【イベントレポート】「職人さんを囲むトーク&交流会」〜三河のガーゼケット「BLANKED」の中瀬元さん&太田圭佑さん〜

全国各地に綿々と息づく、日本のものづくり。普段、何気なく使っている日用雑貨にも、長い歴史の中で培われ、蓄積されてきた、その産地ならではの知恵や工夫が活きています。

「さんち商店街」で紹介するブランドを訪れて話を聞くと、一つの商品が出来上がるまでの背景やストーリーにワクワクすると同時に、その果てしない道のりに驚かされることもしばしば。これほど多くの職人さんの多様な技を要し、さまざまな工程を経てはじめて、私たちの手元に届くということに感動を覚えます。

知っているようで意外と知らない、そんなものづくりの奥深さや細やかさ、そして面白さをより多くの方に、もっと身近に感じていただけたら。そんな思いを込めて「職人さんを囲むトーク&交流会」を開催しました。

「BLANKED」を手がける太田圭佑さん(左)と中瀬元さん。

※イベントの概要はこちら:https://www.nakagawa-masashichi.jp/staffblog/blog/b1162/

知るほどに面白い、ものづくりの裏側

今回お招きしたのは、さんち商店街で高い人気を誇る三河のガーゼケット「BLANKED」を手がけるブランドマネージャーの太田圭佑さんと、三河木綿の産地で織りと縫製を行う機屋、ナカモリの社長・中瀬元さんです。

「ガーゼケットとは、簡単にいえばタオルケットの生地がガーゼになったもの。軽くてふんわりとした手ざわりが特長で、それに加え、BLANKEDは高い吸水性を持ち合わせています。」と話す太田さん。

「まずは一見にしかず」と、商品になる前のガーゼ生地と、BLANKEDにそれぞれスポイトで水をたらり。前者は表面に水の玉ができるのに対し、後者はあっと言う間に生地に染み込みました。参加者からは「おー!」「すごい」「こんなに違うのね」との声が挙がります。

トークセッションでは、そんなガーゼケットが生まれるまでの背景をスライドとともに解説。そもそも三河木綿が生まれたのは江戸時代であること。三河にはかつて1400軒もの織物工場があったのに今では20軒しかないこと。綿花のほとんどは輸入品であり、栽培地によって色や性質がそれぞれ違うこと。

糸の原料である綿花。産地ごとに個性もさまざま。

そして繊維産業は分業制が基本であり、ガーゼケットも紡績、染色、織り、縫製、洗いなど、各分野の職人さんに支えられているということ。工程の一つ一つを、順を追って分かりやすく説明をしてくれたお二人の話を聞くにつれ、ものづくりの面白さを実感するとともに、生み出すことの難しさを改めて知ることになりました。

やみつきになる肌触りの秘密

織りを担当する中瀬さんは会場に太さの異なる数種類の糸を用意。なかでも一番細い糸は、少し力を入れて引っ張るとすぐにプツンと切れてしまうほど繊細なものでした。

糸の太さによって、生地の質感は大きく変わる。

「織物をより柔らかな質感に仕立てるには経糸(たていと)が決め手で、細い糸を使えば使うほどふんわりと柔らかな仕上がりになるんです」と中瀬さん。

「でも、それが難しいんですよね……」と太田さんは言います。

「そうなんです。細い糸は繊細で切れやすい。ガーゼケットの場合、160㎝幅に8000本の細い経糸が通っていて、そのすべての張り具合を均一にしなければならない。テンションをかけすぎれば切れるし、緩すぎればたるんで引っかかったりすることになるんです」

職人さんが経糸1本1本の張り具合を手作業で調節する。

そんな中瀬さんの話に「8000本の糸を同時に操作?」「どうやって同じテンションをかけているんですか?」と参加者も興味津々の様子で聞き入っていました。

BLANKEDは4層構造。イベントではその断面を見せてくれた。

さらに「BLANKEDは4層構造でできていて、中層部分にはあえて太い糸を使用しています」と太田さん。それはどうして? 

「表面に細い糸を使うと肌触りがなめらかになります。でも、それだけだとガーゼとしては頼りない。中層に太い糸を通すことでもちっとした頼りがいのある感触が生まれるんです。このバランスこそが、やみつきになる肌触りの秘密です」

シンプルゆえの、無限の可能性

イベントの後半、「開発において面白かったことは?」という質問に対して、

「織物の組み合わせって無限大なんですよね。どんな糸を使い、どう染め、どう織るのか。その一つひとつを選択することは難しくもありながら、とても面白かったです」と話す太田さん。中瀬さんも、「織物は、経糸と緯糸(よこいと)の組み合わせでできていて、実はとてもシンプルなんです。だからこそ太田さんの言うように無限の可能性があるんですが、それだけにやりすぎちゃうこともあって……(笑)」と応えます。

「確かに。最初は4層構造ではなく、6層や8層にしようとしていましたよね。でもそれだと分厚くてボリュームが出すぎてしまって……」(太田さん)

「オーバースペックになりすぎた。そこをうまく太田さんが調整してくれて〝ちょうどいいものづくり〟ができたと思います。とはいえ、まだまだ最終形ではありません。だって綿織物に限界はありませんから」。そう力強く語る中瀬さんが印象的でした。

さて、トークの後は交流セッションに。参加者は、太田さんと中瀬さんにさまざまな疑問・質問を投げかけていました。

「ガーゼケットを家で洗う時のおすすめの方法はありますか?」

「敷きパッドダブルサイズは作らないんですか」

「ガーゼケットやガーゼハンカチの次は、何を作る予定?」

最後の質問に対して、参加者からは「肌触りがいいのでパジャマが欲しい」、「夏に使えるストールも!」といった声が挙がるなど、和気あいあいの雰囲気のなか話に花が咲いていました。

職人さんの声を生で聞くことができる今回のイベントは、ものづくりへの理解度を深め、ガーゼケットそのものに対する親近感や愛着をより深めてくれたような気がします。

さんち商店街では、職人さんから直接ものづくりのお話を伺うこのような機会を、これからも様々な形で企画したいと考えています。

第1回のイベントレポートはこちら:https://story.nakagawa-masashichi.jp/264735
BLANKEDブランドページはこちら:https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/r/rbrand04/

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