愛しの純喫茶 ~函館宝来町編~ 茶房 ひし伊
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こんにちは。さんち編集部の山口綾子です。
旅の途中でちょっと一息つきたい時、みなさんはどこに行きますか?私が選ぶのは、どんな地方にも必ずある老舗の喫茶店。お店の中だけ時間が止まったようなレトロな店内に、煙草がもくもく。懐かしのメニューと味のある店主が迎えてくれる純喫茶は密かな旅の楽しみです。旅の途中で訪れた、思わず愛おしくなってしまう純喫茶を紹介する「愛しの純喫茶」。第5回目は、1982年創業の喫茶&アンティークショップ、函館市宝来町の「茶房 ひし伊」です。

「茶房 ひし伊」は、函館西部地区の蓬莱町停車場すぐ近くにあります。明治38年に建てられた質蔵を改装した2階建ての建物です。当時、質店だった土蔵に質に置く品物が入りきらなくなったため、大正10年に建て増しされました。函館では珍しいとされる黒漆喰の外壁に、弁柄色(べんがらいろ・暗い赤みを帯びた茶色)の扉。元々が質屋なだけあって、鉄の扉があり重厚な作りですが、どこかエレガントな雰囲気に包まれているように感じます。質屋時代には歌人・石川啄木の妻である節子ともご縁があったそうです。

中に入ると、コーヒーの香ばしい香りが漂います。1階はカウンター席と、テーブル席が4卓あり、洋アンティーク風なしつらえです。

2階部分は吹き抜けになっており、ロフトのような造り。2階の小上がりになった座敷は4席ほど、質蔵らしい梁が露出した和風な雰囲気です。骨董品と思われる家具や調度品が置かれ、一度座ると、居心地よく長時間過ごしてしまいそうです。


和洋の雰囲気が混在するのは函館ならではでしょうか。メニューにも和のあんみつやお抹茶、洋のロールケーキやパフェが並びます。トーストやサラダなどの軽食もあり、スーツ姿の男性客も来られるのだとか。今日は、お抹茶と和菓子のセットをいただきます!

口当たりの良いお抹茶のほろ苦さは大人の味。小豆の和菓子もしっとりとしてちょうどいい甘さです。お店には、外国人観光客のお客様もよく来られるとか。函館元町のお散歩途中に、目にも舌にも嬉しい和洋文化に浸ってみてはいかがでしょうか。
茶房ひし伊
函館市宝来町9-4
0138-27-3300
10:00~18:00(L.O.17:30)
文:山口綾子
写真:菅井俊之