日本屈指の織物の町、桐生を味わう店・食・宿。1日めぐって見えたもの

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ああ、ここからも東京スカイツリーが見えるのか、と驚いたのは群馬県桐生市で取材中のこと。

朝に到着した新桐生駅から取材先のある市街地への道はゆるゆると下り坂になっていて、車のフロントガラスからは町の三方を囲む山々と、その山裾にたっぷりと立ち込める朝霧が見えた。

「キリュウという町の名前は、桐がたくさん生えていたからという説と、霧の多い町だからという説があるんですよ」

わざわざ駅まで迎えに来てくださった取材先のメーカー、笠盛の新井さんが教えてくれた。

1300年続くものづくりの町、桐生の歴史と今

「西の西陣、東の桐生」とも謳われる織物の町、群馬県桐生市。

周囲をぐるりと山に囲まれ、中心部に渡良瀬川が注ぐ湿潤な環境は、乾燥を嫌う織物づくりにぴったりなのだという。

奈良時代にはすでに織物を税として納めた記録が残り、関ヶ原の戦いでは徳川家康勢の依頼で2300もの旗をたった1日で作ったという逸話が残る。

昭和期には「織機をガチャンと動かすたびに、万の金が儲かる」と言われた「ガチャマン景気」に町が沸き、当時次々と建てられたノコギリ屋根の織物工場は、町のシンボルとなっている。

そんな歴史ある織物の町には今、世界的ファッションブランドの生地づくりを担うメーカーもあれば、逆に海外からファンが駆けつける洋品店もある。

刺繍技術を生かしたアクセサリーブランドがヒットした工房や、産地ならではの理由で広まった一風変わったご当地うどん、桐生の作り手との協業で完成した宿坊など。

1300年の歴史の上に、なお進化を続ける今の桐生の作り手と食、宿を訪ねた。

毎月7日間だけ開くリップル洋品店に、世界中から人が服を買いに来る理由

リップル洋品店

「晴れた日にはここからスカイツリーが見えますよ」と教えてくれたのは、丘の上にある「RIPPLE YōHINTEN (リップル洋品店) 」の岩野ご夫妻。お店が開く月初の7日間には、色、素材、形、ひとつとして同じものがない洋服を求めて国内外から人がやってくる。

今や世界中にファンを持つ人気ブランドは、夫婦ふたりが「自分と家族のため」に始めた服作りが始まりだった。

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桐生「ひもかわうどん」はなぜ平たい?老舗「藤屋本店」で知るご当地うどんの楽しみ方

ひもかわうどん

桐生の郷土料理といえば、まるで帯のように平たい「ひもかわうどん」。県外でも人気が高く、人気店には平日でも行列ができる。つるっとなめらかな平たい麺が桐生で広まった背景には、織物産地ならではの台所事情があるという。

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素材は糸だけ。常識破りのアクセサリー「000 (トリプル・オゥ) 」を老舗の刺繍屋が作れた理由

トリプル・オゥ

糸だけでできたアクセサリー「トリプル・オゥ」。金属にない質感とデザイン、金属アレルギーの人でも身につけられることで人気を集めるブランドは、どのように誕生したのか。

ファクトリーショップも併設する本社に、仕掛け人を訪ねた。

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桐生に泊まるなら、宿坊 観音院へ。美しき中庭と桐生にしかない「職人技」ダイニングは必見

宿坊 観音院

気鋭のブランドや郷土料理を1日かけてめぐったが、桐生には他にも訪ねてみたい作り手やお店がまだまだある。

1日では足りない‥‥という時に、ものづくりの町を泊まりで楽しむならここ、という宿を教えてもらった。

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トリプル・オゥを手がける笠盛の工房、色とりどりの服が並ぶリップル洋品店、どちらでも「自分達だけではものづくりは成立しない」という言葉が印象的だった。

例えばネックレスの糸を仕入れる糸商さんや洋服を縫いあげる熟練の縫い子さん。桐生では作り手をひとつ訪ねるたびに、その背景にあるまた別の作り手の顔が見えた。

文:尾島可奈子

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