わたしの一皿 桜を長く楽しむ北海道のうつわ

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北海道 高野繁廣さんの木のうつわ

また今年も桜のシーズンがやってきた。うきうきしますね。3月末から4月の初旬が桜の見頃、と思っている方も多いと思いますが、いやいや日本は広いんだ。長いんだ。実は地域によってけっこう桜の時期が違います。今日はそんな話。みんげい おくむらの奥村です。

12月、毎年沖縄へ。窯元の年内最後の窯出しがあったり。その頃になるとオリオンビールの「いちばん桜」が売られていて、プシュッとやるたびにそろそろ桜か、とそんな風に思います。沖縄の桜は1月中下旬に開花。一方、5月初旬GWの頃は北海道が桜の盛り。一昨年は札幌でずいぶん美しい桜を見たっけな。

ね、南北の開花をくらべてみただけで、ずいぶん長い桜のシーズンだとわかる。同じ地域でも平野と山じゃ開花時期が違うだろうし、いろんなタイミングにいろんな楽しみ方があるんですよ、桜ったら。

桜の時期を長く楽しみたい。それはみんな同じでしょう。今日はそんなことを願って北海道の木工のうつわに桜をかたどった最中を乗せてみました。さすがに和菓子までは自作できないのでこれは買ってきたもの。

北海道の木工は家具やうつわで全国的にも知られているかもしれませんが、アイヌの木工と言われたらどれだけの人がピンとくるでしょうか。

はいはい、木彫りの熊ね。と思った方。それも正解。しかし寒い北海道。かつては焼き物ではなく木のうつわで生活をしていたのです。木彫りの熊以前から、長くすばらしい歴史があるのです。そして今もアイヌの伝統の木工を作り続けている人たちがいます。

今日はその1人である、北海道沙流郡平取町二風谷(にぶたに)の高野繁廣(たかのしげひろ)さんのうつわです。集落の横を流れる沙流川と山の景色がうつくしい場所で作られた「ニマ」(アイヌ語でうつわのことを意味する)。地元のくるみの木で作られたもので、無塗装です。木、そのままの仕上げ。

木そのものの仕上げというのは、本来的なものではあるけれど現代の生活にはなかなか馴染まない。無塗装は油ものや液体がかんたんに染みてしまう。そのため一般的にはこうした木工はウレタンで仕上げるもの。ウレタンの膜をつくることで染み込みから守ります。が、ウレタン塗装をすると木の触り心地はない。

アイヌの古いものを見ていくと、いろいろなものが染みたその時間の経過や経年がとても良い風合いを見せることがわかります。汚れとみるか、味とみるか。

ちなみこの両極端だけではなく、無塗装とウレタンの中間ぐらいというか、オイル仕上げもあります。これだと染み込みが少しマシになり、木そのものの風合いが残ります。うちでは高野さんの仕事からは無塗装とオイル仕上げを選んでいます。木工を選ぶときはぜひこの仕上げの違いをくらべてみてほしい。

北海道 高野繁廣さんの木のうつわ

我が家で使っているものがこちら。右の「イタ」(盆)は5年目になったかな。まだまだ若いですが、お茶を淹れる時に使っているので少しずつシミができてきています。これからもどんどん面白い表情なっていくでしょう。

左の、今回使っているニマはまだ1年目。ピカピカです、まだまだ。こちらはあんまり油のものや液体のものなどを乗せて使わない。どちらかというと乾き物専門です。そんな風にしてゆっくり使ってみようと思っているもの。

ちなみにニマに描かれているのはシマフクロウ。よく見ると、なんだかかわいらしいでしょう。トゲトゲしたような模様は二風谷特有の「ラムラムノカ」(ウロコ文様)。イタの丸々した模様は「モレウノカ」(うずまき)。手にとって触れるとその凹凸や線から彫りの感覚が伝わってきてうれしい。

北海道 高野繁廣さんの木のうつわでお茶の時間

さてさて、説明が長引きました。お茶が入りましたよ。お茶は春に飲みたい台湾のお茶を。中国茶、台湾茶はいいですよ。お茶飲みながらのんびり話でもしてね。和菓子とも相性良いですし。桜、果たして今年はあとどこでどれだけ楽しめるかな。

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文・写真:奥村 忍

*こちらは、2019年4月5日の記事を再編集して公開いたしました。