まだ見ぬ自分の魅力に出会うため、伝統工芸の“品格”を身につける。「HiN」伊万里焼のジュエリー
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耳につけていなかったら、まるでミニチュアの和皿のように見えるピアス。
これは、国産磁器の原点である佐賀県・伊万里の焼き物「伊万里焼」のアイテムです。
職人の手によって牡丹の花や孔雀の羽根が繊細な筆づかいで絵付けされています。
「和皿に多く見られる桔梗皿や木瓜 (もっこう) 皿、六角皿などの縁の形をモチーフに、和皿とジュエリーの曖昧な境界に遊び心のあるデザインにしています」
そう話すのはブランドを手がけた岡部春香さん。
伝統工芸の技術や日本各地の素材を現代のライフスタイルにアップデートしたアイテムを展開するジュエリーブランド「HiN (品:ヒン) 」のデザイナーです。
日本に潜む素敵なものを掘り起こしたい
日本の伝統工芸に秘められた「品格」を現代のライフスタイルの中で表現したい——。
そんな思いを込めて、2018年11月に岡部さんが立ち上げたHiN。
岡部さんは、大学時代にファッションデザインを専攻し、パリへも留学。ところが、ファッションの早すぎるサイクルが自身のデザインのスタイルに合わないと感じ始め、卒業後は別の仕事を選んだといいます。
「でも、やっぱりデザインの仕事に携わりたくて、商品企画の仕事に転職したんです。その仕事の中で伝統工芸に興味を持ち始めて、自身の表現にあったファッションとプロダクトデザインを掛け合わせて、『HiN』を立ち上げました」
なぜ「伝統工芸」や「産地の素材」に着目したのでしょうか。
「伝統工芸の技術や昔からある素材そのものは、とても魅力的です。それをいまのライフスタイルにアップデートすることにチャレンジしたいと思いました。それと、日本人として、日本に潜む素敵なものを私自身も探したかったんですよね」
HiNとして、工芸の技術を用いたプロダクトを作ることが一貫したテーマではあるものの、自分が魅力的だと思ったものを選んでデザインに落とし込んでいきたいといいます。
人それぞれの美しさや美意識に寄り添うジュエリーを
先ほど紹介した伊万里焼のアクセサリーは、HiNのファーストコレクション。
ブランドの名刺代わりともなるファーストコレクションに岡部さんが選んだのは、佐賀県伊万里市の窯元・畑萬陶苑でした。
「伊万里焼は素材が上質で、色鮮やかな絵付けに華やかさもある。そういう意味で、自分が伝えたいと思っている日本の美意識や品格を体現するのにぴったりでした。
数ある窯元の中から畑萬陶苑さんとの企画に至ったのは、繊細な絵付けの技術と釉薬の使い方が独特なプロダクトに魅了されたからです。見ているだけで癒しになるような、上品でやわらかな釉薬の色。光の当たり方によっても違った表情を見せます」
伊万里焼のアクセサリーは、和洋のスタイルを問わず、ふだん使いから、結婚式などのハレの日まで活躍してくれそうです。
「プロダクトとして日本の美意識や品格が感じられるものを作りたいのはもちろんですが、身にまとう人それぞれの個性が生み出す美しさ、美意識に寄り添うようなジュエリーをデザインしていけたらと思います」
セカンドコレクションは、陶磁器とはまた別の伝統工芸の素材を考えているとのこと。
今度はどんなアップデートを見せてくれるのでしょうか。次なる「品」が楽しみです。
<取材協力>
HiN
公式サイト
文:岩本恵美
写真:中里楓
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