三重のイガピザで過ごす、米粉ピザとツリーハウスのある週末

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忍者の里として知られ、「忍びの国」と言われる三重県伊賀市。

中心地から少し外れたところに、ナポリの本格窯で焼いた米粉ピザを食べられるお店ができたらしい。四方を緑で囲まれたのどかなウッドハウスのピザ屋さんには広いテラスがあり、ゆっくりと寛ぐことができるそう。おまけに、裏山にはツリーハウスやハンモックがあって、自然の中で遊ぶこともできるのだとか。

そんな話を聞いて、行かないわけにはいきません。

伊賀の中心地から車で約20分。本当にこの先にお店があるのだろうかと少し不安になるような田舎道を進み、ナビに指定された通り脇道へ入っていきます。四方を山と畑で囲まれたその先に、一軒の建物。入口の「山本工房」と書かれた看板の下に「iga piza」と書かれたピザ屋さんの看板を見つけました。

「iga piza」への入口。木工工房の「山本工房」さんの奥にピザ屋さんがあります

ちょっと急な坂を登り木工工房になっている大きな平屋を抜けて奥へ進むと、きれいなウッドハウスが出現。ここが目的のピザ屋「iga piza」さんです。

大きな窓が気持ちいいウッドハウス

「iga piza」さんは、ボタン作家の長瀬清美さんが始められた週末だけのピザ屋さん。
この建物はなんと、セルフビルド。清美さんのご主人であり木工作家の山本伸二さんが裏山の植林を切って一から作られたのだそう。驚きです。(まだ驚くのは早かったことを後に知ることになります)

田んぼに面した開放的なテラス
思いっきり深呼吸したくなる空気です

薪の窯で焼く、米粉のモチモチピザ

ピザを焼くのは、本場ナポリから仕入れた本格的な薪窯。火をおこす薪は、近くで取れたものを使います。

ナポリの老舗メーカー、アクント・マリオ社の薪窯

地元伊賀米の米粉と三重の小麦をブランドして発酵させた生地に、地元で採れた野菜や自家製ベーコンを乗せて焼き上げます。500度の薪窯で一気に焼き上げるピザは、新鮮な具材の味をそのまま感じることができ、その美味しさは感動もの。ピザはジャンクフードだなんて誰が言ったんだろう。ここのピザは、体に優しい味がしました。

外側はぱりっと、中はもちもちの生地がたまりません
人気の「ナポリピザ」。小さめに作られたピザは、何枚でもいけそう

裏山は、大自然の遊び場

「裏山行くよー」と、山本さんが案内してくださったお店のすぐ裏に広がる森。
出てすぐのところに吊るしてあるハンモックを横目に、緩やかな階段を登るとすぐにツリーハウスが出現しました。

高さ3メートルほどのところに作られたツリーハウス

私、生まれてはじめて自然のツリーハウスを見ました。「子どもだけじゃなくって、ここに来ると大人も少年少女に戻って遊ぶんですよ」と山本さんがおっしゃるように通り、無性に心がワクワクして、目の前に広がる光景に自動的にテンションが高まっていくのを感じます。

ツリーハウスへは、ロープで登ります

「友だちの子どもと約束しちゃったから作った」というツリーハウス。作る約束をしたらツリーハウスの絵を描いて持ってきたから、作らなきゃいけなくなっちゃったのだそうです。そこで本当に作ってしまうのがすごいところ。気候のいい日は、お客さんが泊まったり、山本さんやお子さんの寝室になったりしているそう。誰にも邪魔されず、風の音や木の揺れを感じながら静かな時間を過ごせる木の上の空間。なんて素敵なのだろう。

ツリーハウスの近くにあったハンモック
お手製の吊り木

他にも、お手製のブランコやハンモックのある裏山は、近所の子どもや大人がやってくる遊び場になっているのだそう。近くにこんな自然を満喫できる遊び場があるなんて本当に羨ましい限りです。(忘れそうですが、ここはいわゆる自然体験場などの営業施設では無く、あくまで個人宅の裏山。豪華な遊び場です。)これから、裏山から道路側に抜ける大きなウッドデッキを作る予定なのだそう。ますます人が増えそうです。

平日は、ボタン制作

清美さんの本業は、ボタン作家さん。
ピザ屋さんの隣にある母屋が、木工作家の山本さんとボタン作家の清美さんのご自宅兼アトリエになっています。(なんと母屋も10年かけて山本さんが建てられたのだそう!)
工房には、清美さんの作られたボタンがたくさん並んでおり、そこで作品を買うこともできるそうで、伺った時もちょうどピザを食べた後のお客さんがボタン選びを楽しまれていました。

清美さんが作られたボタンのストックが並ぶ
木工作家の山本さんとボタン作家の清美さんご夫婦の共同のアトリエ
工房で見つけたお二人の結婚式のお写真

大学卒業後、ボタン問屋さんでずっとボタン作りをされていたという清美さん。独立後は、ハンドメイドでしか作れないオリジナルのボタン作りを続けられています。木、鹿角、象牙、陶器、ポリエステル樹脂、貝などいろいろな素材で作られる、清美さんのボタンはとても人気で、普段はボタンを使った製品を作るメーカーや手芸屋さんからの依頼が絶えないそうです。(さんちの運営会社である中川政七商店も、鹿角や漆のピンバッジや楓の木の指輪などを作って頂いています。)
型取りをして、穴を開けて、絵を書いて、削って、磨いてと、ひとつひとつの工程が手作業によって作られる手の込んだボタンには、機械には出せない温かみがあります。

ポリエステルを何度も流し込んで層にしたボタンの素材
スライスして、穴を開けて、削って、磨いて、ようやくひとつのボタンができる

平日はボタン作家さんとして忙しく活動をされている清美さん。伺った週末、たくさんの受注表を前に「ピザ焼いている場合じゃない。ボタン作らないと!」と笑われます。

ボタン作家・長瀬清美さん

そんな清美さんが、ピザ屋を始めた訳を聞くと、「兼業農家さんの実家に戻ってきた友人の娘さんの元気が無く、何か米粉を使って楽しいことをしようとなったのがきっかけ」だと教えてくださいました。ひとりの人の元気付けるために始めた大掛かりな事業。「飲食店をやるなんてこれまで思ってもみなかった」とおっしゃる思いがけないピザ屋さんも、素敵な空間を一から作り、薪窯を取り寄せ、素材を厳選して作るこだわりようは、物づくりをお仕事にされているお二人らしいなと思います。

週末はピザ職人に

そんな週末のピザ屋さんは、今ではかなりの人気店。地元の人を中心にたくさんのお客さんで賑わいます。平日にはヨガや英語教室など、ご近所の方たちが使うスペースとして活用されています。ウエディングパーティーなんかも行われたのだそう。

清美さんと山本さん。仲のいいご夫婦

友だちのお子さんや農家さんなど、誰かのために作られた遊び場やピザ屋さん。元々ものづくり工房だった場所は今、たくさんの人が集まる伊賀の新たなスポットになっていました。旅の目的として、わざわざ行きたくなるような気持ちのいい場所です。ぜひ足を運んでみてください。

iga piza (イガピザ) / 山本工房
三重県伊賀市上友田2216-1
0595-43-2121
営業時間:
土・日・祭日 / 12:00-18:00

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ボタンズファクトリーHP

こちらでボタンを購入できます
長瀬清美さんiichiショップ

文: 西木戸弓佳
写真: 菅井俊之

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