子どもが喜ぶオリジナルもなか。ポイントは専門店の“もなかの皮”
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最近の子どもとしては珍しいかもしれませんが、うちの娘はケーキよりも和菓子好き。
今日は、娘が大好きな和菓子の中から「最中(もなか)」について学んでみることに。
“もなか”というと、どうしても中身が気になってしまいがちですが、今日は「皮」が主役です。
みなさん、もなかの皮を作る専門店があるのをご存知でしょうか?
和菓子屋さんでも、あんこは自家製で皮は専門店のものを使う、というケースが多いのだそう。
そんな専門店が作る皮を使って、オリジナルのアイスもなかを作ってみたいと思います。
加賀種食品工業株式会社の「最中皮」
菓子どころ金沢にある「加賀種食品工業株式会社」。
1877年(明治10年)の創業以来、最中皮や、ふやきなどを専門に作っています。
専務の日根野逸平(ひねの いっぺい)さんにお話を伺いました。
「もなかの皮を自家製で用意している和菓子屋さんは全国でも数軒です。もなかの皮は複雑で長い工程を経て作られるため、昔から分業制になっています」
「もなか」と名のつくお菓子は平安時代からあったそうですが、今の形になって一般的に食べられるようになったのは江戸中期頃からといわれています。
「明治の頃には、もなかの皮は専門店で作られるようになりました」
多くの人にもなかを食べてもらいたい。190種類の「最中皮」
加賀種さんは東京の神田で創業。その後、2代目が富山出身だったこともあり、1912年(明治45年)に北陸の金沢に移転しました。
加賀種さんの特徴の一つが、既製の皮の種類が多いこと。顧客に合わせた皮だけを作るのではなく、丸型、四角型をはじめ、一般的に広く使われる型を多く取り揃えています。
「昔ながらのものですと、お城や藁葺き屋根の家とか、桜、菊、栗、貝などの季節ものが多いですね」
金沢ゆかりの「福梅」のほか、七福神、干支、ダルマ、松竹梅、鏡餅、鯛などの縁起物や、金太郎、眠り猫、くま、うさぎ、いちご、クローバーなど、バリエーション豊富です。
どうしてこんなに種類があるのでしょう?
「うちは、皮を焼く金型も自社製なんです」
通常、金型は専門業者が作るそうですが、現在、業者が全国で2軒となってしまったことから危機感を持ち、10年ほど前に自社製に切り替えたのだそう。
自社製になってからは、型のアイディアが出るとすぐに製作できることから、さらに種類が増え、現在、その数は190種類にものぼります。
誰にでも買えるように。そこには「もっと多くの人にもなかを食べてもらいたい」という思いもあります。
また、「今、我々が金沢にいることの意味は大きい」という日根野さん。
「茶の湯の文化が受け継がれてきた金沢の街で、目も舌も肥えているみなさんの厳しい目に晒されながら技術を磨いています」
加賀種さんの最中皮で作るアイスもなか。作る前から楽しみになってきました。
材料は、もち米と水だけ
それでは、もなかの皮を選びましょう。
加賀種さんの最中皮は、オンラインショップ「たねらく」で誰でも注文することができます。
「いっぱいあって、迷っちゃうなぁ〜」と言いながら、娘が選んだのは「うさぎ」と「星」。
他にも、カップ型や定番の型を選び、注文から数日で届きました。
いよいよ、アイスもなかを作ります。
と、その前に、もなかの皮はどうやって作られているのでしょうか。
加賀種さんのHPで製作工程を見ることができるので、視聴することに。
皮の材料はシンプルで、もち米と水のみ。
そのため、良質な「もち米」が欠かせません。加賀種さんでは、北陸産の「新大正もち」を使っています。
独特の粘りとコシがあり、焼き上がりの風味がよく、皮を作るにはぴったりの品種なのだそう。
精米したお米は粉にしてから蒸し、餅につきあげます。
米のまま蒸すよりも、粉にしてから蒸して餅にする方が均一に伸び、サクッとした食感になるそうです。
その後、餅を伸ばし、人差し指サイズに切っていきますが、やわらかい餅を均等に切るのが職人の腕の見せ所。
「小さ過ぎると形にならないし、大き過ぎると耳(余分な部分)ができてしまう。手の感覚だけで切っていくので覚えるのが大変です」(日根野さん)
次に、切った餅を金型に入れ、焼いていきます。
これもすべて手作業。火加減を調整しながら焼き過ぎたり色むらがないよう、均一に焼いていきます。
焼きあがったら、ひとつひとつ検品し、色むらのあるものや欠けているものは外していきます。
こうして最中皮が完成。職人さんの手作業にこだわり、ひとつひとつ丁寧に作られていることがわかりました。
娘も、皮の材料が大好きなお餅と知り、俄然、興味が湧いてきた様子。
せっかくなので、まずは、皮そのものを味わってみることに。
美味しい!!
パリッとして、香ばしくて、口溶けはふわっとしています。甘みはないので、子どもには物足りないようですが、大人は皮だけ何枚でも食べられそう。
アイスと一緒に食べるとどんな風になるのでしょう。
あれこれ試してみたくなる
最初に、シンプルな「アイスもなか」を作ります。
うさぎの型に、いちごアイスを詰めていきます。
隙間なくアイスを詰めるのがコツとのこと。バターナイフなどを使うと子どもでもきれいに詰められます。
裏表、両方の皮にアイスをつめたら、2つを重ねます。
星型にはバニラ。
できたら冷凍室へ入れて固めます。その方がアイスと皮がなじむのだそう。
30分ほど置いて、いただくことに。
美味しい!!!皮がしっとりとアイスになじみ、口どけがふわっとしています。
コンビニなどに売っているアイスモナカの皮は小麦粉で作られているものが多く、最後までパリッとした食感が特徴ですが、もち米の皮は、もちっとした食感。
皮の風味もしっかりと感じられます。
フルーツなどを挟んでみるのも美味しそうです。
次は、トッピングで楽しんでみることに。
アイスが溶けないうちに「いただきます!」
これまた美味しい。パリッとした食感の後、皮が主張し過ぎずにアイスと一緒にふわっと溶けていきます。
皮を味わっているかどうかは不明ですが、娘も「おいしぃ〜」と、あっという間に完食。
もなかの皮は小さめのものが多いので子どもにもピッタリ。味やトッピングを変えていろいろ楽しめるのもうれしいです。
あれこれ試したくなって、ついつい食べ過ぎてしまいました。
いろんな食のシーンで使える材料に
自分で作るアイスもなかに、娘も大満足。
皮自体の美味しさも知ることができ、親子で楽しく美味しく学べました。
「これからは、もなかの皮を和菓子の材料としてだけでなく、料理やデザートなど、いろんな食のシーンで使える材料として提案していきたい」という日根野さん。
「お米でできているものなので、毎日食べているご飯のように、いろんなものと相性がいいので、いろいろに楽しんでもらえたらと思います」
クラッカーがわりに、チーズなどのおつまみをのせても美味しそうです。
「もちろん、もなかとしても食べてもらいたいです。ケーキだけでなく、もなかやおまんじゅう、どらやきとか、和菓子を食べてもらえるとうれしいです」
オリジナルのアイスもなか作りをきっかけに、親子で和菓子を楽しんでみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
加賀種食品工業株式会社
石川県金沢市春日町8-8
076-252-2221
オンラインショップたねらく
文・写真 : 坂田未希子