掃除にも洗顔にも。天然のスーパークロス、春日のキョンセーム

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めがねとキョンセーム

「炊事・洗濯・掃除」に使える、おすすめの工芸を紹介する連載。今回は、年末掃除にも活躍するであろう、掃除の工芸道具をご紹介いたします。

最近、とうとうリーディンググラスが生活必需品の仲間入りをしました。視力は良いので、初めての眼鏡で扱いに慣れていません。レンズを触りがちで、すぐに汚れてしまうのが気になります。

眼鏡に付属していたクロスも悪くはないのですが、キョンセームという革で拭くと、一点の曇りもなくピカピカになって気持ちが良いことを知りました。

めがねとキョンセーム

春日のキョンセームクロス

本格的に楽器やカメラを扱う方にはもしかしたら馴染みの革かもしれませんが、私がキョンセームの存在を知ったのは、奈良に住むようになった8年前くらいのことです。

セームは鹿の皮をなめした革のことですが、きちんと定義すると

・鹿皮を使用しており、最高級は中国江西省を中心に、赤土地帯のみに生息する野生の世界最小種の鹿 (キョン) の皮を使う

・本来の製法通り魚油還元法で製造

・染色していない

上記を満たした革を、キョンセームと称します。

奈良には毛皮革産地があり、鹿皮の製造量は全国シェアの90%を占め、なめしの高い技術を誇ります。中でも独特の魚油還元法を要するキョンセームの製造は、世界的に見ても奈良県宇陀市にある株式会社春日に限られる、とも言われています。

キョンセームの特徴は、何よりも繊維の細かさにあります。繊維細胞の太さが、なんと髪の毛の10万分の1だとか!汚れを落とすのに使われるマイクロファイバーよりもはるかに繊維が細いので、それ以上に細かい汚れを取ることに優れ、お手入れするモノを傷付けません。細かい繊維は手ざわりもとてもやわらかです。

電化製品にも、なんと美容にも、おすすめです

繊維の細かさに加え、人工クロスには無い特徴として、油分の必要なものに最適な油分を加えて (加脂) 、油分の必要でないものからは油分を取り除く(除脂) という面白い特徴があります。高級な楽器の表面をお手入れするには、程良い潤いを与え、光沢を増すのでおすすめだそうです。

現代の生活には、テレビやパソコンをはじめとする電化製品が家庭に欠かせない存在となっていますが、どんな道具で掃除をするか悩みませんか?

電気製品は水気が苦手ですし、クリーナーなどの薬剤も液晶のコーティングをはがす可能性があって避けたいところ。静電気も起きやすいので、マイクロファイバーで拭いてもホコリが戻ってしまいます。

意外とやりがちですが、ティッシュで掃除をするのは画面などを傷つける原因となります。その点、キョンセームは静電気も除去してくれるのでホコリ戻りもなく、表面の汚れを力を入れずにすっきりと取り去ることができます。

キョンセームは耐久性に優れているので、きちんとお手入れすれば長く愛用できます。とはいえ全く難しいことはありません。石鹸を溶いたぬるま湯で押し洗いし、

洗った後に陰干しをします。ほぼ乾いた段階になってから、手で揉みほぐすのがコツです。人の肌と同じく、熱いお湯を使うと痛んでしまうので注意が必要です。

広げてみるとこんな感じです 四角タイプもあります

一般的には消耗品とされるクロス類ですが、キョンセームはむしろ味わいが増して手放せなくなるのが最大の魅力かもしれません。

今回は掃除道具として紹介していますが、実はスキンケアの道具としてもおすすめなのです。柔らかくて肌にもやさしく、肌より細かい革のコラーゲン繊維細胞が毛穴の汚れをすっきりと落とします。

使い方は、革を水に塗らして、石鹸を付けて軽く擦る感じです。石鹸を付けずに、水だけで毛穴を軽くマッサージをするのも良いですが、石鹸を付けた方がすべりが良い様です。

掃除と美容で使い分け、少しづつ溜まった日々の汚れを落とすのに欠かせない道具となりました。

<掲載商品>
キョンセーム ご家庭用 1枚物15デシ (株式会社春日)

<関連商品>
美容洗顔セーム革

細萱久美 ほそがやくみ
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、
美味しい食事、美味しいパン屋、
猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。

文:細萱久美

*こちらは、2017年11月14日の記事を再編集して公開しました


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