2か月ごとに異なる日本を巡る。学生が本気で経営する地域産品ショップ「アナザー・ジャパン」開業
ある時は「地元」に帰ったような安心感を、またある時は「旅先」で感じるわくわくを。
東京駅に隣接する新しい街「TOKYO TORCH」の一画に、そんな不思議な体験ができる地域産品のセレクトショップ「アナザー・ジャパン」がオープンしました。
同店にはTOKYO TORCHの開発を進める三菱地所がプラットフォームを提供し、小売業のノウハウ教育と経営サポートとして中川政七商店が参加しています。
そして、プラットフォームと教育を提供された上で実際の運営を担っているのは、なんと全国から集まった18名の学生たち。
コンセプト策定から商品選定、仕入れ交渉、店頭での接客、売上管理やSNS等を通じたプロモーションまで、まさに店舗経営のすべてを学生たち自身の手でおこなっていることが、「アナザー・ジャパン」最大の特徴です。
取り扱う商品は、日本各地から選りすぐった地域産品の数々。
2か月ごとに特集地域と販売商品が入れ替わる仕組みで、九州・沖縄地方の産品を集めた”アナザー・キュウシュウ”を皮切りに、”ホッカイドウ トウホク”、そして”チュウブ”、”カントウ”、”キンキ”、”チュウゴク シコク”と続きます。
取材時には、初回となる”アナザー・キュウシュウ”が開催中(2022年8月2日~10月2日)。「宴」というテーマの元で集められた産品、約350点が出迎えてくれました。
お酒や酒器、おつまみなどを揃えた「宴の乾杯」、華やかなアクセサリーや洋服が並ぶ「宴の装い」、特色あるうつわを集めた「宴の宴席」などなど。店内の棚は「宴」にひもづくさまざまなシーンごとに分けられており、それらを巡りながら、九州・沖縄の魅力ある品々に触れ、買い物を楽しむことができます。
”アナザー・キュウシュウ” の商品をセレクトしたのは、九州・沖縄地域出身の3名の学生。
「自分たちの目で見て、職人さんと話をして、素直に良いと思ったもの、心に残ったものをセレクトしました」
そう話す彼女たちは、実に80日以上も現地に滞在し、商品のセレクトから仕入れ交渉までをおこないました。
全国的に有名な焼き物もあれば、はじめて目にするような美しい布も。九州と聞いてイメージするものもあれば、予想外の驚きをもたらしてくれるものも。
改めて自分たちの出身地と向き合い、その魅力を全国に届けたいという純粋な衝動があるからこそのラインアップになっていると感じます。
実際のところ、地元の魅力を発信したいという学生の想いに心を動かされて、商品の取り扱いを認めてくれた作り手さんもいたそうです。
「”がんばってよ!”と逆に応援してくださる方もいて、本当にありがたい気持ちです。このお店で、商品や地域の魅力を伝えることが一番の恩返しになると思うので、気持ちを込めて販売していきます。
自分たちで選んで、交渉して仕入れている商品なので、思い入れも強く、色々とお話しできることもあります。ぜひ店頭で話しかけてください」
とのこと。各地域の産品が並ぶ店内をまわり、それらを選んだ学生たちのリアルな想いを聞く。そのことを通じて、実際の産地を巡り職人と触れ合った彼・彼女らの追体験ができる。そんな魅力を持ったお店だと感じました。
各地域の産品が購入できるだけではなく、週末には手仕事の体験ができるなどのワークショップも開催。また、店内併設のカフェ「KITASANDO Kissa」では特集地域にちなんだ食材を活かしたメニュー等が提供されます。まさに一年中、さまざまな角度から日本を楽しむことができるお店となっています。
その地域出身の人には懐かしく、そうでない人には新しい。訪れる人や時期によって異なる体験を味わえる、少し不思議なセレクトショップ「アナザー・ジャパン」。
地元や日本のことをもっと深く知りたい、もっと多くの人に好きになってもらいたいと集まった学生たちが本気で経営するお店です。ぜひ同店を訪れて、“もうひとつの日本”を感じてみてください。
<店舗情報>
学生が経営する47都道府県地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」
・営業時間 11:00~20:00
・住所 東京都千代田区大手町2-6-3 TOKYO TORCH銭瓶町ビルディング1階ぜにがめプレイス
ティー&コーヒースタンド「KITASANDO Kissa」
・営業時間 平日:8:30~21:30/土日祝:10:00~19:00
文:白石 雄太
写真:中村ナリコ