乾燥肌や敏感肌にもやさしい、益久染織研究所のタオルや靴下。秘密は「和紡布」の糸にありました

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お肌の乾燥が気になる季節ですね。

 

冬は、肌が荒れたり、かゆくなったりして困っているという方も少なくありません。

 

そんな季節に、やさしい肌触りのアイテムで評判を呼んでいる、奈良県斑鳩町(いかるがちょう)の「益久染織研究所」を訪問しました。

 

斑鳩町で新しいスタートを切った「益久染織研究所」

兵庫県西宮で1975年に染織教室を開業・創業した「益久染織研究所」。

 

400人を超える生徒さんに手紡ぎや手織り、天然染料染め、藍染め、絣などの工芸手法を教える教室を運営していました。

 

しかし1995年に阪神大震災で被災し、吉井社長の住まいがあった斑鳩町に会社を移設。

 

当初は一時避難の予定でしたが、奈良への移転は会社にとってもターニングポイントとなり、斑鳩町で再スタートを切ることに。

 

斑鳩町の本社を訪れると、にこやかな笑顔で吉井さんが出迎えてくれました。

株式会社益久染織研究所の代表取締役社長兼テキスタイルデザイナーの吉井委代さん(中央)
株式会社益久染織研究所の代表取締役社長兼テキスタイルデザイナーの吉井委代さん(中央)

通路脇には、会社の財産である糸や布が所狭しと積み上げられています。

入り口近くには、取り扱っている商品や、ワークショップで利用する機織り機や糸紡ぎ車、糸や布がディスプレイされていました
入り口近くには、取り扱っている商品や、ワークショップで利用する機織り機や糸紡ぎ車、糸や布がディスプレイされていました

「みんな糸や布が好きで、休憩時間になると何かしら作っているんですよ。益久の糸や布を使って何が作れるか、そこからアイデアが生まれることもあります」と話す吉井さんに「益久染織研究所」のものづくりへの思いを伺いました。

 

こだわりの原材料と紡ぎ方

「益久染織研究所」で、独特のやわらかな肌触りが人気なのが、「和紡布(waboufu)」シリーズです。

 

タオルや洗顔クロス、食器も洗えるふきん、シーツやピロケースなど、毎日使いたいアイテムが揃っています。

 

水分をたっぷり吸収する和紡布のタオルは、石鹸を使わなくても優しく汚れを絡め取り、脂分も適度に残すことが可能。

 

「石鹸なしで使えば皮脂を落としすぎないので、冬場もカサカサになりません」。

 

敏感肌の方やアトピー性皮膚炎でお悩みの方、肌の弱い赤ちゃんにもおすすめだそうです。

 

和紡布のタオル
和紡布のタオル

こうした和紡布シリーズの優しい風合いや、肌に心地よいデコボコ感、そして圧倒的な吸水力の秘密は、その糸にあります。

 

原材料は、化学肥料や農薬を使うことなく育てた自然栽培綿。

 

中国山東省の契約農家さんが、これまでに化学肥料や農薬を使ったことのない自然そのままの土壌で、ひとつずつ丁寧に人の手で摘み取ってる綿です。

 

剪定と雑草取りもすべて手作業。大切に育てられている自然栽培綿
剪定と雑草取りもすべて手作業。大切に育てられている自然栽培綿

そして、糸の紡ぎ方にも特徴があります。

 

それが一昨年から始めた、明治初期に日本人が発明したガラ紡機を使う糸紡ぎです。

 

明治時代に信州のお坊さんが発明したといわれているガラ紡機
明治時代に信州のお坊さんが発明したといわれているガラ紡機

ガラガラと音を立てて糸を紡ぐ様子は「糸を紡ぐおばあちゃんが大勢いるのと同じ」と吉井さんは話します。

 

手紡ぎは1日で約80gの糸を紡ぐことができますが、ガラ紡機は1本で40gしか紡ぐことができません。

 

