スープ作家・有賀薫さんに聞いた、「長いおつき合いになりそうな予感がするキッチンツールたち」

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一流シェフが愛用する調理道具や、長年お店で道具と向き合ってきた店主が「これは」と手に取るもの。
道具を使うことに長けている各分野のプロフェッショナルが選ぶものには、どんな秘密があるのでしょうか。
私たちが扱う暮らしの道具を実際に使っていただいて、ものの良さだけでなく至らなさも含めて感想を教えてもらいました。

本日紹介するのは、スープ作家として365日、毎日スープをつくっている有賀薫さん。
さまざまなキッチンツールを使ってみての感想を記事にまとめていただきました。


スープ作家。1964年生まれ、東京出身。
ライター業のかたわら、家族の朝食に作り始めたスープが2020年2月時点で約2900日以上になる。
著書に『スープ・レッスン』『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』『朝10分でできる スープ弁当』など。レシピ提供、コラム執筆、イベントなどを通じて、現代家庭の料理改革を推進中。


では早速、有賀さんによる「長いおつき合いになりそうな予感がするキッチンツールたち」を見ていきましょう。

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サイズと自分の手の関係って大事だなと気づかせてくれた、DYKのペティナイフ

多くの道具は、手で触れ、手で扱うものです。だから、使う自分自身の手の大きさや形にその道具がフィットするかどうかはわりと大事にしています。でも、一度使い慣れてしまうと多少不便なものでも案外気にならなくなってしまうんですよね。
そのことに気づかされたのは、DYKのペティナイフを握ったときでした。

DYK 包丁 ペティナイフ

包丁やナイフはやっぱり道具の中でも最も握っている時間が長いものなので、持った感覚、切った感覚がしっくりくるものを選ぶようにしています。

写真を見ておわかりになるでしょうか。この包丁、普通のペティナイフと違って、刃渡りはとても短いのですが、柄は普通の包丁に近いぐらいしっかり太くて長さもあります。軽いけれどちゃんと握れる。それまで使っていたペティナイフの柄は細くて力が入りにくかったのに、使い慣れていたので不満に思うことを忘れていたんです。でもDYKのナイフを握った瞬間、これこれ!と、一気に喜びがあふれました。


刃が短いので、フルーツを切ったり、ハムやチーズをちょこっと切ったり。お蕎麦の薬味のネギやスープのトッピングのパセリが少しだけ刻みたい、そんなシーンは日々の料理の中に頻繁に出てきます。その都度、気持ちよく手にフィットする道具があるとないとでは、一日のトータルの幸福量が違ってきます。

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サイズといえば、実は同じDYKのおたまも使ってみたのですが、こちらは我が家の日常使いには少し大きすぎました(笑)

DYK ステンレス お玉

肉じゃがをよそおうとしまして、

小さめのお椀や小鉢だと、はみだしてしまいます。実はおたまって、通常のサイズでもかなり大きいんですね。なので私はかなり小さなサイズのものを使っています。写真で比べるとわかっていただけると思います。

おたまだけでなくキッチン道具は、手の大きい人か小さい人か、力のあるなし、なんだったらキッチンの大きさにもよるので、決してこの製品が悪いってことじゃないんです。でも、使うのは誰でもなく自分なので、誰がおすすめしたではなく、自分の手の感覚を信じることが大事だなとあらためて思いました。

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ささいなことも我慢しちゃいけないんだと思えた、THEの醤油差し

長年、ストレスに思っていた道具がありました。醤油差しです。よさそうなものを買って使っても、いつも失望させられます。醤油がたれたり、口のところに醤油がガビガビ固まったり。しまおうとして、テーブルの上に醤油の輪ができていたりすると、ブルーな気持ちに。

それまで使っていたのは機能は良くてもデザインがちょっと古くさかっとり、スタイリッシュだけど頻繁に詰まったり。満点というものがなかったんです。

今回、思わぬご縁で理想の醤油差しと出会えました。それがTHE 醤油差し!

THE 醤油差し

まず、構造です。注ぎ口がどこにもありません。構造的にはふたに切れ込みが入っていて、そこから醤油が出てくるしくみ。醤油を入れて醤油をたらしてみると、素晴らしくキレがよく、思わず何度か無駄に醤油を出してしまいました。

注いで残った醤油が、微妙な角度がついた切れ込みに戻っていくため、まったく垂れない。もちろん切れ込みは醤油が行ったり来たりするので汚れますが、醤油がまだ残っていてもふたをとってふただけ洗う、みたいなこともできるのです。醤油が固まって注ぎ口に詰まるという、あのストレスから解放されます。

サイズもちょうどいい。醤油差しに入れた醤油はどうしても劣化が早く、どろっとなってしまいがち。でもこのサイズなら少量入れてさまになります。

そして、なんといっても美しさ。醤油差しは卓上で使うものなので、デザインが気になります。この醤油差しはぽってりとあたたかみを持ちながらも洗練されたイメージです。
似ていると思いませんか?そう、あの赤いふたのついた有名メーカーの醤油差しに。真似ではなく、絶対リスペクトしているよね!と、なんだか嬉しくなりました。

それまで私は、醤油差しという商品に対してそんなにパーフェクトを求めちゃいけないのかなと、なんとなくあきらめていました。でも、使ったあとでネットの紹介ページをよく読んだら、私が感じたことがそこに全て書いてあったんです。
考えている作り手はちゃんと考えてくれている。だから使う側の私たちも我慢したり妥協するのではなく、こうなっているほうがいいよね、という「使い手の気持ち」をもっと伝えなくちゃいけないんだなと思いました。

