贈りものにエピソードを。阿部守商店「おさかなの素」

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30歳を超えた頃から、大切な人への贈りものには選んだ理由を添えるようになりました。父の日ならビール、母の日ならカーネーションと定番品をそのまま贈るのも悪くはないけれど、「あのね、このビールはお父さんと同じ年に生まれた醸造所が造っていてね、」とか「この器は、あなたの地元に産地があってね、」といった風に、つくり手が込めた想いとか、相手にぴったりな理由とか、話したくなるエピソードがあるとなお、贈りたい気持ちが増すのです。

けれどそのぶん「これだ!」と思えるものを探すのは難しく、どうしてそれを贈るのか、自分で納得できないと決められない。少々、やっかいな主義を持ってしまいました。

こんな私なので、贈りものを探すときはいつも少し途方に暮れてしまいます。相手が喜び、なおかつ伝えたいエピソードのある品を、毎回一から探し出すのは割と途方もない道のりで、時間もかかる。こうして私は次第に、気になった品・気に入った品を「贈りたいものリスト」として、少しずつ書き溜めておくようになりました。

甘いものならあれ、気の利いた雑貨ならこれ、と、いざとなったらリストが助けてくれる安心感は結構心強く、リストに鎮座する品々を眺めては、楽しい未来に想いを馳せます。もちろん全てがエピソードも含めて推せる品ばかり。いざ出番が来たときは嬉しくて、手渡すときの私はたぶん、にこにこしていると思います。

中川政七商店が経営コンサルティングを手がけた、阿部守商店がつくる「おさかなの素」が、このたび、そのリストに新しく名を連ねました。

宮城県塩竃市。太平洋に面する港町で、魚加工業を営む同社が新しく発表したこの品は、魚のほぐし身と調味料の白醤油、海苔がセットになり、「お茶漬け用」「炊き込みご飯用」と大きくは2種類をラインアップ。

例えばお茶漬けセットなら、冷凍されたお魚を開封してご飯と一緒にお茶碗に盛り付け、白醤油とお湯を注げば出来上がりと、豪華なお茶漬けが簡単に完成します。

「紅鮭」「さば」「ほっけ」など数種類の魚がセットになった「おさかなの素」は、魚種や内容量の異なる複数の価格帯が用意されていて、予算や好みに合わせて検討できるのも魅力的。同じく東北の地で活動されているakaoniが手掛けたパッケージやロゴデザインは、ほどよい気品とどこか懐かしい土着感あるデザインで、贈りものにぴったりです。

「お茶漬けセット」「炊き込みご飯セット」とも、基本の「おさかなの素」は共通。調理の工程や白醤油の分量などがそれぞれ異なる

さて、今回は定番だという「紅鮭」を炊き込みご飯にしてみます。実家を出てから「魚の調理はこんなに面倒だったのか!」と、めっぽう肉派になってしまったのは私だけではないはず。魚は食べたい。だけどめんどくさい。そうやって魚と距離を置く日常が今やすっかり普通になってしまったけれど、やっぱり魚が食卓にあると嬉しいし、それが手間なくつくれるなんて、私の心は静かなお祭り状態です。

封を開けて、炊飯釜に入れて、あとは炊くだけ。今回はちょっと“丁寧な暮らし”風に楽しんでみようと土鍋で炊いてみましたが、もちろん手軽に炊飯器でも大丈夫。次に蓋を開けたときには立派な鮭入り炊き込みご飯が出来上がりです。

お茶碗によそい、刻んだ青じそと付属の海苔をまぶす。例えば朝ごはんにするなら、いつものお味噌汁や定番のおかずを添えただけでも、夢のような朝定食が完成するのです。

何歳になっても「炊き込みご飯」と聞けば、ついテンションが上がってしまう。淡い紅色が白米に映え、お茶碗の中の美しい景色に思わず顔がほころびます。

お箸でとって口に運べば、海苔の香ばしさが白醤油の染みた鮭を引き立て、口の中に優しい海が広がるよう。「うん、おいしい!」。丁寧に身をほぐしてあるので骨もなく、食べ進めやすいのも安心感があって嬉しい点です。

阿部守商店が商いをする宮城県塩竃市は、江戸時代には仙台の外港として水産業で栄えた場所。現在は国内有数のマグロの水揚げ地となっている一方で、環境問題などを背景に、水揚げ量は年々減少の一途をたどり、地域の水産業は大きな課題に直面しているといいます。

そんな塩竃の土地で、ルーツを漁師に持つ同社。世界中の海をめぐりさまざまな魚と出合った後は、もっと魚を知りたいと、塩竃の魚市場で卸業を始めました。そして、いまは漁師と魚卸業で培った”美味しい魚を見極める目”を強みに、魚加工業をされています。

阿部守商店が目指すのは、塩竃の海をまた、たくさんの魚が集まる場所にすること。そのために「環境負荷を極力控えながら、美味しい魚を届けられるような品の提案に取り組んでいきたい」と、新商品開発を主導した阿部守商店二代目の阿部久仁雄さんは話します。

塩釜港(写真提供:塩竈市秘書広報課)

「限られた資源を大切にするために、獲れた魚は美味しく、無駄なくいただきたい」。

そんな想いから生まれた「おさかなの素」は、通常は捨ててしまう魚の切れ端も活かせるようにとほぐし身を採用。何度も何度も試作を繰り返し、開発されたそうです。

あらゆるアプローチから魚を究めた信頼できるつくり手であり、美味しくいただくことが、塩竃の海を元気にしていく貢献にもなる。

「美味しいうえに、ものづくりの想いにもグッとくる。そんな品、応援せずにはいられない!」と、「贈りたいものリスト」への追加を決めたのでした。

お世話になった先輩へ、暑い夏に料理の手間を軽減できるお中元にするのもいいし、私と同じく、たぶん稀にしか魚料理が食卓に出ない友達への、誕生日プレゼントにするのも喜ばれそう。

まずは、幼い私に美味しい魚料理をつくってくれた家族へ、何でもない日にふと贈ってみようと思います。


<掲載商品>
宮城 塩竃 阿部守商店 「おさかなの素」

「炊き込みご飯セット」
・2種4袋 3,900円(税込)
・3種6袋 5,600円(税込)

「お茶漬けセット」
・4種4袋 3,780円(税込)
・5種6袋 5,400円(税込)
・5種10袋 8,640円(税込)
※いずれも送料込み。沖縄県のみ送料+500円

購入先はこちら:阿部守商店 ECサイト


文:谷尻純子

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