手しごとを堺の街から。関西を代表するクラフトフェア「灯しびとの集い」

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こんにちは。さんち編集部の井上麻那巳です。
全国各地で行われるいろいろなイベントに実際に足を運び、その魅力をお伝えする「イベントレポート」。今回は、大阪府堺市で、11月12日 (土)・13日 (日) の2日間にわたり開催された「灯しびとの集い」に行ってきました。

気持ちの良い秋晴れの中、会場内にはたくさんの人が。
気持ちの良い秋晴れの中、会場内にはたくさんの人が。

関西を代表するクラフトフェア「灯しびとの集い」

「灯しびとの集い」は2009年からスタートしたクラフトフェア。今年で8回目を迎えました。出展するつくり手の質と運営スタッフの意識の高さから評判となり、関西をはじめ全国からたくさんのクラフトファンが訪れるイベントとなりました。会場は大阪府堺市の大仙公園。刃物の産地として知られる堺は、歴史的に見ても、日本の工芸を育てた「茶の湯」に縁が深い街。その堺に、日本全国のつくり手と使い手が集まってきます。

会場の大仙公園はちょうど紅葉を迎えていました。
会場の大仙公園はちょうど紅葉を迎えていました。

様々なプロの視点で選ばれる出展作家たち

500組あまりの応募がある中、実際に出展できるのは100組。約5倍の倍率の中、毎年異なる選考委員がその年の出展者を選びます。今年の選考員は小林和人さん(Roundabout/OUTBOUND店主)、塚本カナエさん(商品開発ディレクター)、堀あづささん(dieci店主)、正木なおさん(ギャラリスト)、柳原照弘さん(デザイナー)、辻野剛さん(fresco /灯しびとの集い実行委員会会長)の6名でした。「ものに対する立場の違いから、それぞれで全く目線が違って面白い」と自身も作家でありながら実行委員長を務める八田亨さんは語ります。必要事項と小さなコメント欄、決まったレイアウトによるたった3枚の写真で選考は行われ、出展作家のジャンルは陶磁、ガラス、木工、金属、染織など多岐にわたります。やはり圧倒的に多いのは陶磁ですが、革や布といった素材を扱う作家さんも多くいました。

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ここで、個人的に気になった作家さんを写真でご紹介。 1組目は岐阜県の林志保さんです。作品シリーズによって異なる特徴的なマテリアルが印象的。

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2組目は埼玉県の鳥居明生さん。これまで様々な陶磁器の器をつくられてきたけれど、数年前より「かたまりをつくりたい」と思い現在のスタイルになったそう。ペーパーウェイトのようでもあり用途が無いオブジェのようでもある「かたまり」たちは、ユニークな世界観をつくっていました。

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3組目は大阪府のefusaさん。2016年に活動を始めたばかりだそうですが、張子の技法でつくられる紙のプロダクトは独特のオーラがあり、一目で釘付けに。

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青空の下、ここでは紹介しきれないほどたくさんのクラフトが並びます。

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会場には厳選された飲食店のブースも並びます。南大阪を中心に、どこも関西では知る人ぞ知る人気店ばかり。その中でもいくつかのお店は朝から行列ができることもあるのだとか。また、音楽ライブやトークショーも行われ、クラフト以外でも楽しい時間を過ごせる工夫があちらこちらに。

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クラフトブームの、これから

「灯しびとの集い」を立ち上げた当初の志は今でも全く変わらないと語る実行委員会会長の辻野剛さん。この言葉の一方で「クラフトを “ブーム” にはしたくない」と言っていた辻野さんは、2015年の開催後にこう語っています。

この「流行」を皆さんはどんな風に捕らえますか? “本当にクラフトとして秀逸な生活の道具という作品を、人々の暮らしに滑り込ませる。” そんな狙いを持って始めた「灯しびとの集い」は、単純に手作りの物が市場に氾濫する様子に危惧を感じながら、クラフトフェアを開催してきました。しかし、実際にその現実が目前に広がり、多くの人がそれらに関わるようになりました。ところが、その事実は直面してみればそれほど怖いことではありませんでした。公園というバブリックな場所での開催は、作品(作家)と使い手の偶然の出会いを期待した故。本当に優れた物を紹介することで、目利きを育み、次代のクラフト振興や豊かな生活環境を牽引する目的を持って続けてきました。今実際に目前に起こっている現象は、人々に多様で豊かな「選択肢」が育ち、多くの人がそれを楽しめるという状況ではないでしょうか。

第7回 灯しびとの集いを終えて」より一部引用

目利きを育てること。実際に、8年間毎年ここで器を買うことが習慣になった人もいます。当たり前にクラフトが生活に溶け込み、百貨店やオンラインショッピングと同じように、選択肢のひとつとしてクラフトフェアがある。旅の行き先のひとつに工芸産地を選ぶことも、こうして当たり前になっていけたらと、身の引き締まる気持ちになりました。

灯しびとの集い公式ウェブサイト

文・写真:井上麻那巳

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