わたしの一皿 卵とうつわは火加減で

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先月は本を出す、と書きました。なのでこの一ヶ月は買い付けやら出かけた先でひたすら原稿を書いています。沖縄から北海道まで。

本はおとなり中国の手仕事を巡る旅のこと。そう、日本だけでなくあちこちを巡り歩いているのです。みんげい おくむらの奥村です。

そんなわけで日本のあちこちを飛び回りながらも頭の中が中国ですから、ここのところ作る料理はいわゆる中華が多い。今日もそんな一品。

これを知った人生と知らなかった人生とは大きく違う。大げさですかね。いや、本当にそう思う。

こちら男子ですから、なんとなくおかずに肉とか魚とか欲しいんですよ。しかしこれ、肉も魚もないのにご飯が進むやつ。そして超絶シンプルな素材。

いや、これはぜひ男子に覚えて欲しい一品です。いろんな場面で使って頂きたい。

材料:トマトと卵

用意するのはトマトと卵。だけ。油と塩と砂糖と水も少しずつお願いします。

はい、トマトと卵の炒め物です。これが、うまいんだ。ご飯進んじゃうんだもの。

今回は家の冷蔵庫にちょっとしわしわになりかけぐらいの完熟ミニトマトがあったのでそれを使ってます。ミニである必要はない。むしろふつうのトマトの方が個人的には好きだけど、冷蔵庫にあったもので作れるぐらいがこの料理はちょうどいい。

トマトと卵の炒め物

卵を先に炒めて取り出して、トマトを炒め、最後に卵を入れて合わせる。

とそれだけなんだけど、ポイントは砂糖で甘みを加えることでしょうか。砂糖はなくても良いけど個人的には絶対アリ派。

あと、今回はシャバシャバにしていないのだけど、ふつうのトマトだったら水分が結構でるのでさらに水を加えてシャバシャバにして、まるで飲み物かのように仕上げるのも好き。丼にしちゃえば白米がガツガツ食べられます。

数分で出来て、みんなが笑顔になる。理想的な一品ではないか、と。

鹿児島、艸茅窯(そうぼうがま)の川野恭和(かわのみちかず)さんのうつわ

今日のうつわは鹿児島、艸茅窯(そうぼうがま)の川野恭和(かわのみちかず)さんのうつわです。以前に紹介した福岡県の祐工窯の阿部眞士さんの兄弟子にあたる、磁器の作り手さんです。

磁器らしく、形にはシャープさもあるけれど、全体としてはとてもやわらかい印象のうつわ。

青とも緑とも独特な美しい色合いは磁器ならではのものだし、この暑い時期には見た目の印象も良い。

繊細な磁器の仕事。川野さんは独立し、故郷鹿児島に帰るも桜島の灰が降ることがある地元の町ではこの仕事が出来ないと考え、現在の場所に窯を構えました。

潔い形、あっけらかんとした姿は使っていけばいくほど良さを感じられるもので、そうなるともう一枚、また一枚、と欲しくなる。そんなうつわの作り手です。

川野さんの仕事で特に皆がおどろくのは蓋つきのツボや急須・ポットなど丸いフォルムのもので、その健康的な美しさは類を見ない。

うつわに盛り付ける様子

今回の真っ平らなうつわは当たり前だが使いやすい。うちの扱いの多くのものは土や窯の個性から、真っ平らなうつわを作りにくい。なのでこれはうちのうつわでも珍しいうつわ。

個人的にはナポリタンだったり、ハンバーグだったり、日本の洋食屋さんで出て来るようなものをこのうつわに盛るのが楽しいと思う。エビフライもいいですね。ポテトサラダなんか添えて。

卵を炒めている風景

そうだ、トマト卵炒めで大事なこと。卵をガチガチにしてしまいわないように気をつけたい。

いかにたまごをふわっと柔らかにできるか。なんどもなんども作って、好みの加減を見つけたい。火加減で仕上がりがこんなにも変わるのか、と。

うつわ作りも火加減ですね。同じように見えるうつわでも、火加減で雰囲気がだいぶ変わるもの。

レアもウェルダンもあるんです。手に取ったうつわからそんなことを想像してみるのも面白いもんですよ。

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文・写真:奥村 忍

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