持ち歩くアート。京都の老舗染物屋の新ブランド「ケイコロール」の魅力

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京都のテキスタイルブランド・ケイコロール

楽しげな印象を与えてくれる、カラフルなテキスタイル小物たち。これらのデザインを構成しているのは、90年以上前から受け継がれてきた「伝統柄」だ。

手ぬぐい生地を使った「あずまトート」
手ぬぐい生地を使った「あずまトート」。裏地を付けていないトロンとした生地感と、コンパクトに折りたたんで持ち運べる手軽さが魅力
底がコロンと愛らしい形の「まるトート」
底がコロンと愛らしい形の「まるトート」。本体はもちろん、持ち手の部分も手染めしているこだわりよう。A4ノートや書類も入るサイズ感が人気
手ぬぐい生地を使ったポーチ
S、M、Lの3サイズを展開するポーチは、手ぬぐい生地を使ったやわらかさが特徴。コロンと丸く、角がないので入れるものを選ばない

他にも、ヘアターバンやインテリアとしても使える定番の手ぬぐい、好みの長さにカットしてくれるロール、おにぎりがピッタリ2つ入る「おにぎり袋」など、日常を楽しくするような素敵なアイテムを届けている。

ケイコロールのカラフルなテキスタイルたち

これらを手掛けるのは、京都・壬生(みぶ)に工房を構える、創業90年目の山元染工場(やまもとせんこうじょう)。創業時から舞台衣裳を専門に手掛けてきたこの工房には、なんと10万枚にも上る衣裳用の型紙が残っている。

初代から受け継がれてきた舞台衣裳専門の型紙
初代から受け継がれてきた舞台衣裳専門の型紙

90年以上前のデザインと、現代美術の出会い

そんな型紙を用いてオリジナルのテキスタイルブランドを展開するのが「ケイコロール」。主宰の山元桂子さんは京都造形芸術大学大学院で現代美術を専攻し、2009年に山元染工場へ嫁いだ。

「ケイコロール」主宰の山元桂子さん

時代ものや舞台など、衣裳に用いられる柄はユニークな古典柄も多い。創業当時、初代が衣裳用のデザインを専門に手掛ける絵師を出入りさせ、オリジナルの型紙を制作させたという。

そして代々大切に受け継がれた独自のデザインは、桂子さんの感性によりまた違った表情を見せる。

柿渋紙で作られた創業当初の型紙。左は当時から受け継がれた柄の見本帖
柿渋紙で作られた創業当初の型紙。左は当時から受け継がれた柄の見本帖
柿渋紙で作られた創業当初の型紙

山元染工場に蓄積された膨大な型紙を駆使して次々に新しいデザインを生み出していく桂子さん。見るものを晴れやかな気持ちにさせてくれるような、明るく大胆な色使いが特徴だ。

世界に一つしかないテキスタイルを生み出す

染める時は一切下絵を描かないぶっつけ本番。柄の組み合わせも配色も、すべて頭の中で組み立てながら染めていくのだそう。

感覚だけで組み合わせるので、同じ柄を用いてもまったく同じデザインは二度と作れない。

染めていく作業風景
柄と柄の間隔や配置もその場で計算しながら染めていく

型をずらしたり、かすれを残したり、本来なら「タブーのかたまり」と言われるような手法もあえて用いる。そうすることで、手仕事ならではの温かみある風合いを表現し、独自の柄を生み出しているのだ。

生地に対して型を斜めにずらし、あえてランダムな配置に
生地に対して型を斜めにずらし、あえてランダムな配置に

桂子さんが一番大切にしているのが「色」。工房には、歴史ある「京都の染物屋」というイメージとはかけ離れた、ポップで鮮やかな染物が並んでいる。

柄の組み合わせ同様、色の組み合わせも桂子さんの感覚によるもの。赤と黄色、緑と紫など、原色同士の組み合わせも心地よく晴れやかな印象だ。独特の配色からは、大学・大学院で染色を学んだという桂子さんの「美術作家」としての一面がうかがえる。

様々な色の生地

自分のペースで、丁寧に届ける

「本当に営業が苦手で」と笑う桂子さんは、制作に追われることもあり、ケイコロールの営業活動をしたことはほとんどないという。

それでも、20018年には「BEAMS JAPAN」のバイヤーがケイコロールに興味を持ち、コラボレーションが実現。オリジナルの手ぬぐいも大好評だった。

一つひとつが手作業のため安定した生産が難しく、常時商品を取り扱う店は「アーバンリサーチ京都」、左京区「ホホホ座」などごく一部だが、2019年8月には京都の人気カフェ「うめぞのカフェ&ギャラリー」での展覧会、ホホホ座での展示販売を開催するなど、着実に活動の幅を広げている。

今後はネット販売にも力を入れていきたいと、桂子さんは意気込みを見せる。

「ケイコロール」主宰の山元桂子さん

明るく、いつも前向きな桂子さん。そんな人柄を映し出したかのように色鮮やかな作品を手にすると、こちらまで気持ちが明るくなれるようだ。

<取材協力>
ケイコロール(山元染工場)
京都市中京区壬生松原町9-6
075-802-0555

文:佐藤桂子
写真:桂秀也

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