オチビサンと巡る四季の鎌倉 〜水仙の花ひらく冬編〜
エリア
自然豊かな浄智寺で水仙みっけ
鎌倉駅から電車でひと駅。北鎌倉の駅を降りて10分ほど歩くと浄智寺へ到着します。浄智寺は、北条時頼の三男、29歳の若さで亡くなった宗政を弔うために建てられたお寺です。境内は山にかこまれ、歴史あるお寺らしくしっとりとした佇まい。石段を上り山道を進んだ先に鐘楼門が見えてきます。
浄智寺は自然が深く野生的。今回お目当ての水仙のほか、梅や椿など、冬のお花がたくさん咲いていました。春は桜、夏には紫陽花、秋にはススキと1年中季節の草花が楽しめるお寺です。
奥には江ノ島鎌倉七福神のひとり、愛らしい布袋尊が。布袋さんのおなかをなでると、元気がもらえるのだとか。そういえば、おなかがなんとなくツヤツヤしています。
美しく手入れされた広いお庭や茅葺き屋根の建物が心を落ち着かせてくれます。
古民家を改装した喫茶店でひとやすみ
浄智寺へ向かう道すがら、とっても気になった看板がありました。「喫茶ミンカ OPEN」と書かれたちいさな看板。外を散策してすっかり冷えた体をあたために、足早に向かいます。看板の矢印のさす奥へ進むと、ひっそりとそれはありました。
もともとオーナーが住んでいた鎌倉の古民家が取り壊されることになり、出会ったこの物件を改修したという店内。元ある家をなるべく活かしながら、壊しながら、オーナーと大工さんとで一緒に考えてつくっていったそうです。
もともとはデザインの仕事をしていたというオーナーは、お菓子づくりやお料理が好きだったのではなく、誰かをおもてなしすることが好きなのとやさしくお話してくれました。店内のしつらえや流れる音楽にもひとつひとつオーナーのこだわりが散りばめられ、ゆっくり落ち着いた気持ちの良い時間が流れます。
あったかいコーヒーと看板メニューだという自家製プリンをオーダーしました。コーヒーは、京都のオオヤコーヒ焙煎所の豆を使っています。お店を開くときにオオヤさんから教えてもらったという独特のネルドリップの淹れ方は、とってもゆっくり、とっても丁寧。
コーヒーが苦手な方もいるからと用意されているのはめずらしい韓国茶。冷えた身体をあたためるべく、水正果茶(スジョンガ)というシナモンと生姜のお茶もいただきました。
おやつの他にナポリタンやカレー(レシピは浄智寺の住職さん直伝!)などの軽食もあり、メニュー構成は昔ながらの喫茶店をイメージしているそう。昔から喫茶店で本を読むことが大好きだったので、そういうお店をつくりたかったという言葉通り、店内にはオーナーの集めた本がたくさんありました。ゆっくり、自宅のようにくつろいでしまいそうです。「よく予約はできますかとお電話いただくこともあるのだけど、喫茶店で行列をつくるのはおかしいし、予約をするのもなんだか違うなって、思うんです」。ふらっと来てふらっと入れるのが喫茶店の良さだと語るオーナーのやわらかい笑顔に、またふらっと会いに来たいなと思いました。
比較的気温が高く、散策しやすい鎌倉の冬。空気が澄んでいる分、空も自然もより美しく見えるような気がしました。次回は春。新緑が芽吹き桜が舞う、鎌倉がいちばん華やぐ季節ですが、花より団子、甘いものも忘れずに。
探訪の一覧
正宗工芸美術製作所
鎌倉市御成町13-29
0467-22-3962
www.sword-masamune.com
なると屋+典座
鎌倉市小町1-6-12 寿ビル2階
0467-23-7666
narutoya-tenzo.com
浄智寺
鎌倉市山ノ内1402
0467-22-3943
喫茶ミンカ
鎌倉市山ノ内377-2
0467-50-0221
文:井上麻那巳
写真:後藤洋平