金沢のいろどりあふれるお針子道具 「加賀ゆびぬき」のこと、教えてください

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石川県金沢に古くから伝わる工芸品「加賀ゆびぬき」。絹糸を1本1本重ねてつくられるその模様の美しさは息をのむほどです。「加賀ゆびぬき」のことが知りたくて、金沢で活動されている作家・大西由紀子さんを訪ねました。

——こんにちは。今日は「加賀ゆびぬき」のことが知りたくてやってきました。早速見せていただきましたが、すごく綺麗です!

ようこそ金沢へ。「加賀ゆびぬき」は、もともと金沢に実用品として伝わってきたものです。金沢は城下町でしたから、美しい着物を仕立てるお針子さんがたくさん居ました。

着物のお仕事って、いろいろな色糸を使うでしょう?当時は糸がとても貴重だったので、残った短い糸やあり合わせの糸を使って、お針子さんがお休みの日に、自分のお道具として「ゆびぬき」をつくっていたんです。

昔の人ってお裁縫が日常のお仕事だったので、私たちが文房具を揃えたり、台所のツールを選んだりするように、裁縫道具を揃えたんでしょうね。これは絹糸を1本1本丁寧にかがって模様をつくっていくんですよ。

こちらは伝統的な文様、「うろこ」。由紀子さんの好きな柄だそう。
こちらは伝統的な文様、「うろこ」。由紀子さんの好きな柄だそう。

——絹糸だからこんなに艶があって鮮やかなんですね。私が知っているのは革や金属の「ゆびぬき」ですが、こんなきれいな「加賀ゆびぬき」も実際に使えるんですか?

もちろん!「ゆびぬき」の糸は、単なる飾り糸ではなくて、お裁縫の時に針を押すためのものです。この糸が引っかかりになり、針の頭を滑らせずにしっかり押してくれる。すごく合理的なんですよ。ただ、「加賀ゆびぬき」はやはり手間がかかるので、革や金属の既製品が出回るとやっぱりみんな作らなくなってしまったみたいで。私が「ゆびぬき」をはじめた頃は、金沢でもかなり廃れてしまっていて。

——便利なものが出てくると、なくなってしまう文化もありますね・・・。こちらでは「加賀ゆびぬき」づくりの体験もできると聞きました。私にもできますか?

はい、ぜひつくってみてください。つくりながら、いろいろお話しましょう!

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「加賀ゆびぬき」を一緒につくります

大西由紀子さん。由紀子さんの手からは魔法のように美しい加賀指ぬきが生まれます。
大西由紀子さん。由紀子さんの手からは魔法のように美しい加賀指ぬきが生まれます。

こちらで行われている体験教室はだいたい2時間程度。紙や真綿で土台をつくり、その表面を絹糸で1本ずつかがって模様を出していきますが、ここでは主に土台をしっかり一緒につくって、糸のかがり方を学んだら、のこりはお家で仕上げます。先生、よろしくお願いします!

初心者の私は、3色合わせの縞の模様をつくることに。好きな色糸と、「ゆびぬき」の内側になる布の色を選びます。

色とりどりの絹糸は、メーカーのすべての色が揃っているとか!見ているだけで楽しい。
色とりどりの絹糸は、メーカーのすべての色が揃っているとか。見ているだけで楽しい。
内側になる布もきれいな色。指に触れる部分なので、肌当たりの良い綿の布を使います。
内側になる布もきれいな色。指に触れる部分なので、肌当たりの良い綿の布を使います。
悩みに悩んで、この3色を選びました。内布は落ち着いたからし色に。
悩みに悩んで、この3色を選びました。内布はからし色に。
加賀ゆびぬきができるまで。土台をつくる工程がとても大切なのだそう。
加賀ゆびぬきができるまで。土台をつくる工程がとても大切なのだそう。
糸をかがるのはまだ先になりそうです。
糸をかがるのはまだ先になりそうです。

まずは土台づくりから。実用品なので、自分のゆびの太さをきちんと測り、サイズを合わせてつくります。上の工程を見てわかるように、実は土台づくりの工程がほとんど。逆に言うと、糸のかがりは時間はかかるけれど、基本のかがり方さえ覚えたら、それをひたすら繰り返していくシンプルな作業なのだそうです。

「ゆびぬき」をはめる指の太さと同じ筒をつくります。この筒に、細く切った厚紙をぐるぐる巻いて、固い芯をつくります。
「ゆびぬき」をはめる指の太さと同じ筒をつくります。オーダーのようで嬉しい。この筒に、細く切った厚紙をぐるぐる巻いて、固い芯をつくります。
紙の芯を内布で包んで、糸で止めたところ。左が先生、右が私。この時点でなんだか印象が違いますが「だいじょうぶですよ」と優しくおっしゃる由紀子さんを信じてすすめます。
紙の芯を内布で包んで、糸で止めたところ。左が先生、右が私。この時点でなんだか印象が違いますが「だいじょうぶですよ」と優しくおっしゃる由紀子さんを信じてすすめます。
真綿を巻いていきます。真綿というのは蚕の糸。絹です。ふんわりした綿を引っ張って、なるべく強く固く巻くことで、とても強い土台になるそうです。慣れた手つきの由紀子さんは、くるくると器用に巻いていきます。
真綿を巻いていきます。真綿というのは蚕の糸。絹です。ふんわりした綿を引っ張って、なるべく強く固く巻くことで、とても強い土台になるそうです。慣れた手つきの由紀子さんは、くるくると器用に巻いていきます。
自分好みの厚みになればOK。しっかり巻かれた左側の由紀子さんのものは、なんだか表面のツヤも違うんです。
自分好みの厚みになればOK。しっかり巻かれた左側の由紀子さんのものは、なんだか表面のツヤも違うんです。
土台の上に、等分に印をつけた薄い和紙を巻いたら、土台のできあがり。矢印の方向に糸をかがっていきます。
土台の上に、等分に印をつけた薄い和紙を巻いたら、土台のできあがり。矢印の方向に糸をかがっていきます。
これが製図。模様に合わせて色の順番を確かめます。わかりやすくメモしてくださいました。
これが製図。模様に合わせて色の順番を確かめます。わかりやすくメモしてくださいました。

やっと糸をかがります。基本は、この製図のようにジブザグに土台の縁をすくっていくだけなのだそう。1周したら、次の糸を1周目の糸の隣にぴったり並べてかがっていきます。とってもシンプル。「ゆびぬきの柄はいろいろあるけど、糸のかがり方は基本的にはこの1種類なんです。進めるとどんどん模様になってくるんですよ」と由紀子さん。びっくりです!

こちらは由紀子さんがつくっている途中のもの。土台の隙間が埋まるまで、ジグザグかがりを繰り返します。
こちらは由紀子さんがつくっている途中のもの。土台の隙間が埋まるまで、ジグザグかがりを繰り返します。