土を耕す頼もしい道具。専門の鍛冶屋がつくるガーデニング用の黒い鍬(くわ)

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きっぱりとした晒の白や漆塗りの深い赤のように、日用の道具の中には、その素材、製法だからこそ表せる美しい色があります。その色はどうやって生み出されるのか?なぜその色なのか?色から見えてくる物語を読み解きます。

耕す黒。近藤製作所の農具

日差しが明るくなってきました。啓蟄(けいちつ)を過ぎ、土の下で生き物たちがもぞもぞと活動を始め出す頃。「明」るい状態から「アカ(赤)」という色の名が生まれたように、「暗」い状態を表わす言葉から生まれたと考えられているのが「クロ(黒)」です。漢字は「柬(カン)=物が入ったふくろ」の下に「火」がある状態を示した形。そこで現れる色がすなわち「黒」なのですね。

人は火を操って様々な道具を生み出してきましたが、中でもこの時期らしく、平和で切実な道具に思えるのが、土を耕す農具です。

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古くから鍛治の町として知られる新潟・三条市にある近藤製作所さんは、創業以来100余年、鍬(くわ)だけを作り続ける鍛冶屋さん。その近藤さんが家庭のガーデニング用に作ったという小さな鍬は、光を吸い込んでしまいそうな黒色をしています。

土起こしや草集めにも使える、刃先が3つに分かれた「三本鍬」は、棒状の鋼(はがね)を熱して叩きながら曲げていく「鍛造(たんぞう)」と、そうして加工した鋼をさらに火で熱して硬く強くする「焼入れ」によって作られます。黙っていても力強さを感じる黒色は、火と、それを操る人の手わざから生まれたものでした。

黒星、腹黒い、最近ではブラック企業と、ネガティブなイメージも強い「クロ」ですが、土に光をすき込む鍬の、耕す黒は、とても頼もしく感じます。

<掲載商品>
近藤製作所
耕耘フォーク

移植ゴテ


文:尾島可奈子

*こちらは、2017年3月13日の記事を再編集して公開いたしました。

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