しかし手紡ぎより時間をかけてゆっくり紡ぐことで、糸が空気を含み、軽くてあたたかみのある品を生み出すことができます。

 

そばに「和紡布」がある豊かな暮らし

こうして紡がれたガラ紡糸は、糸の太さが一定でないため、製品に仕立てると凹凸のある、柔らかな風合いになります。

触れると、肌触りの良さに驚きました。

ガラ紡糸の表面は甘ヨリなので、空気をしっかり含み、保温性もバツグン。

その上、お洗濯をしてもすぐに乾くので、寒い季節にぴったりな素材です。

足を締め付けない、ガラ紡のくつろぎ靴下も人気

ガラ紡糸の特長を生かした冬らしいアイテムが、ゆるやかに編み込まれた、ふんわりと優しく包み込んでくれる靴下。

 

靴下
靴下

「冷え性で冬場は靴下を履かないと眠れない」という方にも、この靴下ならぐっすり眠ることができると人気です。

 

理由は、肌触りのいいパイルの裏地。ガラ紡糸ならではのデコボコした風合いが、柔らかな肌触りを生み出します。

 

さらに足首の部分はしめつけの少ない、ゆるめのゴム編み二重構造にするなど、細部まで使う人のことを考えたつくりで、冷え性の方や肌の弱い方に喜ばれています。

製造しているのは奈良県広陵町の工場。

 

広陵町は日本有数の靴下の産地です。奈良で再スタートを切り、土地や人に支えられて歩んできた「益久染織研究所」が地元の企業とものづくりをすることで、奈良の産業発展に少しでも貢献できたらという思いもあるそうです。

 

毎日使うものだから、心と身体に寄り添うものを

「ゆっくり時間をかけて作ったガラ紡糸のアイテムは、生地が空気や水分を吸ったり吐いたりするので、夏は涼しく冬は暖かです。チクチクしないので、肌の弱い人はもちろん、お肌の状態が変わりやすい妊娠中の女性にも喜ばれています。作りたいのは、特別なものではなく身近なもの。手と自然にこだわって糸と布のものづくりを続けていく、それが私たち益久染織研究所です」

 

吉井さんの言葉からは、「いいものを届けたい」という一心で、ものづくりを続けていることが伝わってきます。

 

これからも使う人と同じ目線で考えぬかれたアイテムは、日常をあたたかく支えてくれるでしょう。

 

 

<取材協力>
株式会社益久染織研究所
奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺南3丁目5-47

0745-75-7714

https://mashisa.jp


<企画展のお知らせ>

「株式会社益久染織研究所」から生まれた和紡布企画展が開催されます。

企画展「斑鳩の紡ぎ木綿」

日時:2月12日(水)〜3月17日(火)
開催場所:「大和路 暮らしの間」 (中川政七商店 近鉄百貨店奈良店内)

https://www.d-kintetsu.co.jp/store/nara/yamatoji/shop/index02.html

大和路

*企画展の開催場所「大和路 暮らしの間」について

中川政七商店 近鉄百貨店奈良店内にある「大和路 暮らしの間」では、奈良らしい商品を取り揃え、月替わりの企画展で注目のアイテムを紹介しています。

伝統を守り伝えながら、作り手が積み重ねる時代時代の「新しい挑戦」。

ものづくりの背景を知ると、作り手の想いや、ハッとする気づきに出会う瞬間があります。

「大和路 暮らしの間」では、長い歴史と豊かな自然が共存する奈良で、そんな伝統と挑戦の間に生まれた暮らしに寄り添う品々を、作り手の想いとともにお届けします。

この連載では、企画展に合わせて毎月ひとつ、奈良生まれの暮らしのアイテムをお届け。

次回は、「吉野の木の道具」の企画展の記事をお届けします。

文:上野典子、徳永祐巳子
写真:中井秀彦、写真提供:株式会社益久染織研究所

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