わたしの一皿 琉球の白いマカイ

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2ヶ月も連載が空いてしまいました。家族の環境の変化で原稿書きが追いつかずご心配お掛けしました。もうすっかり大丈夫。みんげい おくむらの奥村です。

隣国中国の少数民族の多い地域の手仕事を探し求めた拙著「中国手仕事紀行」がいよいよ1月末に発売開始です。日本の工芸とは違ったり、同じだったり、きっと「さんち」をご覧の方にも読みがいのある本になっています。ぜひ手にとってご覧ください。

さて、2020年第一回目の連載は昨年中国を巡り歩いて出会った味を再現。昨年は秋に中国の福建省で日本の手仕事の展示会を行いましたが、その福建省で覚えて帰ってきたスープ。

なんと真っ黒なスープで、初めて食べた時は「???」という感じ。色からは想像が付かない味。コクがあって、後味がややフルーティーで果たしてなんの素材かわからなかった。

じわじわと旨くて、三杯、四杯と飲んでしまって、作り方まで聞いてきた。それからわずか数ヶ月だけど、何回作っただろうか。簡単で美味しいのです。

黒にんにく

主役は「黒にんにく」。よく青森の物産展とかで売ってるあれです。

黒にんにくと骨つきの肉など(現地で食べた時は豚の軟骨やスペアリブだった)を水から炊く。それだけ。なんて簡単な。コツはアク取りと、スープが真っ黒になるまでじわじわ炊くぐらい。

今日は中国雲南省の有機の黒にんにくを使っています。日本のものよりも小玉でかわいらしい。もちろん日本のものでも同じように出来上がります。

わたしの一皿

福建省と言えば台湾や沖縄とも文化的に繋がりが強いので、今日は沖縄のうつわ。うちの開店当初からお世話になっており、今の沖縄の焼物(やちむん)の人気を引っ張る窯元、北窯(きたがま)のうつわを使いました。

北窯は四人の親方からなる共同窯。各親方のところに弟子がいて、四つの工房で一つの登り窯を焚く。今日はその一つ、松田共司工房のマカイ(沖縄の碗のこと)。

北窯(きたがま)のうつわ

マカイはご飯茶碗でもあり、汁椀でもあり、大きなサイズなら麺丼でもある、お碗の総称。独特の形状だけれども、慣れると使いやすい。

今日は染付けも何もない、シンプルな白だけのマカイにした。形の差は多少あれど、琉球の歴史の中でずっと作り続けられてきている伝統的なうつわ。

通常は、鉄分の多い黒っぽい原土を包み込むように白い土が掛けられているのだけれども、これは沖縄では希少な白土だけを使ったもの。白といっても、沖縄の土は柔らかい黄色味がかった白で、この温もりのある色合いがたまらないのだ。

染付けをしてしまえばそこに目がいってしまう。逆に言うと白のものは形にしか目がいかない。作り手たちに聞けば、白だけで世に出すのは自分のろくろ技術がバレてしまうので怖くもあるのだそうだ。

この白は松田共司さんご本人がろくろを挽いたもの。普段と土も違うので、のんびりはしているけれどどこかシャープな感じもある。

一年を通して、かなりの数の焼き物を扱うけれど、たまに手放したくないなと思うものがある。これもその一つだった。

もう食器棚は飽和状態だし、特にご飯茶碗サイズなんて日替わりで使っても一ヶ月分はあろうかというのに、また増えてしまった。これは2019年のとっておきの一枚。

サイズ的にはご飯でも汁物でもいい。手にすっぽりと収まる優しいうつわだ。スープを口に含んだ時も、繊細すぎず、ぽってりすぎず、適度な厚みが口に心地よく感じられる。

調理風景

そうそう、スープはじっくりと炊いて、最後に塩を。これだけで味が決まりますよ。

わたしの一皿

今日もスープは良い味になった。今日は鳥のなんこつを使ったので豚のものよりも少しあっさりした味になった。これもいい。当然おかわりです。

福建は琉球と中国の交易の拠点だったため、琉球から色々なものが運ばれていった。いつか中国の骨董屋で古い琉球のマカイに出会うことがあるだろうか。そんな出会いがあったらうれしいな。

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文・写真:奥村 忍