絵の具作りのノウハウを現代に役立てられないだろうか?という考えから胡粉ネイルは生まれました。
弊社では、天然素材と色彩を追求した商品づくりを続けてきました。ビビッドな色から濃淡を何段階にも調整した淡い色まで幅広い色のレシピを作り出してきた実績があります。
このノウハウは、人がまとう色としても活かせるのではないかという発想が胡粉ネイル誕生につながりました。
日本の伝統色を260年以上守り続けてきた私たちだからこそ、再現できる色があるんです。美しい和の色、それを爪に乗せた時の発色の良さを大事にしています」と、店長の西村由美子さん。
「『爪は小さなキャンバス』という発想の元、日本の伝統色を再現する技術はもちろんですが、爪に合う色を吟味して、新色や季節ごとの限定商品を開発しています。胡粉ネイルを絵の具のように混ぜて、新しい色を作ることもあるんですよ」
10年かけて乾燥させた貝殻が原料
胡粉は、ホタテの貝殻を10年ほど天日干しして砕いた微粉末。貝殻に含まれる真珠層が爪に美しいツヤを与える効果が期待できるといいます。粒子に角がなく、丸い形をしているため肌にも爪にも優しいのだそう。
イヤなニオイがせず、すぐに乾く
水性絵の具と同じく、胡粉ネイルは溶剤として水を使って作られています。調合にはシンナー系の有機溶剤を一切使用していません。そのため、爪に塗って乾燥させる際に蒸発するのは水なので、マニキュア特有の刺激臭もありません。通気性が良いので、爪にフタがされたような圧迫感を感じにくいのも特徴です。
また、速乾性があり2〜3分で乾くので、お出かけ前の慌ただしいときにもすぐ塗れると喜ばれているのだそう。水溶性なので、刺激臭のある一般的な除光液も不要です。手指の消毒用アルコールできれいに落とせます。爪に優しくて使い勝手が良いのは嬉しいですね。
介護施設や医療現場での活用も
天然素材を使って作られていること、水溶性であることで、アレルギーや肌が弱くて従来のネイルが使えなかった方、妊婦さん、高齢者、病気療養中の方の間でも活用されています。
「がん治療の抗がん剤の影響で黒ずんでしまった爪をカバーしたい、という方が使ってくださるケースもあります。院内サロンに置いていただいているところもあるんですよ。
他にも、介護施設での訪問美容やボランティア活動にご利用いただいたり、爪に優しい胡粉ネイルだからこそできることがあります。商品を通じて喜んでいただけることがあると、何よりの励みになります」
使い勝手の良さ、上羽絵惣ならではの美しい発色。古くから培われてきた技術と昔ながらの天然素材が生んだ胡粉ネイルは、現代の私たちの暮らしにも新たな彩りを与えてくれるアイテムでした。
<取材協力>
上羽絵惣株式会社
京都市下京区東洞院通高辻下ル燈籠町579
075-351-0693
https://www.ueba.co.jp/
文:小俣荘子
写真:山下桂子 (一部イメージ画像提供:上羽絵惣株式会社)