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さて、我慢と言えば、スープ作家としてなんとなく不満だったのが、だしを漉すあみ。通常のザルはどうしてもかつおぶしの細かいくずがあみの目を通ってしまいます。撮影などではさらし布を使って漉していましたが、それも面倒です。

家事問屋のだしとりあみは網の部分がすごく細かいメッシュ状になっているので、袋の最後に残った粉状のかつおぶしを全部入れても写真の通り、クリアなだしがとれます。

家事問屋 だしとりあみ

こういう小さなストレスが解消されるのって本当に快感です。だしとりあみは使わない人も多いと思いますが、よくだしを取る人にはおすすめ。

使っているうちに、その良さがじわじわきた漆器

第一印象はいまいちだったんだけど、付き合ってみるとその人柄に引き込まれる人っていますよね。この器は私にとって、そういう人のようでした。RIN&COの越前硬漆シリーズです。

RIN&CO. 越前硬漆

スープを盛り付ける色つきの器で、いいものがないかなと思って探していました。漆器なのに洋食器に寄せた形がいいかな、と気軽に選んだものの、届いてみると、思った以上にカラフル。うちにある器と馴染むかとひいてしまいましたが、こわごわ使い始めてみると、あれ?とても使いやすい。

漆器といってもカジュアルです。とくに、上の写真で使っている、口の広い形の平椀は盛り付けやすく使い勝手が幅広い。スープはもちろん、ちょっとした常備菜を盛り付けるにも大活躍だし、ふだんのご飯茶わんをこういう塗りものに変えるの、ありかもと思いました。刷毛目がついていて傷もつきにくく、気楽に使えます。

しかもこれ、なんと食洗機対応なんです。漆器としては本当に画期的ですよね。「硬漆」は新しく開発された技術で傷つきにくい強い漆なんだそうです。(じつは途中までそのことを知らずに手洗いしていました…)

漆器は軽く、手ざわりや口当たりがよく、熱いものを入れても持ちやすくて、かつ保温性もある。せとものと違って割れにくいから子どもが使っても安心です。それは私たちも普段の生活で実感しているはず。
こんなに高性能なのに、なぜみんなが漆器をお椀以外に使わないかといったら、お手入れが大変そうということと、なんとなくイメージとして感じる格式の高さ、現代の食卓に合わないデザインかなと思います。

昔の物事から新しい知恵を開かせる「温故知新」という言葉がありますが、いまどき、それをやっていると昔の良いものはどんどんなくなってしまう。今必要なのは、目の前のみんなの暮らしをよーく見て、そこに古い知恵をどう使うか考えていく「温新知故」なんじゃないか。この器を使いつつそんなことを考えました。

多くの人が求めているのは、特別な日に使う特別な器ではなく、日常に気兼ねなく使えるシンプルで飽きのこない器です。その点、この漆器は、お手入れの点は完全にクリアしていますし、カジュアルな雰囲気もあります。
ブルーなどはおいしそうに見せるのが若干難しい色なので、もう少しおだやかな色のものも選べると、色物をアクセントに使って今っぽい食卓につながるかもしれないと感じました。

売る人が「気軽ですよ、今の暮らしに合いますよ」というのではなく、商品そのものが暮らしを語りかけてきたら最高です。

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同じくじわじわと良さを感じたもうひとつの商品が、この越前木工の丸いトレー。お盆って、これまでほとんど使いませんでした。もちろんいくつか使ってみたのですが、どうもしっくりこない。うちは少人数家庭なのでお盆なしでも困りません。

RIN&CO. 越前木工 丸トレー

このトレーは気がつくとつい使っているのです。さりげないというか、お茶にもコーヒーカップにも汁物碗にも合う感じ。
なにより、手に持ったときの縁のカーブがなんとも気持ちいいんです。急に立ち上がっているわけでもないし、かといって浅すぎない。指をかけるとほっと落ち着くこの感じ。

なにがいいのか、理由はよくわからないです。なんだか自分に合ったんですね。道具にはそういうところがあると思います。

撮影にもよく使わせてもらっています。

このお盆の上の、THE SOUP SPOONも、自然に手に取ってしまう道具でした。柄が丸くて適度な重みがあって、持って落ち着くカトラリーです。

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さて、ご紹介した道具たち、いかがでしたでしょうか。今回は私が選ばせてもらっていくつか使った商品の中から、特に良いと思ったもの、紹介したいと思ったものを書いてみました。ひとめぼれのもの、使った瞬間すぐわかるもの、じわじわ良さがわかるもの。道具は人にも似ています。

自分のこれ!という道具と出会うことはそう簡単なことでもないと思っています。でも、考えてみてください。この先の人生から食べるということがなくなるとしたら、それは死ぬとき。だからキッチン道具選びには長い時間をかけてもいいのです。出会ったり別れたりを繰り返しながら、これ!という一生ものの道具と出会えたら、暮らしは少しずつ豊かになっていくはずです。

みなさんも、自分にぴったりの道具を探し当てられますように。

文:有賀薫
note

<掲載商品>
DYK ペティナイフ
DYK ステンレス お玉
THE 醤油差し
THE SOUP SPOON
家事問屋 だしとりあみ
RIN&CO.

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*この記事は、中川政七商店が運営する合同展示会「大日本市」の「カタリベ」企画で書かれた記事を再編集して掲載しました。

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