デザイナーが話したくなる「もんぺパンツ」
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長年愛されているベストセラー商品
発売以来、長年にわたって愛されている中川政七商店のベストセラー商品「もんぺパンツ」。社内でも愛用者が多い商品なのですが、その特徴のひとつが履きやすさ。あらためてこの履きやすさの理由を、担当したデザイナーの河田さんに教えてもらいました。秘密は、実は裏地にあるのだとか・・・。
「この白い布、何かわかりますか?」
これは「和晒(わざらし)」と呼ばれる生地で、ふきんや手拭い、赤ちゃんのおむつや肌着など、40年ほど前まではどこの家庭でも一般的に使われていたものです。
大阪・堺の伝統産業としても知られるこの「和晒」を、昔ながらの製法でつくり続けているのが、同地域で1931年に創業した角野晒染株式会社です。
実は、こちらでつくられた「和晒」との出会いが、もんぺパンツをつくるきっかけになりました。
「木綿生地と聞くと、白い布を想像する方も多いと思いますが、天然繊維である綿は、織りあがった段階では茶褐色の状態なんです。また、油分や糊なども付着しており、それらの不純物や色素を取り除くのが晒加工になります」
現在、一般的に使用されている綿製品のほとんどは、「洋晒加工」という方法で仕上げられているんだとか。これは、自動精錬機という設備を用いて、生地に熱や圧力をかけながら、40分前後の短時間で仕上げる方法です。
一方「和晒加工」は、大きな釜に生地を入れて、緩やかな水流でゆっくりと時間をかけて焚きこみ、およそ3日間かけて晒をおこないます。生地にきついストレスをかけないことで、柔らかな吸水性のよい仕上がりになるのが特徴です。
また、もんぺパンツで使っている和晒は、着物をつくる時と同じ約36cm幅に織られています。
もともと、もんぺは着物を加工してつくられていて、この小幅の布を直線裁ちして型をとっていました。布を余らせることなく衣服にする日本人の知恵が詰まったものです。
そんな和晒の良さを知ってもらいたい、そして「もんぺ」を現代の日常着として着てほしい。河田さんはそう考えて「もんぺパンツ」の開発をスタートしました。
綿の風合いが残っている柔らかな和晒。その和晒のガーゼ生地を裏地として使ったことが、もんぺパンツの履き心地の秘密なんです!
赤ちゃんの肌着にも使われていた布なので、肌触りの良さはもちろん、汗の吸収と湿気を外へ逃がすことも得意で、足にまとわりつかずさらっとした状態が続きます。
すっかり和晒に魅せられてしまいましたが、現代の生活に馴染むデザインとして表地が大切なのは、言うまでもありません。
中川政七商店のもんぺの元祖である「綿麻もんぺパンツ」は、ちょっと落ち感があって、やわらかい風合い。家着用だけではなく、サルエルの様なおしゃれボトムスとして外でも履けるようにつくられています。
驚いたのは、形状自体は昔からのもんぺのままということです。きっと今風にデザインを変えているのだとばかり思っていたのですが、大阪の生地メーカーさんと一緒に、ハリ感、やわらかさ、強度も考えて、生地を選んでは試作して、出来上がりました。
綿麻もんぺパンツの表地を変更して登場したのが「しましまもんぺパンツ」と「千鳥格子もんぺパンツ」です。
「しましま」は新潟産の見附織を使用しています。
「千鳥格子」は、兵庫県播州で織られた生地で、ところどころに見られるネップと呼ばれる節がナチュラルな風合いを醸し出しています。
プリントではなく、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の織りで柄を表現しているため奥深さと立体感が生まれます。裏地の和晒とあわせて、きちんと見えて涼しく過ごすことができます。
そういえば、よくご質問をいただくのですが、もんぺといえばポケットは前なんです!
つい、ポケットを後ろにして履いてしまいがちですが、昔からもんぺは前ポケットなので、そのままデザインにいかしました。
大きめサイズなので、携帯電話やハンカチなど、ぽいぽいっと入れることが出来て、慣れるとけっこう便利です。
私自身、綿麻もんぺパンツを履き続けて5年目になります。家に帰ったらすぐもんぺに着替える生活です。履きごこちがよくて楽チンだし、そのまま出かけられるしと、もんぺって本当に重宝します。
そんなもんぺパンツについて語る度、河田さんが何度も口にした「ほんとにすごいんですよ」という言葉には、先人たちの知恵への敬意が込められていました。
<掲載商品>
綿麻もんぺパンツ
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