奈良散策のおともに、お土産に。「奈良御菓子製造所 ocasi」
エリア
東大寺、春日大社、興福寺の神社仏閣をはしごし、奈良公園を散策する。奈良観光の定番ルートです。
一つひとつは離れていないけれど、気が付いたら歩き疲れて休憩を欲している。観光あるあるではないでしょうか。
さて、この辺でひと休みでも。
そんな時に嬉しいお店が、ならまちにオープンしました。
興福寺から階段を下り、猿沢池を眺めながら歩みを進めると、細い路地に入ります。町屋が立ち並ぶ中でも、一段と屋根が低く、パッと空が開けて視線が吸い寄せられるお店があります。
「奈良御菓子製造所 ocasi」
店先には座れそうなスペースが広がり、町屋に馴染みながらも、ちょっとモダンな雰囲気も感じる。なんだろう、と覗いてみると、カウンターのショーケースには、お菓子が並びます。
並ぶのは、どら焼き、チーズケーキ、ジャム。
和菓子と、洋菓子?
あまり見ない並びですが、疲れた体に甘いものは最適。騙されたとでも思って、休んでいかれることをおすすめします。
そう、実はここ、奈良観光の新たなホットスポットを目指して、中川政七商店がつくったお店です。
ペアリングを愉しむ、新感覚菓子
こちらは、看板商品がセットになったocasiプレート。
「一口目は、どら焼きやチーズケーキを単品でお召し上がりください。その後は、よろしければお好きなジャムとあわせてお召し上がりいただければと思います」
そんな説明とともに提供されます。
言われた通り、まずはどら焼きのみでいただきましょう。
ふっくらと軽くなめらかな生地と、ほどよい甘みの餡子。砂糖を控えめにした優しい甘みに、ほっと一息つくことができます。
二口目にはジャムにつけて。おすすめは黄色い大和橘のジャムです。
ジャムをつけて食べると、より美味しくなることに驚きます。
大和橘の酸味と苦みが、餡子のやさしい甘みと相性バッチリ。どちらの味も活きたまま、ぶつからずに新たな味わいが生まれました。
何故いままで出会っていなかったのかと不思議になるくらいのベストパートナーです。
お次はチーズケーキをいただきましょう。
食べた瞬間、口の中で溶けるような、なめらかでクリーミーな新食感!
甘いだけでなく酸味がある為、くどくなくて後味はさっぱりしています。
チーズケーキだけでも十分に美味しいのですが、大和橘のジャムを足せば、ほどよい苦みが加わります。すももジャムを足せば甘みが、キウイジャムを足せば酸味がプラスされ、新たな味わいです。
元々味がしっかりしているお菓子にも、ジャムがこんなに合うなんて…!組み合わせの妙とはまさにこのことです。
どら焼きは、単品で購入すると、持ち歩きしやすい形態での提供もあります。
店内で大和橘の木を眺めながらいただくのも情緒を感じておすすめですが、もうひとつ、奈良観光気分を満喫できる楽しみ方があります。
興福寺の目と鼻の先にある同店。すぐ近くにある猿沢池のベンチに座り、五重塔を眺めながらいただくのも、おすすめです。
奈良をルーツにしたお菓子は、奈良土産にも最適
ところで、何故どら焼きとチーズケーキなのか、気になりませんか。
「コンセプトは、水菓子、和菓子、洋菓子。三つのお菓子が重なりあう『奈良御菓子』です。
和菓子は、どら焼き。
洋菓子は、チーズケーキ。
そして水菓子は、菓子の起源である果物のことを指します」
古来、菓子とは橘などの果物を指しました。
中でも、奈良時代から親しまれる最古の柑橘が「大和橘」です。
自然のみずみずしさを丁寧に味わうという、菓子の豊かな伝統を未来へ繋いでいきたい想いから、菓子と合わせるペアリングジャムをつくりました。
もちろん、すももやキウイのジャムも奈良で生産されるものです。
奈良にルーツをもつのは、水菓子だけではありません。
どら焼きは奈良では「三笠(みかさ)」とも呼ばれます。
万葉集の時代から和歌にも詠まれた、奈良のシンボルの一つでもある三笠山。その形になぞらえ三笠と呼ぶのです。
奈良県民にとって、奈良土産と言えば、三笠。実はそんな定番土産でもあります。
チーズケーキにも、もちろんルーツがあります。
日本最古のチーズは、飛鳥時代につくられていた乳製品「蘇」とされています。
チーズケーキは、洋菓子として西洋から日本に伝わり、ベイクド・スフレ・レアなど様々な深化を遂げていきました。
今回つくったのは、そこからさらに一歩進んだチーズケーキ。奥深くクリーミーながら爽やかな味わいに仕上げています。
洋菓子でありながら、日本独自の進化を遂げたチーズケーキの歴史は、奈良のものづくりの歴史になぞらえることもできます。
シルクロードの終着点とも呼ばれた奈良には、西洋と東洋の新しい文化を取り入れものづくりを深化させる気風がありました。
ルーツを奈良に持ちながら、姿を変え愛されている三つのお菓子を重ね、伝統と新しい愉しみを味わえる新感覚菓子。
どら焼きもチーズケーキも、一見見知ったお菓子ですが、その背景にあるルーツを知れば、奈良土産としてもぴったりではないでしょうか。
もちろん、持ち帰り用のギフトボックスも用意しています。
賞味期限は、どら焼きが製造日から5日、チーズケーキが冷凍で1か月、ジャムが3か月。チーズケーキの持ち帰りは8時間までもつので、遠方の方への手土産にも活躍しそうです。
ギフトボックスに配されているのは、ocasiのロゴデザインでもあります。
皆さん、看板の文字読めますか。
目を凝らすと段々見えてくるのですが、じつは「ocasi」と描かれているのです。
植物的な曲線が優美なこの文字、大和橘の葉をモチーフにデザインされています。
橘は、葉の枯れない様から貴族の紋章にも採用された歴史をもちます。なんだかそんなお話も、奈良土産として持ち帰りたいストーリーです。
奈良らしく、美味しく、そして新しい。
観光気分を十分に満たしてくれる散策のおともにも、奈良ならではのストーリーが喜ばれる奈良土産にも。
奈良に住まう人も訪れる人も、新たな奈良の菓子体験に出会っていただけると思います。
<店舗情報>
奈良御菓子製造所 ocasi
〒630-8221 奈良県奈良市元林院町5
(近鉄奈良駅から徒歩約7分)
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営業時間
10-18時 定休日:不定休
席 数
10(屋外席含む)
写真:奥山晴日
文:上田恵理子