毎日、肌が気持ちいい。呼吸する麻のインナー「更麻」はこうして生まれました

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日々、自分が心地よくいられる選択肢として、インナーを変えてみる。この春、そんな提案をしてみたくなる、肌に気持ちのいいインナーが誕生しました。

名前は「更麻 (さらさ)」。

中川政七商店がはじめて取り組んだインナーブランドです。





実はもともと、デビュー予定は2019年の春。

しかし発売直前に、1年の延期が決定。この春を迎えるまでは、波乱万丈の一途でした。

「正直不安でいっぱい。だが、やるからにはいいものをつくりたい」

2年前の2018年4月、自社初のインナーブランドの計画が持ち上がった時、担当に抜擢されたデザイナーの河田めぐみさんは、そう思ったと言います。

河田さんはこれまでも麻のデニムパンツなど、中川政七商店のルーツである麻素材を生かしたファッションアイテムを数々手がけてきました。



この春にデビューした「更麻」もやはり、麻素材。しかも麻100%です。

「単に政七らしい素材だから選んだのではなく、インナーに最適な素材を追求したら、麻にたどり着いたんです」

と本人が語るように、更麻の生地には今まで世の中で知られていなかった「インナーとしての麻」の良さがたっぷり。しかし、世の中に前例がなかった分、実現までの苦労もひと塩でした。

今日は中川政七商店初のインナーブランド生みの親・河田さんが語る「更麻」の魅力と誕生までの道のりをお届けします。

自分にとってベストなインナーとは?


企画を始める時、河田さんは二つのことを考えたと言います。

一つは「自分にとってベストなインナーは何か」。

もう一つは、「政七商店がインナーを作る意味は何か」。

大手量販店の機能性インナーは使いやすく値段も手頃。でも「心地よさ」という点ではどうだろうか。自分にとってベストだろうか。

一方で化学繊維を使わない自然素材のインナーは、すでに世の中にある。その大半がオーガニックコットン製で、これならわざわざ中川政七商店で作る必要はないかもしれない。

中川政七商店だから作れる、着ていて気持ちいいインナー。

たくさん買って着回すのではなく、「私はこれ」と選んでもらえるインナー。



そんな視点で会社のルーツである「麻」を見つめ直してみると、思いがけない発見があったそうです。

リサーチで気づいた「麻がインナーに最適」の理由
「まず、麻は綿よりも水分を吸って吐き出すサイクルが早いんです。だから、直接肌に触れる肌着にはぴったり。

もちろん、最近の機能性インナーに使用されているような化学繊維の方が、機能的には優秀ですが、そもそも繊維の成り立ちが違うので、真っ向勝負しても仕方ないと考えました。

それよりも目指したのは、綿のようにやわらかい肌当たりで、伸縮性と機能性のある麻のインナー。



実は麻は、歴史的にもずっと肌着に使われてきた素材だったんです。女性下着を表すランジェリーはもともとフランス語。リネン製品を意味するラーンジェから来ているそうです。ランはフランス語で、麻を意味します。

他にも調べてみると、やわらかくて加工しやすい綿が普及する以前は、寝具や肌着に麻が使われていたこともわかりました。中川政七商店でも、かつて麻で作った汗取りが、天皇に認められたという記録が残っていました」

麻の吸水速乾性はインナーに最適。そして麻の商いで創業した中川政七商店らしさもある。 これで素材は、麻に決まり。

しかし、最適な素材ならなぜ、今まで世の中に麻100%のインナーがなかったのでしょうか?そこに、「更麻」開発の最難関が隠れていました。

世の中にない、麻100%の極上インナーを

「実は、麻は糸自体にハリがあり柔軟性がないので、インナーによく使われるやわらかな二重組織の生地 (フライス編み) が編めないとされていたんです」

この糸の硬さゆえ、麻生地は肌にまとわりつかず、シャリ感のある素材として日本の夏に好まれてきました。一方で肌着としては、加工しやすい綿に押され、扱いの難しい麻のインナーは開発されてこなかったのです。

「でも、ちょうどブランドの計画が持ち上がる少し前、『麻のフライス編みに成功した』というサンプル生地が、あるメーカーさんから届いていたんです」

生地を届けたのは、和歌山のオカザキニットさん。一大ニット産地である和歌山の中でも、麻を得意とする老舗ニットメーカーです。



「繊維が硬いと機械で編んだ時に糸が切れてしまいます。それを、特殊な加工を施すことで糸をやわらかくしたら『たまたま編めた』と仰って。ですが、蓄積された技術や経験がなければこういう発想は出ないだろうと思いました」

早速サンプルを作って着用してみると、しっとりとやわらかく繊細な上質感があり、肌にフィットしてよく伸びる。汗ばむ日も、冷え込む日も、汗や熱がこもらず、肌がさらりとして気持ちいい。




「これなら、1年を通して着心地のいいインナーが作れる」

本来インナーに最適な機能を持つ麻素材。当初描いたやわらかな肌あたりが実現すれば、これまで世の中にない、最高の着心地のインナーが誕生します。



早速サンプルをいくつか用意して、社内モニターを募り、着用テストを開始。縮みや型崩れを考慮して、パターンの改良も行なっていきました。

着用テストの中で、繰り返し洗濯するとやわらかさが増すこともわかり、「文句なしに着心地のいいインナーだった」との嬉しいフィードバックも。

試作を繰り返し、季節は夏、秋を過ぎて冬に。色展開やアイテム数、ブランド名もロゴも決まって、いよいよブランドデビュー目前という2019年4月、河田さんは断腸の思いで発売の延期を決断します。

デビュー目前でまさかの発売延期。ピンチが生んだ「夏限定生産」インナー
「オカザキニットさんから、生地を編んでいる途中で糸がところどころ切れてしまうと連絡が入ったんです。急遽、別の編み方で代替生地を用意してくれましたが、当初のフライス編みの繊細なやわらかさがなく、厚手のしっかりとした生地。

デビュー目前で本当に悩みましたが、社内のみんなにも意見を聞いて、更麻らしさが失われてしまう、と発売延期を決断しました」

オカザキニットさんに再度フライス編みにトライしてもらえないかと相談すると、「もちろん」と即答だったそう。

麻のプロであるオカザキニットさんの見解では、原因は時期。

麻は空気の湿度によって強度に違いが出るため、空気の乾燥している冬季では糸切れが起きやすくなるのではとの仮説を立ててくれたそうです。

「まるで繊細な生き物のようだと思いました」

しかしこの読み通り、長梅雨だった2019年6月に、繊細なフライス編みの麻生地は順調に編み上がりました。

こうして、中川政七商店初のインナーブランドは、湿潤な夏にしか作れない、素材の特性を最大限に生かした麻100%のインナー「更麻」として2020年4月にデビューを迎えました。



「更麻の『更』には、代わる代わる、生まれ変わるという意味があります。めまぐるしく変化していく環境の中でも、素肌で麻の心地よさを味わって、気持ちのいい毎日を送ってもらえたら、嬉しいです」

日々、自分が心地よくいられる選択肢として、インナーを変えてみる。毎日の快適は、そんなところから始まるのかもしれません。

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