人口2万の島に680万の椿が自生する、椿の島の椿油
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こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
美しくありたい。様々な道具のつまった化粧台は子供の頃の憧れでもありました。そんな女性の美を支えてきた道具を七つ厳選。「キレイになるための七つ道具」としてその歴史や使い方などを紹介していきます。
第6回目は椿油。連載も終盤にさしかかりました。
椿油というと髪に使うイメージですが、実は全身に使える優秀な保湿油。昔から美容に愛されてきた理由は、椿油が含むオレイン酸という成分にあるようです。
椿油の成分の実に80%以上がオレイン酸。あらゆる植物油の中で最も多く含まれているそうです。実は人の皮脂も、40%以上がオレイン酸でできています。そのために肌なじみがよく、不乾性油と言って蒸発もしにくいため、髪・肌の保湿に優れるとのこと。さらに紫外線から肌を守る働きがあるとも言われているので、これからの季節のお手入れにも活躍しそうですね。
人口2万の島に680万の椿が自生する、椿の島
こうした椿油の魅力を発信し、島民の方が手摘みした椿で作る椿油が人気なのが、長崎県の最西端、五島列島の北部に位置する新上五島町です。島は7つの有人島となんと60もの無人島で形成されています。大部分が西海国立公園に指定されている、自然の美しい島です。
島と椿油の関わりの歴史は古く、遣唐使の時代に貢物として椿油が送られていたとの記述が残されています。五島列島全体では1000万本近い椿が自生していると言われ、その数は全国一とのこと。そのうち上五島に自生している椿は680万本。人口およそ2万人の島に、列島全体の半分を占める椿が自生しているのですね。11月から4月ごろまでは、その赤く美しい花を島の至る所で見る事が出来ます。
椿の種から椿油ができるまで
ところで椿の実、みなさんは見たことがあるでしょうか。新上五島町の椿に使われる「やぶ椿」の実は、手のひらサイズ。こんなに大きかったんですね。
全て島民の方が手摘みして種を取り出し、島内にある工場で椿油作りが行われます。
乾燥させた椿の種は細かく砕かれ、圧搾機で油が搾り出されます。その後不純物や余分な酸、水分などが取り除かれて、椿油が完成します。種の手摘みの印象とは対照的に、種から椿油を取り出すまでの工程には高性能の機械が導入されています。
こうした機械も駆使して、きれいな飴色の、椿の成分だけでできた椿油が生まれます。
実は工場の近くには椿油作りの体験ができる施設もあり、自分の手で椿油作りを体験することもできます。
かつてはこうして一つひとつ手作業でやっていたのですね。
椿油の使い方
工場を運営する一般財団法人新上五島町振興公社さんオススメの使い方を覗いてみましょう。
・髪に
お風呂上りにドライヤーで髪を乾かす前に使うのが良いそうです。タオルで水分をとったあと、数滴手のひらに広げて、毛先を中心になじませていくのがポイント。そしてなんとシャンプー後にお湯に椿油を加えて使えば、リンスにもなるそう。洗面器半分ほどのお湯に椿油3、4滴でOK。
・顔に
化粧水のあとにゆっくりと顔全体を包むように広げて馴染ませるのが良いそうです。そのあと蒸しタオルを当てたら、オイルパックにもなるそうですよ。
・体・手に
体の保湿は髪と同じく入浴後、肌が乾かないうちに馴染ませるのがポイント。手や爪には1、2滴すり込むようになじませればOK。アロマオイルと混ぜればマッサージオイルにもなるそうです!
こうして覗いてみると椿油がいろいろなものの代わりになって、これから旅行する機会にも、旅の荷物が少なくすみそうです。こんな心強い七つ道具のひとつがすでに遣唐使の時代にはあったというのですから、花を鑑賞するだけでなく、実用の(そしてキレイになるための!)道具に変えていく人の知恵はすごいなぁと思います。
<掲載商品>
新上五島町 純粋つばき油 100ml
<取材協力>
一般財団法人新上五島町振興公社
文:尾島可奈子